■開発現場について
―――開発人員はどのくらいでしたか?
脇本: 基本的にメインのプログラマーは1人で、基本のシステムなどを担当しました。アドベンチャーゲームなので、システムの上に載せる素材を作るのが大変で、スクリプトは延べで3〜4名、グラフィックは社内の原画家さんを含めて3〜4名、それにプラスして外注の方にも沢山協力していただきました。
―――グラフィックは新しく作ったのですか?
脇本: 原画の先生を立ててお願いしています。今回は、どうやってDSに落とし込むのかが課題になりました。PS2ではPS2としては最高の高品質なイラストを使っていましたので。また、先ほど話にあった、縦持ちにした関係で、真ん中が切れてしまうので、全面的に再構成しました。それが大変でしたね。
―――音楽はいかがですか?
脇本: 音楽も作曲家の先生に協力していただきました。最初は音質重視で波形データのストリームを使っていたのですが、それよりは沢山の曲やボイスを入れたいということで、1巻はストリーム、2巻からはMIDIを使っています。この辺りは手探りでした。MIDIになることで容量を抑え曲数を増やす、そしてボイスも充実させようということです。
―――ボイスはとても高音質だと感じました。収録時間はどのくらいなのでしょうか
脇本: ボイスは使いどころを絞ってという形ですね。それでも、1巻でも4〜5時間ほどのボイスが入っていて、2巻以降はそれぞれ7時間を超えるボイスを収録しています。それでもフルボイスにはなっていないのですが・・・。ここに関しては、必要のない部分は省きつつ、必要なところは高音質でやりたいという気持ちです。
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中川氏 |
脇本: ボイスはPS2とほぼ同等の音声で聞くことができます。チューニングもボイス1つ1つに対して丁寧にやっていますので、ぜひ聴いてみて欲しいですね。
―――音のチューニングはヘッドホンですか? スピーカーですか?
脇本: DSなのでヘッドホンを使われる方が多いだろうということでヘッドホンを前提にチューニングしています。
―――ROMの容量の内訳はどのような構成ですか?
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脇本氏 |
中川: 「救声主」が無かったらどうなってたか分かりませんね(笑)
脇本: 本当ですね。ボイスを圧縮するだけでなく、ストリーミングの多重再生にも使わせていただいていて、そちらの方がむしろ有り難かったかもしれません。元々アドベンチャーは音が重なるゲームで、SE・ボイス・システムSEと色々な音が重なると、BGMが途切れてしまったりすることがあります。その部分を救声主で行うことで何の問題もなく処理できています。
―――救声主を知ったのはどんなきっかけですか?
脇本: 以前から他のハードでADXを使っていて、救声主というミドルウェアの存在は知っていました。初めてDSというハードでゲームを作ることになって、実験をしていたのですが、私たちが考えているボリュームを収録することは厳しいことが分かりました。それでCRIに問い合わせてみたんです。ちょうど『ひぐらしのなく頃に』のプロジェクトが始まった頃に救声主が登場したんです。もし救声主がなければ、4巻は8巻構成になってしまったかもしれません。
―――ボイスのサンプリングレートはどのくらいですか?
脇本: 最初に16kHzに全てエンコードしておいて、問題のないボイスは12kHzに落として使っています。1つ1つエンコードしては聞いて試す、全て手作業ですね。そのくらい音質にはこだわって作りました。
―――救声主の使い勝手はいかがでしたか?
脇本: 特に良かったのは、メモリ管理などをきちんとやってくれる点ですね。どのハードでも、サウンドは意外とメモリ管理との戦いで、ラグなしに再生できないと困る部分ですので。
―――逆に困った部分はありますか?
脇本: 今回のようにボイスの量が多くなるとエンコードに非常に時間がかかります。作業のボトルネックになる部分でもあるので、エンコードにかかる時間が短くなると嬉しいですね。試行錯誤がよりしやすくなります。現場の声としては救声主のアーキテクチャというよりはユーザビリティの部分が多かったですね。またこれは要望ですが、常駐するライブラリのメモリ使用量は少なければ少ないほど嬉しいですね。
―――エンコード時間については恐らく大半がリサンプリングに費やされていると思います。今後はリサンプリング負荷を軽減したり、データをキャッシュするなどして再リサンプリングを行わないようにするなど、ツール側での対策を検討したいと思います。(CRI)
―――最後に恒例の質問です。ユーザの方、それからゲーム開発者の方に一言ずつコメントをいただけないでしょうか? まずはユーザの方に。
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脇本氏 |
中川: とりあえず3巻まで頑張って発売することができました。それもこれも、支えてくれるユーザの皆さんやCRIさんのお陰だと思っています。最後の4巻も年内に発売できると思います。きっちりファンの皆さんに納得いただける完成度で完結させたいと思っています。今回の作品で色々と勉強させていただくことができましたので、DSというハードで今後も何かやりたいとも感じています。『ひぐらしのなく頃に』に魂を込めていますので、ぜひ遊んでみてください!
―――では開発者の方にお願いします。
脇本: やっぱりROMは2Gbitを使いましょう!ということでしょうか。 コスト的にシビアなのは分かりますが、ユーザ命の業界だと思うので、アドベンチャーゲームはぜひ2GbitのROMで作りましょう。一緒に業界を盛り上げていきましょう。
中川: いまゲーム業界全体が厳しい状態です。開発もそうですし、私たちは前身がゲーム販売店なので分かりますが、お店も厳しい。ネガティブなスパイラルに入っている感じがあります。うちだけでどうにかできる問題ではないかもしれませんが、せめて開発としてはお手本になれるように頑張ろうと思っています。ぜひ一緒に頑張っていきましょう。
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本日はどうもありがとうございました! |
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