開発規模が拡大し、関与する人数が増えるとファイル管理が非常に重要になってきます。どのファイルが最新なのか? 最後に更新したのは誰? 一つ前のバージョンを参照したい・・・といった課題に答えるのがアセットマネジメントシステムです。国内で既に4000ライセンス以上が利用されている「Arienbrain」はその代表です。
「エイリアンブレインがもたらした導入効果〜過去・現在・そして将来は〜」は、ガンバリオンの石井 泰寛氏から説明がありました。
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PS2/GCのころ | DSのころ | Wiiでは |
まず導入以前です。「Arienbrain」の導入以前、ガンバリオンではPS2やゲームキューブの頃には、ソースコードは最初はCVSで、後にSubversionで管理する一方、デザイナデータはファイルサーバーで手動かもしくはバッチファイルでコピーするという形を取っていたそうです。この場合、ソースコードはバージョン管理がされていますが、デザイナデータはされていません。その事から、問題が発生した場合に過去の履歴を参照できなかったり、手動でコピーを行っていたためヒューマンエラーが発生し得る状態だったそうです。
その後、DSタイトルを開発するに当たって、ソースコードもデザイナデータもSubversionで管理することとしたそうです。これにより全てのデータでバージョン管理が可能になった一方で、Subversionはもともとソースコードを管理するためのソフトで、当然CGツールとの連携が図られているわけではありませんし、インターフェイスも質素なもので、デザイナーが使用するには不安があったそうです。
そうしたことからWiiでゲームを開発するに当たって、高機能なバージョン管理ツールで包括的な開発環境を整えたいということになり、自社での開発や市販ソフトの導入が検討され、「Arienbrain」に白羽の矢が立ったそうです。試用の段階では、ファイル管理をあまり意識せずエクスプローラーのような使用できるインターフェイスや、拡張性が評価され、価格は安くないものの、自社で開発する際のコストと比較すると許容範囲として導入が決定したようです。
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導入の効果1 | 2 | 3 |
導入後は全スタッフが使用し、ゲームデータだけでなく仕様書などもバージョン管理し、全ての開発関連データが一か所に集まる形になって管理が非常に向上したそうです。分かりやすいGUIで誰でも使用でき、多くのスタッフがAlienbrainクライアントをエクスプローラー代わりに使用するようになったとか。当然、MayaやPhotoshopといった外部ソフトとの連携も図られています。「Arienbrain」にはバージョン管理以外にも様々な機能が備わっていて、たとえばセキュアな通信で外部からアクセスできるため、外部スタッフとの連携も容易になったそうです。
ただ、実はソースコードは別にSubversionを使って管理しているようです。これは、複数プロジェクトで使っているライブラリの管理が「Alienbrain」では煩雑になること、Subversionを大幅に改修して自社仕様で使用していることなどから移行が難しい理由があるようです。ただ、将来的にこれをAlienbrainにまとめるのが課題だと石井氏は話していました。
「Alienbrain」のような大規模なアセットマネジメントシステムは安くはありません。最後に石井氏は自身の経験から、上手く導入するためのコツを披露しました。まず(1)費用対効果を考える。当然のことですが、きちんとファイル管理が行われていないといつプロジェクトが止まるか分かりません。バグが発生してもファイル管理をしていれば正常なバージョンまで戻すことができます。そして(2)タイトルの予算に入れ込む。MayaやPhotoshopのライセンスと同様に、ゲーム開発に当然必要なもの、として処理するのがベストとのこと。導入はプロジェクトに合わせて。そして最後はガンバリオンで良かったのは(3)新しいものを受け入れる社風。だとか。