プラチナゲームズの英語版公式Blogでは、「白黒で描くこと」と題した記事が発表されました。
『MADWORLD』におけるアートデザインの最初のコンセプトは「ゲームで起こる残忍なできごとにプレイヤーが罪の意識を感じず、笑って楽しめること」であり「雑誌やWEB上で見る人の眼を引く」ことだったといいます。
グラフィックを写実的にする路線は残忍さを表現するために有効だが、高いグラフィック性能を持つハードのゲームと比べると見劣りがすると判断してからは、「手描きのマンガ雑誌のような」グラフィックが目標に。作業中に通りかかったプログラマーの「これはすごい!こんなの見たことないよ!」という言葉に勇気づけられ、「アーティストがスケッチしたような」テイストを持つモノクログラフィックの路線が推進されました。
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主人公Jackの初期デザイン。トレードマークのチェーンソーはまだ存在していないようです | こちらが正式版。チェーンソーとそこにあしらわれた血の赤がゲームのコンセプトを物語ります |
これまでモノクロのゲームはなかったが、誰も思いつかなかったわけではなく、なんらかのつまずきがあって実現に至らなかったのではないかと考えて欠点を洗い出したところ、敵や進路が分からなかったり、目に優しくなかったりといったポイントが見つかりました。灰色を使ったところツートンカラーの画面から感じられるコントラストとソリッドさが失われたため、これを断念。遠景の一部などに彩度を落とした黄色を使うことでより見やすい画面を作り出すなどの苦労が重ねられました。
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こちらは初のテストの画面 | 血の赤と、遠景に彩度を落とした黄色が加えられたテスト画面。見やすさが向上しているのが分かります |
様々な試行錯誤はあったものの、目指した画面にたどり着くにはそう時間はかからず、その後、赤い血液とマンガ的な擬音を加えることで「残忍で笑える」という目標が達成できたといいます。
『MADWORLD』の画面を作る上で初期のコンセプトから外れることなかったことを誇りに思うと同時に、「プレイアブルコミック」を我々と同じくらい愛して欲しい……と締めくくられています。
この記事には様々な反響が寄せられており、「芸術とゲームの境界に関して考えさせてくれる」「こんなゲームを作れるのは日本人だけだ。私は宝石のような日本ゲームを探すために、平凡でつまらない西洋のゲームを渡り歩かないといけなかった」「大部分の開発者はWiiにロークオリティなミニゲームを持ってくるという安全策をとるけど、全部のWiiユーザーがそうして欲しいと思ってる訳じゃない」といったコメントからは『MADWORLD』への期待の高さをかいま見ることができるといえるでしょう。