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言論の自由はどこまで言論の自由を許すか?・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第21回

最初にお断りを申し上げます。

ゲームビジネス その他
最初にお断りを申し上げます。

1.数ある匿名掲示板(おもに2ちゃんねる)のまとめサイトがある中で、ふたつのサイトを取り上げていること。
2.管理人に何のお断りもなくこの記事を書くこと。
3.ふたつのサイトに違いはあり、おふたりの管理人の個性も異なることを承知しつつも、以下の原稿で両サイト、両管理人をひとまとめにして書く箇所があること。
4.両サイトは速報性があり、良い記事もあるが、あえて「負の側面」を書くこと。

以上、ご理解のうえ、本稿をお読みください。
今回、私が取り上げますサイトとは、次のふたつです。

「オレ的ゲーム速報@刃」
「はちま起稿」

私はこの両サイトが、ゲームにかかわるメディアにおいて、正面から論じられることがないことを憂いています。

そんな約束事はありませんが、触れてはいけないこと、という暗黙の了解があるかのようです。タブー視されています。理由はあとで述べますが、この状況は不健全なことです。

この記事が公開されたら、私は匿名の大衆から猛反撃をされるかもしれません。それでもなお、覚悟を決めて書くことにしました。

まず、両管理人におうかがいしたい。
毎日が幸せですか、と。

両サイトは法律違反すれすれの運営がなされています。

著作権侵害。
商標権侵害。
肖像権侵害。
名誉毀損。
業務妨害。
信用毀損。

などです。

両管理人はこの点について心得ておられるようです。
両サイトには注意書きが記載されています。

-------------
掲載している画像・文章の著作権、肖像権等は各権利所有者に帰属致します
画像・文章に関して何か問題があればご連絡下さい
確認後、早急に適切な対処をさせていただきます

管理人:Jin115
(「オレ的ゲーム速報@刃」より)

-------------
当サイトに掲載されている画像等におきまして、
著作権や肖像権に関して問題がありましたら御連絡下さい。
迅速に対応いたします
(「はちま起稿」より)


これは両管理人の責ではありませんが、あまりにも「問題」が多すぎて野放しになっているのが実態ではないでしょうか。

その野放しを、両管理人は黙認ととらえられ、連日、法に抵触しかねない記事を書かれているのではないか、と拝察しております。

しかしながら、お心の中では、毎日、ひやひやとした思いもあることでしょう。かつて、あるゲーム会社の経営者が「自分が人柱になってもいいから訴える!」との発言が話題になったことがありましたね。

今は、黙認かもしれませんが、何かのきっかけで両サイトへの訴訟があったとしても私は驚きはしません。両サイトには名だたる企業の経営者の方々も、たびたび登場します。これら企業が訴訟を起こしたら、両サイト管理人の敗訴は濃厚でしょう。

私は「はちま起稿」管理人のお噂をよく耳にします。ある人は言いました。
「あのサイトとは、想像もつかないほどの礼儀正しい青年だった」と。

私はJin様のことを存じ上げません。
ですが、インタビュー記事などを拝読いたしますと、お得意のアスキーアートと文章から、じつは繊細な神経の持ち主であることが、十分に伝わります。最近、私自身が貴サイトで取り上げられたときも、平林久和さんと、「さんづけ」をしてくださいましたよね。

つまり、両管理人が非常識な方とは、とうてい思えないのです。そんなことに思いをめぐらしますと、毎日毎日が安穏としておられないのではないかと思い、単刀直入に幸せですか?とお尋ねした次第です。

■不安の連鎖と時間の消耗

つづいて、両サイトに投稿(コメント)する人について考えました。
記事によって、また投稿内容にもよることですが、ある局面において、これまた幸せなことなのだろうか? と疑問がわくことがあります。

たとえば、A氏がある意見を書いたとします。すると、のちにA氏を(多くの場合、礼を失した言葉で)反論するB氏が登場します。今度はまた、B氏の意見の揚げ足と取った発言をするC氏が出現します。書いたC氏は、今度は自分が反論されるのではないかと気をもみます。

匿名とはいえ、自身の意見が攻撃の対象になるのは、イヤなことです。
もちろん、他者からの反論など気にしない人もいるでしょう。
ですが、上記のような書き込みの展開を目にいたしますと、A氏もB氏もC氏も、過激なことを言っているようで心中は穏やかではないのか。

