『ファミリースキー』は80年代のゲレンデスキーをテーマとしたゲーム。滑走時には雪質に応じて音が変わり、ゲレンデでは呼び出しの放送が流れるなどサウンド関連の臨場感に優れた内容となっています。
これまではPS3・Xbox360用の『リッジレーサー7』を制作してきた大久保氏は、ハードウェアスペックの異なるWiiでの開発に際して「頭の中がハイエンド脳になっていたのを組み直す」ところからスタート。Wiiの任天堂ソフトをリサーチすることで「Wiiではプレイそのものがひとつの体験であり、ゲームの世界へ引き込むのではない」とする結論を得ました。「可愛らしい絵柄にあわせたリアル度の音」「あるある感を出すために必要な音は音質を下げてでも入れよう」「心に響かなくてもいいBGM」などのコンセプトを決定しました。
プレイヤーがスキー場へ遊びに行くというゲーム内容から「敢えてゲーム的に演出しないことがリアルである」と、『ファミリースキー』におけるリアルさのアウトラインを設定。呼び出しアナウンスのフェードアウトをわざと雑なものとしたり、スピーカーの配置をサウンドの都合ではなく敢えてデザイナーに任せるなどの方法で「ゲーム的な演出感」を弱め、ゲレンデの「あるある感」を演出しました。また、ゲーマーではなく一般層をターゲットとすることから、NPCもフルボイスではなく、出会った最初のメッセージのみを音声として収録。冒頭の音声でイメージ付けしその後はプレイヤーの想像に任せるという手法が採用されています。
ゲレンデで鳴る曲はプレイヤーとスピーカーの位置によって音質が大きく変化するのですが、ハイエンド機のようにプロシージャルに生成する(状況にあわせてゲーム機側で計算してエフェクトをかける)のではなく、予めエフェクトをかけた状態の音データを用意するなど「カジュアルゲーム機」(大久保氏)ならではの工夫が凝らされています。
これらの作業に要した時間はサウンドクリエイター3名で900時間、サウンドプログラマー3名で1500時間。カジュアルゲームとはいっても、臨場感の再現にはハイエンド機よりも工夫が必要で「よりよい音の鳴らし方」をするためには職人的な作り方が必要である……ということが結論となりました。
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