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▲『魔神少女 -Chronicle 2D ACT-』タイトル画面。
今回は、ニンテンドー3DS用のダウンロードソフトとして8月6日に配信された『魔神少女 -Chronicle 2D ACT-』をレビューしていきましょう。本作はインディーサークル“INSIDE SYSTEM”が制作した作品で、魔神「ジズー」を操り、待ち受ける美少女のボスたちと戦う2Dアクションゲームです。なお、価格は400円(税込)と安価になっています。
内容についてもう少しはっきり言ってしまえば、『ロックマン』シリーズから大きな影響を受けているゲームと言えるでしょう。ロックマンがロックバスターを撃って戦うように、このゲームではジズーがライナーアタックを撃って戦うのです。
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▲ダメージ時のモーションがかわいいジズー。
本作はステージクリア型のアクションで、ザコ敵をなぎ倒しつつ最奥部を目指し、そこにいるボスを倒せばステージをクリアしたことになります。主人公のジズーは「シェガー」なる魔法の源を奪った犯人を探しているので、さまざまなボス(美少女)を倒して情報を集めていきます。
ただし、物語はそこまで大きな要素ではありません。このゲームは前述の『ロックマン』のように、何度もやられてパターンを学習して腕を鍛える“やり込み型アクション・ゲーム”です。
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▲ドット絵にはなかなかのこだわりが感じられる。
道中には簡単な謎解きもありますが、本当に手軽なものです。むしろ、タイムが記録されるのでどれだけステージを早くクリアできるかを競ったり、あるいはステージのどこかに隠されている「純色のシェガー」を探索する遊び方が用意されており、やれることが多いわけですね。
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▲ライナーアタックは強化するとかなり頼れます。
そして、「強化スロット」がアクションでは珍しいシステムでしょうか。敵を倒すとトレースが手に入り、画面下部にあるゲージが左から右へと徐々に溜まっていきます。ゲージが一定数貯まると、
・スピード(移動速度上昇)
・ウィング(ジャンプ時の落下がゆっくりになる)
・ライン(ライナーアタックの強化)
・コメット(武器がコメットになり強化)
・パワー(ショットの威力アップ)
を任意(設定によってはオートも可能)で強化できます。これは要するにシューティング・ゲーム『グラディウス』シリーズのような強化システムといえるでしょう。
なお、この強化スロットのゲージは敵からダメージを食らうと減ってしまいます。そのため、できるだけ攻撃を食らわずに先へ進むことが重要になっていきます。
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▲ジズーと各ステージのボスの会話はフルボイス。
ステージの最後へたどり着くと、いよいよボスのお出ましです。ボスはなかなか手強く、それこそしっかりパターンを覚えないとクリアできないでしょう。ましてや本作は残機制で、しかも一度やられると強化スロットによる能力上昇がなくなってしまうのです。
おそらく、低い難易度を選んだとしてもアクションが得意なプレイヤー以外は何度もやられることでしょう。それをいかに腕でねじ伏せるかがこの手のアクションの魅力なのですが、どうしても難しければ一度諦めても大丈夫です。
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▲ステージ選択画面から各能力の強化画面へと移れます。
というのも、実はジズーのさまざまな能力はランクアップさせることができるのです。集めたトレースは累計数として別に保存されており、それを使ってライフ最大値や残機を増やせるのはもちろん、ボスを倒すと手に入れられる「テクニカルスキル」も強化できます。
また、ボスはそれぞれ弱点のテクニカルスキルが設定されているので、簡単そうなボスから倒して次のボスの弱点を狙っていくという、まさしく『ロックマン』じみた展開も可能です。
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▲はじめに登場しているステージは6つで、好きなものを任意に選択できます。
ステージは好きな場所から攻略可能なので、ボスキャラクターの好みやステージの難易度によって自由に選んでいきましょう。もちろん登場するステージはこれだけではなく、しかも一度ゲームをクリアしたあとは更に新たな要素が追加されます。
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▲シェガーショップですべてのアイテムを買うのにも、やり込みが必要かも。
クリア後の大きな要素には「シェガーショップ」が存在しており、ここでシェガーの欠片を使い買い物をすることができるのです。このシェガーショップでは、これまでのデータを見られるアイテムや、新しくゲームを始める際に使える強化アイテムなどが販売されています。
これにより、高難易度モードをより手軽にプレイしたり、あるいは逆に難しくしてより歯ごたえのあるプレイにしたりできます。ほかにも、クリア後は違うキャラクターで遊べたりと、とにかくやれることが多い“やり込み型アクション・ゲーム”なわけです。しかもこれで価格は400円(税込)なのですから、喜んで買う人も多いことでしょう。
