そんな注目の『Fable 2』について、「E3 Media & Business Summit」でモリニュー氏自らデモプレイを披露すると共に、そのビジョンやゲームデザイン哲学について聞く機会がありました。
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会場の試遊台でプレーして、まず驚かされたのは、男性キャラだけでなく女性キャラも選択できるようになっていたことでした。昨年は男性キャラのみだったので、非常に驚きです。モリニュー氏曰く「その方が公平だから」とのことでしたが、データ量の増加を考えると英断です。言うはやすし、行うは難しの典型でしょう。
最初に性別を選択すると、ゲームは少年・少女の時期からスタートします。ゲームの進め方や歳月で外見が変化していくのは前作と同じですが、女性主人公の場合は次第に体つきが女性らしくなったり、妊娠・出産などの特別のイベントもあるそうです。
ゲームは基本的にソロプレイで進んでいきますが、Xbox Liveに対応しており、友達と2人で協力プレイが楽しめ、ボイスチャットしながらゲームが可能です。主人公キャラクターには、冒険の片腕となる犬が飼えるので、主人公2人+犬2匹のパーティで冒険が進められます。NPCと結婚して家庭を作り、自分の子供を育てたり、お金を貯めてマイホームを買うなどの機能もフィーチャーされています(プレイヤーキャラクター同士での結婚はできないそうです、残念!)。
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戦闘システムもシンプルで、Xボタンが近接戦闘、Yボタンが銃器戦闘、Bボタンが魔法に割り当てられています。このうちXボタンは汎用のアクションボタンで、トラブルに巻き込まれたら、とにかくXボタンを押せば何とかなるように設計されているとのこと。また洞窟など特定の場所では、環境を利用した攻撃もできるとのことでした。残念ながら時間の関係でデモプレイは見られませんでしたが、ボタンを押すだけで環境に合わせた、さまざまなアクションが繰り出せるというのは楽しみです。デモプレイでもモリニュー氏が、実に楽しそうにコントローラーを操作している様が印象的でした。
一方でゲームを自在に進めながら、さまざまなイベントが発生し、ストーリー展開が異なっていくというのは、AIの分野で流行している「プロシージャル」の考え方を、ストーリー体験にも応用したものだと言えます。この点についてモリニュー氏に尋ねてみると、「基本的にそうだが、プレイヤー間での相互作用にもとづくゲーム体験も重要視している」とのことでした。対戦ではなく協力プレイの実装というのは、その一例だと言えるでしょう。
さて、最後に個人的に疑問に感じていたことを聞いてみました。モリニュー氏といえば「ポピュラス」以降、PCゲームでの開発が長く、コンシューマゲームは「フェイブル」以降に過ぎません。一方でこれまでにも、講演やデモプレーのちょっとした間に見せる「空パッド」の仕草が非常に印象的で、コンソールゲームへの情熱を感じることがしばしばありました。PCゲーム出身のモリニュー氏ですが、はたしてコンソールでの開発は自身のキャリアの中で、どのような位置づけにあるのでしょうか?
「う〜ん、それは非常に鋭い質問だね。でも自分にとって一番重要なのは『コントローラー』なんだ。だからコンソールで作るか、PCで作るかは、あまり重要な要素ではないんだよ。もっとも、最近のゲーム機のコントローラーは複雑だから、ボタン数のシンプルなマウスでのゲーム開発が懐かしく思い出されることもある。とはいえ、今はゲーム業界全体がコントローラーを巡って大きな変革期にあるから、おもしろい時代だと言えるね」(モリニュー氏)。
なるほど、そうでしたか! コントローラーの操作を中核にゲームデザインを行うやり方は、WiiやDSが登場するずっと以前から、日本のゲーム開発者の中で普遍的に見られるスタイルです。モリニュー氏のゲームデザイン哲学の本質をかいま見た瞬間でした。願わくば、いつまでもそのチャーミングな「空パッド」の仕草を見せて欲しいものです。
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