ゲームの目的は室内の不要なモノを掃除して「更地」にすること。モノを捨てようとすると「ブロガー『ウヘヘ! ゆうしゃのエロほん は いただいた』」などのメッセージと共にバトルがスタートします。このように本作は勇者の「恥ずかしい過去」を封印していくという、壮大かつ普遍的(?)なテーマを扱っています。ドット絵のビジュアルと、かな文字のテキストが絶妙なマッチングで、80年代を彷彿とさせます。
最大の特徴はキー入力で拡大・縮小する画面です。もっともMSX1には拡大・縮小機能が存在せず、秘密はユーザー定義文字の活用にあります。MSX1が現役だった1980年代中期、多くのホビーパソコンにはユーザーがドットで自由に文字(フォント)を定義できる機能がありました。ユーザーはこの機能を使って任意のゲームキャラクターを作成し、スプライト機能と組み合わせて画面に表示させ、アクションゲームなどに仕立てていきました。
ところが、本作ではこの機能をさらに加速させています。さまざまな種類のユーザー定義文字を事前に用意しておき、それらをタイルのように敷き詰めてマップ画面を描写すると共に、キー入力でリアルタイムに画面を書き替え、拡大・縮小を実現したのです。
驚くべきは、これをMSX1のチープな処理速度下で、滑らかに拡大・縮小させている技術力です(デモにはWindowsのMSXエミュレーターと共に、MSX2の実機(MSX1モードで実行)も活躍しました)。中にはマップを拡大させなければ見つからないアイテムも存在するほど! 公式サイトにはYoutubeの動画リンクもあるので、チェックしてみてください。
作者でTPM.CO SOFTWARE代表の東郷生志氏は、かつて「MSX・FAN」をはじめ、数々のパソコン雑誌でゲームプログラムを投稿していた、その筋では有名なアマチュア・プログラマー。本作の開発においてもメモリの関係上、定義できる文字数は限界があるため、できるだけ汎用性の高い文字を定義することに苦労したと話をしていました。
ブースでは過去作の『タロティカ・ブードゥー』『グレイ・フロファー』も展示されていました。前者は手描き感覚あふれるグラフィックが特徴的なRPG。鍵を開け、犬や動く鎧と戦いながら館の深部へ向かっていきます。バトルは驚きのリアルタイムアクション! ゲームの冒頭には手描きのパラパラ漫画によるムービーも再生するなど、明らかにやり過ぎ感が満載です。
後者はパズルゲームと横スクロールシューティングを融合させた、これまたユニークなもの。自機を操作しながら敵を破壊していき、脱出者を救出して進んでいきます。弾の射程距離が短く、消費も速いので随時補充が必要なので、いつ補充するかがポイント。グラフィックは8ビットですが、ゲームデザインは普遍性を備えています。
頒布スタイルもユニークで、メディアは今もなおフロッピーディスク! プレイヤーは中古市場で本体を購入するところからゲームスタートです。過去に公式エミュレーターの「MSXPlayer」が同梱された「MSX MAGAZIN永久保存版」シリーズが出版されていましたが、すでに絶版。WindowsのMSXエミュレーターなどを使用する場合も、BIOSプログラムは本体から別途、吸い出して使用する必要があります。にもかかわらず、どれも遊んでみたいと思わせる内容でした。
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