■音楽への招待状
まずはピアノ。Wiiリモコンとヌンチャクを左右の手に持ち、軽く振ると一本指で鍵盤をたたくようにピーン、両手を同時に振るとジャーンッ、と鳴ります。他にもボタンを押して振るとテッ、ト、テッ、ト、とスタッカート、アナログスティックを上や下に押しながら振ればピュラララッ、とキラキラしたグリッサンドが! 速くたくさん振れば16分音符もお手の物、振る強さで強弱も変わりました。
フォークギターでは試しに、振ってポーンと音を出してからネック部分であるヌンチャクを揺らしてみるときちんとビブラートができて驚きました。短い音、コード、速弾きも可能です。
トランペットはリモコンを縦に持ち、(1)と(2)のボタンを押すことで音が出ます。押す長さで音の長さも調節できて、Zボタンを押しながら音を出せばパララッと装飾音符も出すことができます。トランペットの先端「ベル」とリモコンの動きは連動していて、リモコンを上向きにすることで音も大きく、下げることで小さくと、直感的に操作できます。
最後はヴァイオリン。リモコンが弓、ヌンチャクがネックになっていて、ボタンを押しながら弓を引き押しすることで音がでます。基本は音にビブラートがかかっており、弓の早さで強弱が付きます。アナログスティックを上に倒せば1音足されたダブルストップ奏法ができます。
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ヴァイオリン | トランペット |
お遊戯ゲームだと思ったらとんでもない!『Wii Music』は表情豊かに演奏できるゲームなんです!
■合わせて奏でる
リズムに乗って一人で演奏していると、楽器を持ったテトリが一人、また一人と私を囲み、音を奏でにやって来ます。最初は一人ぼっちでキラキラ星を演奏しているのに、ベース、パーカッション、サブメロディなどが加わり最後は立派な曲になってしまいました。テトリは「メチャクチャでもいいのです、音を楽しむのが音楽なんです。」と言っていました。その通り!!
演奏した曲はCDジャケット風の画像を自分で作成して、いつでも聞くことができます。立派なプロモーションビデオのように自分の演奏が流れるので、ちょっと照れてしまいます。
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ズラリと友人達が | 目をつむってしまいました |
■60種類の楽器、無限の可能性が待っています
基本楽器の他に収録されている楽器の多さにも驚きました。アイリッシュ楽器、和楽器、ラテンパーカッション、いぬ、ねこ(わんわん、にゃーんで演奏に加わる)などなど60種類以上に及びます。ファミコン風の音が出る管楽器やヴォイパ(ボイスパーカッション;口で表現する打楽器音)なんかもありました。カスタネットは、足音や「オ・レ!」も出せるのでフラメンコ風に踊り奏でることもできますし、DJではビートに乗ってスクラッチもできちゃいます。カウベルを鳴らしていたら、ビブラスラップ(カラララッという音が特徴の打楽器)が出てきたのにはびっくりしました。
ミュージッククリップを一定数保存していくと、上達アレンジレッスンをテトリに習うことができます。それを終えると自分流のアレンジも可能になり、ロック、ポップス、マーチ、ジャズ、室内楽、ハワイアン、レゲエ、ラテン、タンゴ、和風、ダウンビートといった自分好みのジャンルでテトリ達とセッションをすることができます。
保存済みクリップを読み出して重ね録りができるので、完全な自分オリジナルのアレンジを作るのも可能ですし、フレンドとWi-Fiを介してアレンジのアイデアを交換し合ったり、合奏用に自分のパートだけを提出することもできちゃいます。できあがる音楽はそれこそ無限大です。
■メロディが生まれる
私は昔ジャズボーカルを習っていたことがあり、メロディが生まれる瞬間に出会ったことがあります。合宿のインプロビゼーション(全くルールのない自由即興)のワークショップの時でした。先生と生徒が高原の中央で小さく輪になり、まずは自然の音に耳を澄まします。虫のチチッという鳴き声、風のビューっという音、鳥のザザッという羽音、本当に何でもいいのです。聞いたままの音を自分の解釈でそのまま声に出してみます。それを先生が提示したテンポに一つづつ……4つで刻むも良し、少し音が長めのテヌートでも、チチチッという3連符でも、自由に乗せていくのです。様々なリズムと音が合わさると、徐々にケチャ(インドネシア、バリ島の男性合唱)に少し似たような、どこかの民族音楽のようなサウンドが生まれはじめます。
そして一人づつ、そのサウンドの中で即興を奏でます。楽譜も、音階も全く無い中で自分の中にある音を外に出すのです。ライヴ経験もある先輩達ならいざしらず、経験に乏しかった私は順番が来るまでこんなのできっこない! と思ってドキドキしていました。ついついアタマで「こんな高さで、こういうメロディにしよう」なんて色々考えてしまいます。しかし、身を任せるようにサウンドに浸っていると、頭の中にフッと音が連なって自然と聞こえだしたんです。思い切ってその音を口ずさみ始めてみると、そのままトランスモードになったようにメロディが次々とあふれ出ていました。先生も先輩も、そしてだれよりも自分が一番びっくりしてしまいました。アドリブから生まれる全く新しいメロディ。何か世界がガラッと変わってしまったような体験でした。きっと皆さんの中にも、自分だけのメロディがあるはずですよ。
■Miiの、出番です
『Wii Music』には自分のWiiに保存されている「お友だちMii」がたくさん登場するので、自分が指揮者になりきってタクトを振るミニゲーム「なりきりオーケストラ」ではお友だちキャラに演奏させたりすることもできます。オケ友の、あるMiiが自分の知る担当とは違う楽器を演奏していたり、全く楽器に触れたことがなさそうな別のMiiがヴィヴァルディの春(四季より)でソリストになり、ヴァイオリンを熱く演奏していたりするのには思わず笑ってしまいました。また、音そのものをテーマにしたクイズ「音感マッサージキキミミ」や、楽譜に合わせてハンドベルを演奏する「合わせてハンドベル」といった、“音を楽しむ”という『Wii Music』にピッタリのミニゲームも意外にハマります。
■早く皆で演奏したい!
初心者も熟練者もなく一緒になってプレイを楽しむという高いハードルを、しかも実世界ではほぼ不可能と思われる「楽器演奏」という課題でクリアしてくれるWii Musicの音楽体験は素晴らしいの一言に尽きます。任天堂サイトの「宮本茂が行く」という動画で、ある幼稚園に『Wii Music』が持ち込まれるのですが、子供達のなにこれ! やりたい! というキラキラした目と、自分の動きが音になる時の表情には何だかウルっときました。組み込まれた音や音階などではありますが、子供と大人まで音を楽しめ、沢山の人が音楽に興味を持ってくれるのは音楽でたくさんの感動をしてきた私にとっても嬉しいことです。間違えるのが恥ずかしかったり怖かったりということで学校卒業と同時に音楽から遠ざかっている大人達に眠るメロディ。それを音にして楽しませてくれるのが『Wii Music』なのです。
好きにやっちゃえば、いいじゃない!
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世界に一つだけのアレンジ |
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石橋 加奈子
1986年12月11日生まれ。A型。何事にも興味を持ち、吸収するのスタンスで2007年からジャンルを問わずフリーライターとして活動。ゲームに関してはハマりやすく飽きっぽいが、周りの英才教育のおかげでアーマードコアや、ギルティギアなどにも手を出して楽しんでいる。他の趣味はジャズ、写真、インターネット。
ブログ/心具港:http://ameblo.jp/think-port/