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本セッションはOGC2008の締めくくりとして企画され、「コミュニティが生み出す創造事例と、CGMの可能性」というタイトルが付けられていましたが、境氏は開口一番「これだけの濃いメンバーが集まったのだから、今日はフリートークで行きます」と豪快なちゃぶ台返しを披露。終始リラックスしたムードで、都市論からネットの匿名性、著作権論、オタク論、はたまたキャバクラとゲームの違いに至るまで、ぐだぐだな、もとい幅広いテーマのトークが繰り広げられました。
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はじめに境氏はパネリストに対して「自己紹介を兼ねて、最近ネットでこれがおもしろい」というものを紹介してくださいと質問しました。これに対して西村氏は中華圏の某動画共有サイトを上げ、新氏は「コールオブデューティ4」に30時間くらいハマっているとコメント。濱野氏は「ひろゆきさんに関心があります。会場の若い人もそういう人が多いのではないでしょうか」と答え、本題へと入っていきました。
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この後、トークの内容は現実社会とネット社会の対比へと続いていき、西村氏は両者分けて考える方がナンセンスと指摘。都市の持つ匿名性とネットの類似点について語りました。新氏は西村氏の生活ぶりや仕事ぶり、ビジョンなどについて矢継ぎ早に質問。これに対して西村氏は過去の経験則ではなく、その時々のユーザーニーズに合わせていく姿勢を示しました。また著作権問題についても、現行の著作権法がネット社会と齟齬を来している状況を指摘した上で、「ニコニコ動画」では誰も不幸にならないための環境作りができればいいとコメントしました。
こうした固い話だけでなく、時には西村氏が新氏に「いい歳してゲームやってて、それで楽しいですか?」と逆襲し、新氏が「楽しいですよ」とかわす一面も見られました。一方で西村氏はRTSの愛好家で、夢中になってハマっている時が楽しいとのことです。また話題がオタク論へと展開していく中で、濱野氏は社会学者の宮台真司氏の著作を引いて、全共闘時代・消費社会・自分探しとサブカルチャーの系譜を引きつつ、今はそれが「ニコニコ動画」へと繋がってきたという論説を展開しました。
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また「2ちゃんねる、ニコニコ動画の次に来るものは?」という会場からの質問に対して、西村氏は「2ちゃんねるは活字メディアだったが、ニコニコ動画は動画にコメントをつけるだけだから、より若い層にも受け入れられた」と分析し、人が受ける情動を、身近な人に入力不要で直接、伝えられるものが求められていくとコメントしました。コミュニティメディアは入力時のストレスを下げる方向で進化していくというわけです。
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最後に境氏の「世の中的に何が"来る"と思いますか?」と質問に対して、西村氏は「日本のような先の見通しの暗い国よりも、人口が多くて、若い人が物と価値を作っている(インドなどの)国でやりたい」と解答。新氏はウィル・ライト氏の新作「Spore」発売を受けて、カジュアルなフォロアーが増えると予測。濱野氏は高齢者向けの掲示板やSNSなどのニーズが高まるとコメントしました。これを受けて境氏は「これから日本では老人向け育成ゲームが流行り、ひろゆきさんが日本を出ていくという感じですね」とまとめ、会場をわかせたところで終了となりました。
会場には200名以上の聴衆が詰めかけ、立ち見がでるほど。フリートークにふさわしく、本題の「CGMの可能性」については明後日の彼方にうっちゃられたものの、さまざまな示唆やキーワードがあふれた、刺激的なセッションでした。
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