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ゲームをいかに他の産業と結びつけるか・・・CEDEC吉岡委員長に聞いた

春のGDC、そして秋のCEDEC。今年は「CESAデベロッパーズ・カンファレンス」から、新たに「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス」と名称も変え、さらなる飛躍が期待されます。

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春のGDC、そして秋のCEDEC。今年は「CESAデベロッパーズ・カンファレンス」から、新たに「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス」と名称も変え、さらなる飛躍が期待されます。

4月7日の公募締め切りを目前に控え、GDCで何を持ちかえり、CEDECにつなげるのか。運営委員長の吉岡直人氏(スクウェア・エニックス)に、IGDA日本でグローカリゼーション部会の共同世話人も勤める筆者(小野憲史)が、会場で話を伺いました。

CEDEC吉岡委員長


―――よろしくお願いします

吉岡:こちらこそ。今年のGDCではIGDA日本でもラウンドテーブルを実施されましたね。反響はいかがでしたか?

―――いきなり逆質問ですか。そうですね、おかげさまで何とか形になりました。昨年秋から新しくIGDAの事務局長になったゴードン・ベレミー氏も参加してくれて、非常に活発な意見交換が行われましたよ。まだまだ日本に対する興味や存在感があることがわかって、ありがたかったですね

吉岡:それは嬉しいですね。

―――ただ、お互いに情報が行き来していないのは確かです。特に英語圏からみれば、我々の方がマイノリティですから、黙っていてはなかなか、日本の存在に気づいてもらえない現状があります。実際日本支部は全IGDAの支部でも最大級の活動をしているのですが、それがなかなか伝わらず、もどかしい。そこで新しくInternationalization Forceという活動を始めました。ゲーム翻訳家の方にも協力してもらって、ドキュメントなどの翻訳作業を進めています

吉岡:やりはじめると、きりがないでしょう。

―――IGDAはボランティアベースなので、そこは本業を犯さない程度に。また言葉の問題の前に、お互いに関心を抱いたり、情報を共有していく情熱の方が重要だと、改めて共通認識がもてました。そのためIGDA日本としての今年のミッションは、国際化もさることながら、日本のディベロッパーに対して、海外の動向に興味を持ってもらう働きかけを、どんどんやっていくことですね

吉岡:なるほどね。

―――吉岡さんにとって、今年のGDCはいかがですか? シリアスゲームやゲーミフィケーションについて、活発にツイートされているのを拝読しました

吉岡:そうですね。ゲーミフィケーションは去年の後半からシリアスゲームの世界で急速に盛り上がってきた言葉です。新しい概念だったので、おもしろかったですね。僕としてはゲームのノウハウを何かに応用するだけではなくて、ゲームのビジネスの仕方を何かに応用する、そんな議論が多かった印象を受けました。

―――なるほど

吉岡:ゲーム業界は儲かっているらしいぞ、と目をつけた業界外の人々がいて、そのビジネスのやり方を自分たちの商売にも応用しよう、という考えですね。一方でゲーム業界としても、自分たちが培ってきたノウハウを使って、新しい分野に切り込んでいくチャンスが出てきた。そうした異種混合の議論が行われるのが、GDCの良いところだと思います。だから去年はソーシャルゲームだ、今年はゲーミフィケーションだ、と一過性のブームとして捉えるのは、間違っているのではないでしょうか。

―――eコマースサイトやソーシャルメディアなど、まずウェブサービスから成功事例が出てきているのが、アメリカ的でおもしろいですね。一方で僕はここ数年、立命館大のサイトウ・アキヒロ先生と一緒に、ゲームニクスという概念を広めようとしてきました。ゲームニクスもゲームデザインのノウハウを実用領域に応用する点でゲーミフィケーションに近しいのですが、こちらでは家電のリモコンや知育ゲーム開発などから応用が始まっていています。日米での違いが興味深く感じられました

吉岡:それは確かにおもしろいですね。

―――話は変わりますが、今年の基調講演はいかがでしたか?

吉岡:僕等みたいな任天堂さんとつきあいのある企業にとっては、別段新しい話ではなくて、さまざまなことが再確認できた基調講演だったと感じました。昔から言われている内容にぶれがなくて、地道に同じことを言い続けていらっしゃるなあと。CEDECでも2008年、宮本茂さんに基調講演をしていただいて、毎年任天堂さんの講演セッションが続いています。ともすれば、ぶれそうになる点をしっかり抑えていただけて、ありがたいですね。

―――市場が盛り上がっている国や地域には、E3のようなトレードショーと、東京ゲームショウ(TGS)のようなユーザーショー、そしてGDCのような技術カンファレンスの3つが、バランス良く存在しています。TGSでも昨年からビジネスマッチングエリアを設置して、トレードショーの機能を強化し始めました。今年はCEDECがTGSの1週間前に開催される予定で、相乗効果を高めようという意図を感じます

吉岡:そのとおりです。日本でも、この3種類のイベントが、うまく相乗効果で発展していくといいですね。

―――これまでは3つの機能が、ともすればバラバラだったきらいもありました。すべてCESAが行っていることもあって、今後のレベルの向上を期待しています

吉岡:ありがとうございます。ただ、どうがんばりましょうね。

―――たとえば、CEDECの知名度がGDCではまったくありませんね。IGDAの年間計画の中にも、TGSやCEDECの名前がありません。これは象徴的だと思うのですが、何か良いアイディアはありませんか?

吉岡:少しずつでも海外からの参加者を増やして、認知度を高めていくしかないでしょうね。今はまだGDC側から見れば、世界中にいくつもある、ローカルなイベントの一つだという認識でしょうから。またTGSには欧米企業の海外担当の方はいらっしゃっても、なかなかそれ以外の方はいらっしゃる機会がありません。そのため、CEDECで講演したとか、聴講したといった海外の参加者を増やして、口コミで認知度を上げていくしかないでしょう。

―――GDCの認知度が日本で高まったのも、この10年くらいです。きっかけは2001年、ビル・ゲイツが基調講演でXboxのお披露目をはじめて行ったときではないでしょうか?

吉岡:そうですね。GDCという名称が広まりました。それでも当時、情報を集めはじめたのは、一握りのプログラマーだったんですよ。それから比べると、日本からの参加者も増えて、種類も広がりましたね。今年はマーケティングやプランナーの人も、ずいぶんとGDCに来るようになりました。

―――スマートフォン市場の拡大で、今年はモバイル系企業の参加者も増えたようです。また中国系や韓国系企業の参加者も急増しました。GDCと併設して、ビジネスマッチングイベントのGame Connectionが開催されるようになった影響も大きいですね

吉岡:GDCの意味が、これまでの技術カンファレンスから、ずいぶん広がってきましたよね。そのため会場で顔を合わせる人々も、昔とはずいぶん変わりました。良いことだと思います。

■ゲーム業界外とのつながり
《小野憲史》
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