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【年末年始】正式サービスから1年で世界を熱狂に巻き込んだ陣取りゲーム『Ingress』の軌跡

Googleが配信する世界を股にかけた陣取りゲーム『Ingress』。2014年は同作の正式サービス開始1年目であり、大きな飛躍を見せた年でもありました。ゲームという言葉ではくくれない大きなムーブメントになった『Ingress』の軌跡をご紹介します。

モバイル・スマートフォン 全般
「MMORPG」といえば“Massively Multiplayer Online Role-Playing Game”で、大規模多人数同時参加型オンラインRPGのことですね。では、それに「M」を2つ増やした「MMMMORPG」は何の略称かお分かりになるでしょうか? 正解は“Map-based Mobile MMORPG”……つまり、Googleが配信するスマートフォン専用アプリ『Ingress』のジャンルのことです。ここでは、2014年に大きな話題を呼んだ『Ingress』の歩みを簡単に振り返ってみたいと思います。

◆世界を舞台にした陣取りゲーム




『Ingress』はひと言でいえば「世界を股にかけた壮大な陣取りゲーム」。アプリを起動したプレイヤーは、私たちが暮らすこの世界には不可視で未知のエネルギー・エキゾチックマター(Exotic Matter=XM)が満ちており、人々はそのエネルギーをもって人類を新たなステージへ導かんとする「Enlightend(覚醒派)」と、そんな「Enlightend」の野望に対抗する「Resistance(開放派)」に分かれて水面下で争っていることを知らされます。

自分がそのどちらに所属するかを決めたらゲームスタート。プレイヤーは文字通り世界各地に点在する「Portal」を実際に訪れて自勢力の支配下におき、「Portal」同士を線で結んで三角形を作ればその内側が「ControlField(陣地)」となります。未知のエネルギーをめぐる争いに終止符が打たれる日はくるのか? さぁ、他でもないこの現実で繰り広げられる、果てしなき戦いが始まりました。

◆『Ingress』が提示した、ありそうでなかったプレイスタイル


SF映画のように魅力的なデザインや世界設定がプレイヤーを外出や遠出へといざないます

フィーチャーフォンやスマートフォンでゲームを遊ぶことがすっかり当たり前になった今日。その理由の一つは、携帯電話はいまや必需品といえるシロモノであり、所持者が圧倒的に多かったからであるということは、今さらお話することでもないと思います。ただ、そうしたゲームは屋内にいるときや交通機関での移動中には重宝しますが、さすがに移動しているときは危なくて遊べませんし、実際遊ぶ人もいないでしょう。

その前提を覆した……言い方を変えるなら、「手垢がついてないパイを独占しにかかった」のが『Ingress』です。「Portal」は実際にある建造物やオブジェ、史跡などに設置されていますから、本作を遊ぶことは「地図を見ながら目的地へ出かける」ことに等しいわけです。携帯電話を持っている人たちが移動中に(移動しながら)遊べる……これが本作の大ヒットの理由の1つではないでしょうか。

◆プレイヤーに"旅行"までさせる白熱ぶり


2014年12月31日時点の勢力図。日本海に大きなCFができています

2013年12月14日にベータテストが終了し、Android端末でのサービスが始まった『Ingress』は、続く2014年7月14日にiOS版が配信開始されると、世界中のiPhoneユーザーが新たな「エージェント」として参戦し、盛り上がりが再加速。この頃から、インターネット上で『Ingress』の名を見る頻度が一気に増えたように思います。本作は課金アイテムなどもなく完全に無料で遊べますが、のめりこんだエージェントたちは、夏ならではの防虫スプレーやスマートフォン用のモバイルバッテリーなどを冗談まじりに「課金アイテム」と呼称し、嬉々として購入するという独特の盛り上がりを見せはじめます。

そうした『Ingress』の独自性と盛り上がりが、これでもかというくらい感じられたのが、2014年12月13日に東京で開催された公式イベント「Darsana(ダルシャナ) Tokyo」でした。イベントにタイミングを合わせて、中国、グアム、北海道の三地点による超巨大なCFが張られ、なんと北海道をのぞく日本の大半が「Enlightend」の支配下に落ちてしまったのです。複数人のエージェントの共謀によるものか、熱狂的な個人によるものなのか……どちらにせよものすごい情熱です。

ほどなくそのCFは崩され、日本は再び両勢力が睨み合いを効かせる状況に戻りましたが、その一方で、地図上で緑色に示される「Enlightend」が、CFを組み合わせて地図上にクリスマスツリーを作り出したり、青色で示される「Resistance」が日本海を大きくえぐり取るような巨大CFを作成したりと、盛り上がりは落ち着くどころか加熱し続けているようです。

◆自治体を巻き込み、さらに大きなムーブメントに


県の公式サイトでゲームが堂々と取り上げられるとは、なかなかお目にかかれない光景です

少し意地汚い言い方をしますと、こうした盛り上がりは「『Ingress』は大勢の人と多額のお金を動かせる魅力を持つゲームである」ことを示しています。そこに目を付けたのが、岩手県と神奈川県横須賀市。岩手は県庁内に「Ingress活用研究会」を発足し、なんと県の公式サイト内に、その活動内容を報告するページができました。

人気にただあやかろうというのではなく、ゲームを愛好しているのが伝わってきます

横須賀市の方も、黒字に青と緑で彩られたデザインや書かれたテキストに見える理解度の高さに、歴戦のエージェントも舌を巻く特設サイトがオープン。『Ingress』の制作元に勤める川島優志氏のTwitterでは、横須賀市役所の職員にどっぷりハマっている女性エージェントがいるらしく、その方の発案で市をあげての企画が実現した……という秘話が披露されており、こちらも並々ならぬ力の入れようです。



2013年12月に正式サービスを開始した『Ingress』。2014年は、そのプレイヤー数が全世界で800万人以上を数えるにいたり、そのうち50万人以上を締めるという日本では自治体が本作を用いての地域振興に乗り出すなど、『Ingress』がゲームという言葉ではくくりがたい大きなうねりとなった1年でした。

Googleがしかけた壮大な陣取りゲームは、次の1年でどこまで大きくなってくれるのでしょうか? 次なる日本での公式イベントは3月28日に開催予定。今度の戦いの舞台は京都となるそうです。2015年も目が離せない1本ですね。
《蚩尤》

汎用性あるザク系ライター(が目標) 蚩尤

1979年生まれのファミコン直撃世代。スマホゲームもインディーズも大型タイトルも遊びますが、自分と組ませてしまって申し訳ないという気持ちやエイミングのドヘタさなどからチーム制のPvPやFPS、バトロワが不得手です。寄る年波…! ゲームの紹介記事に企画記事・ビジネス寄りの記事のほか、アニメなど他業種の記事もやれそうだと判断した案件はなんでも請けています。任天堂『ガールズモード』シリーズの新作待機勢。

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