ちなみに、CEDEC以上に驚かされたのが、新設となった「『ゲームのお仕事』業界研究フェア」。学生版CEDECという位置づけで、とおり一遍のお仕事紹介かと思いきや、プロが聞いても参考になるものばかり。CEDECと違って入場無料というのも良かったですね。経済産業省の支援で実現したとのことで、国も珍しく効果的なお金の使い方をしたのではなかろうか。政権交代とはいえ、ぜひ来年も続けていただきたいところです。
内容については、もろもろありますが、印象的だったのが「CEDECアワード」の「著述賞」の新設。そして第一回目の受賞者が、セガの現役プログラマー平山尚さんと、故・石田晴久さんのダブル受賞です。ゲームプログラムの過去と現在が、一つに繋がった瞬間でした。
さらに会場ではコーエーテクモホールディングスの松原健二社長が、自ら監訳された書籍「『ヒットする』のゲームデザイン」(オライリージャパン刊)のサイン会を行いました。大手パブリッシャーの社長自ら、このようなパフォーマンスを行ったのは、日本のゲーム史で初めてのことです。それだけ、優れた技術書を日本でも数多く出版して欲しいという、松原社長の強い思いが込められていたように感じます。
ただ、ゲーム技術書の出版は、日本では結構大変です。海外と異なり、市場が日本語圏に限られるため、大きな部数が見込めないのが一点。そして第二点目に、画面写真などの引用が、かなり面倒くさいんですよ。
そのためソースコードが重要なプログラミング関連以外、たとえばゲームデザイン関連で、広がりが出にくく、体系化も進みにくい。これは「ニンテンドーDSが売れる理由」(秀和システム刊)を共同著作で出版した際も、強く感じたことでした。文字で説明するより、画面写真が一枚ある方が、ずっとわかりやすいことって、たくさんあるんです。
もっとも、図版の引用と許諾は海外でも同じで、より厳格な部分もあります。これは「Better Game Characters by Design」「GAME USABILITY」(MORGAN KAUFMANN)という、アメリカで出版された二冊の書籍に寄稿した際に感じたことでした。とはいえ、総じて海外の充実ぶりはすばらしく、誌面もきらびやかで、うらやましい限りです。
しかも、これから電子出版の拡大が見込まれます。僕はこうした技術書こそ、かさばらずに持ち歩け、キーワード検索ができ、低コストで必要な人に直接配信できるため、PDFなどでの出版が適していると思っています。その際に図版の引用と許諾を、どのように行えば、みながハッピーになれるのか。出版業界に加えて、ぜひCESA内部でも、こうした議論を進めていただければと思います。