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▲背景も各ステージできちんと差が出ています。
しかしながら、おいしい話には裏があると言いますか、安いものには安いなりの理由があったりもします。この『魔神少女 -Chronicle 2D ACT-』においては、やり込み要素は充実していても基本的な部分での欠落が多いという形でこの安価な作品が成立しているのでしょう。
具体的にどこが欠点かというと、まず基本的な2Dアクション部分に問題があります。たとえば、ライナーアタックを画面外からガンガン撃っておけば余裕で進めてしまうだとか、ボスから得られるテクニカルスキルを使う意味が弱いといった部分です。
このゲーム、基本装備であるライナーアタックがとにかく強いです。連射するとかなりの速度で出せますし、強化すると体力の低い敵はほとんど画面外で倒せます。つまり、連射しながら右へ進むだけになりがちです。
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▲もっとも厄介なザコ敵であるカニ。
もちろんそれを制作側も把握しているのか、連射しながら先へ進むとこちらにダメージを与えてくる敵も登場します。たとえばカニは、攻撃を食らうと広範囲に泡を出すのでそのまま走っているとダメージを受けてしまうわけです。
ならばゆっくり行こうと思いたいのですが、そもそも連射しながら進んだほうが楽なのは、高速で突っ込んでくる敵もいるからなので困ったもの。そのため連射しながら進んでも、そうしなくても、初見ではダメージを受けてしまう理不尽に思えるケースがちょくちょく見られます。
こうなるとどう進めばいいのかよくわからずストレスが溜まりやすいうえ、そもそもライナーアタックが強いという問題の根本的な解決になっていないわけですね。
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▲ボスとの戦いは回避パターンを覚えることが何よりも大切です。
また、ボス戦においてもライナーアタックはかなり強いです。いや、正確にはボスの弱点にもなっているはずのテクニカルスキルがあまり活躍できなくなっています。私は、ラスボス戦以外ではまったく使う気になれませんでした。
実はこのテクニカルスキル、溜めたゲージを使うので撃てる回数に制限があります。しかもダメージを食らうとゲージが減るので、撃てる回数は更に減ります。しかもテクニカルスキルは癖が強く、うまく避けつつ当てるのにはコツが必要です。下手をすれば、一切当てられずにダメージを食らってゲージがなくなります。
一方の通常攻撃であるライナーアタックは、攻撃にゲージを使いませんし、撃てる回数には制限がありませんし、そもそもボスにはボタンの押しっぱなしで十分なので回避に集中できますし、パワーアップすれば攻撃力もなかなかのもの。もともと回避パターンを覚えるのが重要なこともあり、ライナーアタックさえあれば十分と思えました。
いくつも特殊な武器があるのに結局は初期武器を使うハメになるあたり、どうも調整が良いとは言えそうにないですね。それこそ『ロックマン』のように、テクニカルスキルは別のゲージがあっても良かったと思います。
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▲ボス美少女との会話は戦闘前のみ。
また、せっかくボスは美少女揃いで会話はフルボイスになっているというにも関わらず、それぞれのキャラクターがかなり薄いです。特徴付けがうまくいっているキャラは少なく、再戦時には「こいつ誰だっけ?」となることもしばしば。せっかくフルボイスにしていますし、カットインが入ったりドットがかわいく動くのですから、もう少し美少女を目立たせて欲しかったところ。
ほかにも、何も予兆がないところから障害物の水が吹き出たり、ラスボス手前の敵がよく見えない紫弾を撃ってきたりと、アクション・ゲームにおけるありがちな問題も散見されます。
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▲奇妙な敵キャラもひとつの見所です。
ふつうは面白いゲームだからこそ何度もやりたくなるわけで、逆にやり込み要素が先行している本作には疑問も抱くのが正直なところです。しかしながらやはり美点はあり、それは400円でたっぷり遊べるということになります。
同じステージを何度も遊べる仕掛けがありますし、提示された条件を満たそうとすれば歯ごたえがありますし、自分ならではのやり込みを見つければ更にたくさん遊べるでしょう。
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▲「シェガーショップ」でシェガーの欠片を増やせるポーカー。
更にはなんとポーカーのおまけまであったり、クリア後に登場するキャラクターで遊ぶとかなり違った雰囲気になっていたりと、本当に小さなダウンロード用ゲームと思えないほど多くの要素が詰め込まれています。もう少し品質が高ければ素晴らしい作品と言えそうでしたが、いずれにせよ低価格ゲームとしての役割は果たしていそうです。
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ニンテンドー3DS『魔神少女 -Chronicle 2D ACT-』はニンテンドーeショップにて配信中で、価格は400円(税込)です。