さらにその投稿者から、両管理人が非難されることもあります。
「また、煽り記事を書いて」等々。
実際はもっと汚い言葉で両管理人が、ののしられることもありますね。

つまるところ、非難・批判をしている投稿者も、ときとして不愉快な思いをするのではないか。さらに両管理人も、です。両サイトで繰り広げられていることを見ていると、そこで起きていることは、「不安の連鎖」と呼ばずにいられません。

両サイトで悪く取り上げられた個人は、もちろん不愉快な思いをします。
仮に個人批判ではなかったとしても、たとえば、とあるゲームタイトルが、一斉射撃のように言葉の攻撃を浴びせられれば、その開発にかかわった、多数の人たちの心は傷つきます。

精神的なダメージだけではありません。
両サイトが存在することによって無為に時間が消費されます。

私が知る広報マン、プロデューサー、ディレクターの何人ものが、両サイトで自社のソフトが悪口を叩かれていないか、毎日チェックをしています。本来の業務の時間を削ってまでして、両サイトをひやひやした思いで見ているのです。

私自身もそうですね。
両サイトに取り上げられることによって、時間が奪われることがままあります。

そうでした。この連載の前回、「E3 2011、旅の記録」と題した記事で、「名は書かないが、日本の某ゲーム会社大手。自社製の開発ツールにこだわるがゆえに、ハードウェアのパフォーマンスをいかしきれていない。対して、ゲームエンジンを巧みに使っているのが海外のパブリッシャーだ」と書いたところ、私のブログのコメント、メールフォームから「某ゲーム会社大手とはどこか?」という趣旨のお問い合わせが多数、寄せられました。

何が起こったのかと思えば、両サイトでその会社探しの議論が起きていました。私がお伝えしたかったことの本旨は、「ゲームエンジンの重要度が増してきた」ということに尽きるのですが、話はあらぬ方向に行ってしまったようです。

このメールのお問い合わせに対して、

「企業名はノーコメントとさせてください。同記事では特定企業を批評する趣意ではございませんのでご理解ください。補足させていただきますと、開発ツールを自社で持ち、それを外部に漏らさないのが日本のゲーム企業の文化です。逆に例に挙げた『アンリアル』がそうであるように、1本のゲームソフトをつくったら、そのツールをオープンにして、皆でチューンナップしていくのが米国の文化です。古くは、『スペースウォー!』もMITの学生たちが何人もチューンナップにかかわって1本のソフトを磨き上げてきました。記事中の当該箇所は、企業名が問題なのではなく、日本のゲーム企業全体の強みが弱みに変わったことの全般的な傾向と解釈いただければ幸いです」。

と、返信しておりました。

もちろん、逆の場合もあります。
あるゲームソフトが「神ゲー」などと称されれば、それを喜ぶ人もいます。

私もかつて、自分がTwitterで書いたことが、まとめられたことがあります。それを読んだある投稿者が、「この文章、お金払ってでも読みたい」と書き込まれたときにはうれしい思いがしました。

冒頭にお断りしましたように、両サイトは功罪の「功」の部分があることも承知しています。しかし、「功」と比べて「罪」の部分のほうが大きいのではないかとの、私見を述べております。

■おびえる発言者たち

両サイトの影響力は強い。
ですから、ゲーム業界において発言をする人が神経質になります。

たとえば、ゲームクリエイターの方のインタビューでは、決まり文句のように「これは2ちゃんねるに書かれて、刃やはちまに載ったら大変だから、オフレコですけどね」と言います。国内外のゲームアワードを受賞し、外国に行けばスタンディング・オベーションで迎えられるような人たちが、両管理人を恐れているのです。

すると、どんな記事ができるか。
「あるきっかけがあって、この発想が生まれました」といった、曖昧な記述をするしかありません。

たとえば、クリエイターA氏は、別のクリエイターB氏のゲームについて反発心を持っていた。そこには正当な理由があります。その理由を理路整然と述べているのに、インタビューの構成者と編集者は「刃やはちまに載ったら大変だから」の言葉が残り、抽象的な「あるきっかけ」という言葉選びをしてしまいます。

文学、映画、絵画の世界では当たり前の、作風による作家間の意見の違いが、ゲームの世界にも当然のこととして存在するわけですが、ゲームを語るメディアでは、それを封じ込めています。メディアに登場するゲームクリエイターたちは、みんなで仲良しクラブに属しているかのようです。

