『ポケモンアートアカデミー』はポケモンのイラストを描く方法をひとつずつ教えてくれる作品で、これさえあればポケモンの絵を描けるようになるらしいのです。しかし、今になって苦手意識のある絵に挑戦するのは……、と思っていたのですが、ひょんなことから気が変わって入校することになりました。
私は『ポケットモンスター X・Y』を遊びはしましたが、ポケモンの絵を描くという行為は想像すらしていませんでした。しかしずいぶん前に、幼い姪に「ピカチュウ描いて」とせがまれ描いてみたところ、出来上がったのは交通事故に遭ったイノシシのようなものではないですか。それからというものの、自分の絵がひどいことは少し気になっていました。
しばらくすると、都合よく『ポケモンアートアカデミー』が発売されました。これさえあれば少しは絵がマシになるかと思うと同時に、やる気が起こらなかったら姪のお絵かき道具にしてしまおうと考え、入校もとい購入に踏み切ったわけです。
さて、まずは入校する前の私の腕前をご覧いただきましょう。私は「タブンネ」というポケモンが好きなので、さっそくそれを描いてみました。
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▲はじめてフリーペイントで描いたイラスト
タブンネを描いたつもりだったのですが、出来上がったのは「メタルバンドがライブで引き裂いたブタの頭」のような物体ではないですか……。我が事ながら少し目眩がします。こうなればポケモンアートアカデミーの権威、アンディ先生にいろいろと教わるしかありません。
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▲入学テストはピカチュウ・ポッチャマ・ケロマツのどれかを描くこと
まずは入学テストを受けるわけですが、ここでいきなり驚きました。というのも、テストではデッサンだとかそういうものをやることになるかと思いきや、ただ単にお手本をなぞってピカチュウを描くだけだったのです。
実に拍子抜けする入学テストでしたが、これをクリアするとアカデミーの生徒証を授与してくれたり、描いた絵をポケモンカード風の額に飾ってくれたり、下手な絵だとしてもアンディ先生が褒めてくれたりします。なぞっただけではないのかとも思うのですが、これが不思議と嬉しいのです。そう、『ポケモンアートアカデミー』は絵を描くことが楽しいという本当に初歩の部分から、ひとつひとつ教えてくれる学校なのです。
そして、ライバル(?)となる相棒も登場し一緒に絵を描いてくれるのですが、彼(もしくは彼女)の技術は低くとも、とても楽しそうにポケモンを描いています。
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▲背景もあいまってトリップしているような雰囲気になってしまったミジュマル
絵を描くことの基礎というのは、やはり好きなものが描けて嬉しいということなのでしょう。当たり前のことではあるのですが、習い事だとかまえていた自分にとっては目からウロコでした。ここからビギナーコースがはじまり、最初のうちは簡単なポケモンの正面顔を描くことになります。
また、アンディ先生は道具の使い方も教えてくれるのですが、絵を描くうえで重要なほかの要素も教えてくれます。たとえば、何かを描く前には必ずそのポケモンがどんな生態かを教えてくれますし、描き終えたあとはときどき「ポケモンを描くときの8か条」なるものを教えてくれます。
絵を描くことだけに限りませんが、何かをする時には技術以外にも心がけが必要になってきます。たとえば、どこへ行くか決めなければお出かけが成立しないようなもので、何かをするには最低限の決まり事がなければならないのです。そして、その8か条の中でもっとも感心したのは、絵に物語を込めるということです。これは絵を描いている方からすれば当たり前の話なのかもしれませんが、絵が単なる静止画だと思っていた自分のようなビギナーにとっては知らないことでしょう。
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▲まったくもって良くないですが、めんどくさいのでこれでいいかと終わらせたマーイーカ
ポケモンの正面顔を描くことに慣れると、次からは全身画を描くことになります。更に下描きもする必要が出てきますが、まだ正確な補助線があるのでなんとかなると思いきや、上記の絵のように全体が歪むこともしばしば。
このあたりになると、ニンテンドー3DSでは描きにくいこともあることに気づきます。ボタンを間違えて押してしまうことがあるので握る箇所から先端までが長いタッチペンが欲しくなりますし、ニンテンドー3DS用の専用スタンドがないと非常に肩が凝ったりします。
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▲えんぴつで描いたツタージャ。歪んだ線がごまかせるので自分に合っているかも
そして、全身画に慣れたらおさらいとなる進級テストを受け、アドバンスコースへ突入します。これまではマーカーペンを使った色塗りだけでしたが、ここからえんぴつ・パステル・絵の具などを使い始めます。
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▲パステルで塗りサッピツも使ったロコン
また、アドバンスコースでは影の塗り方なども教えてくれるため、ここまでくるとさすがに見れたものが描けるようになりました。手本と見比べるとさすがに見劣りしますが、交通事故に遭ったブタのようなものではなく、きちんとポケモンに見える絵が描けることは実に嬉しい話です。