そしてインタビューの結びは「私は常に顧客目線に立って、これからもゲームづくりをしていきたいですね」などの、当たり障りのない文字列によって結ばれていきます。

こうした現象が起きるのは、両サイト・両管理人だけのせいではありませんが、遠因のうちのひとつと私は考えています。

インタビューだけではありません。
座談会、講演、講義、トークショー、シンポジウム、さまざまな場面で何度となく聞くセリフです。

「刃やはちまに載ったら大変だから、これはオフレコで」。

■問題提起をしています

私は「負」の部分、「罪」の部分を書き連ねてきましたが、両サイトを無くそうなどという気持ちは、心の中に、ひとかけらもありません。なぜならば、この国、日本では言論の自由が憲法によって認められているからです。

今、私が本稿を書いていること自体が、言論の自由によって守られています。その私が両管理人の言論を封殺することは、あってはならないことでしょう。

したがって、本稿は問題提起をしたいのです。
それが表題の「言論の自由はどこまで言論の自由を許すか?」につながります。

最近、私が書いたブログ記事が、両サイトで取り上げられました。酷い言葉が連なったメールが何通も来ましたが、それ以上の数の励ましのメールを頂戴しました。ありがたいことです。

ですが、いただいたメールの中に、こんな文言が散見できるのです。

「平林さんも気にしないでスルースキルを使いましょうよ」
「言いたいことも言えない世の中って嫌ですよね」

慰めてくださることは、心情として喜びたいのですが、理性で考えるとドキッとするような文言です。

いつの間にか、一般的に使われるようになった「スルースキル」。本来ならば、人は他者からの批判を受けとめる精神を持たなくてはいけません。
「こいつ何、言ってんだかわかんねーよーwwwwwwwww」と書かれたら、もっとわかりやすい文章を書かなくてはいけない。私の精神はまだ未熟で、そのわかりやすい文章を書くスキルも足りませんが、そういう意見があったことを頭の片隅には置いておきたいものです。

傾聴という言葉があります。人は人と接していくうえで、相手の言っていることを、耳で聞くはなく、心で聴くことは大切なことです。そんなことを考えている私は「スルースキル」に逃げたくはない。

「言いたいことも言えない世の中って嫌ですよね」。

これはさらに重大な発言です。ネット社会の弊害ですが「言いたいことも言えない」と感じている人が多いことを、改めて思い知りました。

ネット上の発言は、法律を犯さない範囲で言論の自由は守られています。
それはそれとして、尊重しなくてはいけません。

しかし、行き過ぎた言論の自由は、他の言論の自由を殺すのです。
もう一度言います。行き過ぎた言論の自由は、他の言論の自由を殺すのです。

同様の例として「寛容はどこまで非寛容を寛容できるのか?」という哲学的な命題もあります。

人は寛容でなくてはいけない、という考えがあります。
ですが、寛容でない人に向かって「あなたは寛容になりなさい」と命令を下すことは、寛容的な態度ではありません。さて、その際、どこまで寛容であるべきなのか。人類が長い時間をかけて悩み続けてきた問題です。

これは、両管理人だけに申し上げているのではありません。
本稿を読んでくださった、ゲームビジネスにかかわるすべての人に問いかけます。

言論の自由はどこまで言論の自由を許すか?

私は、「オレ的ゲーム速報@刃」と「はちま起稿」について公然と語らないという、暗黙の了解に逆らって、パンドラの箱を開けました。

スルースキルではなく、堂々と議論されるきっかけをつくりたかったからです。
「刃やはちまに載ったら大変だから、これはオフレコで」。
そんなせせこましいことを言わなくてもいい、ゲーム業界であってほしいからです。


■著者紹介
平林久和(ひらばやし・ひさかず)
株式会社インターラクト(代表取締役/ゲームアナリスト)
1962年・神奈川県生まれ。青山学院大学卒。85年・出版社(現・宝島社)入社後、ゲーム専門誌の創刊編集者となる。91年に独立、現在にいたる。著書・共著に『ゲームの大學』『ゲーム業界就職読本』『ゲームの時事問題』など。現在、本連載と連動して「ゲームの未来」について分析・予測する本を執筆中。詳しくは公式サイト公式ブログもご参照ください。
Twitterアカウントは @HisakazuHです。
《平林久和》
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