このレベルまではどれもひとつずつ出される指示に従うことで、だいたい描けるようになると思います。もちろん線を適当に引いてしまえばいい加減なものになりますが、補助線があるので大きくズレることはないのです。そう、補助線があればの話ですが……。
アドバンスコースから進級すると、いよいよマスターコースのレッスンを受けることになります。ここでは補助線すらなく、そもそも自分で“アタリ”を取ること、つまり絵の設計図から描かなければなりません。(ただし、任意で手本や補助線を表示させることは可能です。)
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▲リザードンの“アタリ”を取っている場面
これまではかなり親切でしたが、マスターコースあたりからはいくつか階段を飛ばしているような印象を受けました。というのも、アタリを取るのは難易度が高いのです。当然ながらアタリのお手本も用意されているのですが、それを見て描いても意味がありません。完成図からそれぞれの線をイメージしつつ、アタリを入れなければならないのです。
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▲リザードンのイラストを完成させるとこんな感じに
先ほどのアタリはこんなリザードンのイラストになりましたが、残念なことにアタリを取ることは失敗してます。というのも、胴体のサイズや足の位置などを大きく修正しており、まったくもってアタリの意味がなくなっているのです。もちろんある程度の修正は下描きで行うものらしいのですが、設計図がダメなために全体がダメになってしまうこともあります。
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▲アニメで作画崩壊してもこんな表情にならなさそうなルカリオ
マスターコースで最も失敗したイラストは、このルカリオの絵になります。顔がいかにもなパチものになっていますが、これはアタリの時点で線の繋がりが破綻しており、その帳尻合わせが顔に来てしまったがためにこうなっています。つまり、いい加減なアタリを元に線を引いたので顔が歪んだというわけです。
そんなわけで難易度が高く感じられるマスターコースですが、はじめはうまく描けなくてもいいのかもしれません。複数回レッスンを受けることも当然できますし、何より一気にレッスンを受けるのではなくフリーペイントで少しずつ習得するのも重要です。そして、ライバルの子は私以上のぶっ飛んだ失敗をたくさんしてくれるので、なんだかこちらが励まされた気にもなります。
こうしてマスターコースを終え卒業試験をパスすると、いよいよアートアカデミー卒業となります。もっとも、卒業後はスペシャルレッスンなるものが登場しますし、そもそも絵を描きはじめたばかりです。自分で好きな構図のものを描くことも大きな楽しみなわけですし、まだ描いたことのない手本もたくさん用意されています。なので、それらをフリーペイントで堪能していきたいところです。
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▲アタリがいい加減すぎて太ってしまったものの、これはこれでかわいいニンフィア
ところで、このアートアカデミーで絵のことを少し習ってわかったことがいくつかあります。まず、絵を描くことは楽しいということ。自分の好きなものを絵として形にすることは、苦労もあれどいいものですね。そして、絵の知識がつくと絵を見る目が変わるということ。アウトラインの引き方や影のつけ方など、感嘆させられる絵もあれば思ったよりいい加減に描いている絵だとわかったりと、新しい世界を知ったような気がします。
そして何より、自分が描きたいと思ったものが以前より正確に描けるようになったことが嬉しいです。そんなわけで、最初に大失敗した「タブンネ」の絵をもう一度フリーペイントで描いてみました。
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▲卒業後にもう一度チャレンジしてみたタブンネ
絵には物語をつけると良いとのことでしたので、タブンネがおいしいポフレ(ポケモンのおやつ)の話を聞き、ヨダレを垂らしている場面を描いてみました。このタブンネというポケモンは人間で言うところのぽっちゃり体型で、食べたりしている場面がとてもかわいくて仕方ありません。ゲームではいつも過剰におやつを与えています。
習った技術の中でも簡単なものを使いましたし、正面からのバストアップということで決してすごい絵ではありません。ですが、とりあえず最初の絵と並べてみましょう。
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▲受講前と受講後のタブンネを比較
こうして比べて見てみると、どうやら少しは絵が描けるようになったと言えるのではないでしょうか。ポフレを食べるタブンネなどをもっと描きたいと考えているので、今後はそちらにも挑戦してみたいと思います。
そんなわけで、『ポケモンアートアカデミー』は初歩の初歩から絵の楽しみ方・描き方を教えてくれる作品でした。また、ポケモンという題材は非常に優秀で、かわいいものからかっこいいものまでおり、描きやすい姿をしているものも多数いるわけです。更には世界的に有名なのも言うまでもなく、本当に多くの人を取り込めるお絵かきレッスンになっていたのでした。
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