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【DEVELOPER'S TALK】『ドラッグ オン ドラグーン』のスタッフが再集結!PS3とXbox360で異なる主人公を描いた『ニーア レプリカント/ニーア ゲシュタルト』に迫る

スクウェア・エニックスから好評発売中のPS3『ニーア レプリカント』とXbox360『ニーア ゲシュタルト』は、「ニーア」という共通の世界観をベースに置きながら、異なる主人公の物語を描いた意欲作です。

ゲームビジネス 開発

■ミドルウェアを活用したゲーム開発

―――今回はCRIWAREからCRI ADX、CRI Sofdec、CRI Audio、ファイルマジックPROを採用いただきましたが、そのきっかけを教えていただけますでしょうか?

古林氏
古林: 開発スタート時にはXbox360のみだったのですが、途中からマルチプラットフォーム開発になったこともあり、標準のシステムでは以前苦労した経験もあったので、それならば完成度が高く信頼感もありますし、西村からも使いたいという要望があったので、CRIのミドルウェアを採用することにしました。

■4層構造の音楽

―――音楽へのこだわりを聞かせてください。

西村氏
西村: 実は最大10~12本という凄い本数が同時にストリーミングで流れています。中でも曲の使い方が変わっていて、最大4本のレイヤー(パーカッション・ドラム、ベース、メロディなど)構造になっています。普段はパーカッションやドラムなどを鳴らしておきながら、ゲーム中の何かしらのトリガーがあった際に歌やメロディを上に重ねるというようなことを行っています。

横尾: 例えば村があって、ぽろぽろと音楽が鳴っているところで、ある人に近づくと、その人が歌っているような形で歌が乗ったりします。クロスフェードとは異なる、「曲を変える手法」にチャレンジしたかったんです。

西村: 具体的には、CRI Audioの「コンプレックスシンセ」という複数の音を同時に再生できる機能で実現しています。「コンプレックスシンセ」の中に4本の音素材を入れておいて、それぞれを独立してボリューム制御をするという手法です。

横尾: ただ、上手く鳴らせると綺麗なのですが、組み合わせがとても複雑になります。なので、ある場面ではこの4本の音の組み合わせで、それぞれのボリュームレベルはこう、という指示書を僕が書きました。例えば、家からフィールドに移る場合のような基本的な構造と、ストーリー上必要な演出で使うような専用設定があり、非常に膨大な数になりました。

西村: 作曲も4本の組み合わせで考えないといけないので、非常に大変だったとのことです。

―――曲も良いものが多いですね

横尾: 曲はMONACA(モナカ)という会社がありまして、実は大学時代の知り合いなんですが、そこにお願いしました。4トラックで作って欲しいという無茶ぶりにも対応していただいて、とても質の高い楽曲を作ってくれました。お陰さまで評判も良く、予約特典にはミニアルバムを用意しました。

齊藤: ミニアルバムは即決でしたね。これしかないという感じでした。

―――楽曲全体のコンセプトなどはあるのでしょうか?

横尾: 「声」を全ての楽曲に入れたいというのが基本にありましたが、特に全体を流れるコンセプトのようなものはないですね。

齊藤: どこかにいる民族が演奏しているような楽器は意識しているかもしれません。かといってパーカッションが強い民族音楽的なものともちょっと違いますね。

横尾: ギターやテクノは意図的に入れておらず、それで民族音楽的なイメージがあるのかもしれません。実はダウンロードコンテンツ(DLC)ではテクノや激しいロック調を取り入れてハチャメチャな音楽になってます。

■こだわりの効果音

―――SE(効果音)はいかがでしょうか

西村氏
西村: SEはマップ上に音源を置くツールを自社で作りまして、管理しやすい環境を作りました。SEは60~70音は鳴っている場所もあります。

西村: 音源が1点ではない、長い川や並べられているたいまつなどは、複数の場所に音源を設定しておいて、自キャラクターからの距離を見て近いもの3つから音を流すという手法を使いました。また、音を呼び出す時に違う音が鳴るように、同じ音のピッチやタイミングを変えたものをランダムで鳴らすようにしています。CRI Audioを使うことで、少ない音素材でリアル感を演出することができました。

―――その他、SEでこだわった点などはどのような点ですか?

西村: 鎧を着ているような敵に対するヒット音は「AISAC(※)」で工夫しました。攻撃すると徐々に鎧が剥がれていくのですが、いつまでも鎧の音がするのはおかしいので、鎧を攻撃した時の音と鎧が剥がれた敵を斬った時の音を出し分けることにしました。ある数値の時は鎧を攻撃した音、ある数値になると鎧が剥がれた敵を斬った音を出す設定をAISACで組んでおき、プログラマさんから敵の状態を数値で返してもらって出し分けました。

(※)AISAC・・・CRI Audioに搭載されている、インタラクティブサウンドを実現するための独自モジュール。ゲームの状況に応じて効果音などに対し、ボリュームやフィルター、エフェクトなどを設定することができる。

■「ファイルマジックPRO」でロード時間短縮に

―――ファイル圧縮&パッキングシステム「ファイルマジックPRO」も採用していただきましたが、いかがでしたでしょうか?

北村氏
北村: 一番助かったのは、ディスク上のファイル配置を自動で最適化してくれる機能で、何もしていない状態に比べるとロード時間は半分くらいになりましたね。プレイログを取って、CRIのツールに入力すると、シークの発生が最小になるように並べ替えてくれるものです。

■プリレンダとリアルタイムのシームレスな融合

―――ムービーは「CRI Sofdec」を採用いただきましたが、どのような部分でお使いになったのでしょうか?

横尾: プリレンダのムービーが6分37秒ほど収録されていて、その他はリアルタイムムービーです。ほぼリアルタイムムービーなのですが、複雑なシーンはSofdecであらかじめエンコードしたプリレンダムービーを使用しています。実はイベントの中でもプリレンダとリアルタイムが混在していて、さらに1つのムービーでも、途中までプリレンダ、途中からリアルタイムというものもあります。現世代機になると、それほどの違和感はないですね。ただ、ムービーの切り替え時に一瞬だけ黒画面が入るので、違和感が無いような場面を選んでいます。

―――ミドルウェアを使って良かった点はどんなところでしょう?

西村: PS3とXbox360で同じデータを使えるのは助かりましたね。PS3とXbox360のサウンドデータ、ムービーデータは全く同じデータを使用しています。特にサウンドデータは数が膨大だったため、機種ごとに出力し直す必要がなかったのは非常に助かりました。

―――では、今後こんな技術を使ってみたい、といったことはありますでしょうか?

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質問に答える「実験兵器7号」さん・・・ではなく横尾氏
横尾: 『アルトネリコ3』で実現されていた、テンポとピッチの自由なコントロールは是非使ってみたいですね。それと、トラックにタグを入れてプログラムに渡したいと思いました。音楽に合わせてゲームを動かすのは難しいんです。例えば、音楽が鳴っていて、ドラムがドンドンドンと鳴ると、それに合わせて敵が3匹ポップするような。ディスクだと音楽がどこで鳴り始めるか厳密には分からないんです。仮に分かったとしても何秒何フレーム目でという指示書を書かないといけません。例えばストリームデータの中にタグのようなものを入れられれば、音楽に合わせてゲームを動かすというようなことが可能になります。

押見: 実は今それに取り組んでいまして、もうすぐ披露できると思います。ストリーミングデータにはテンポやキーの情報が含まれていないので、MIDIの時代よりも音楽に合わせて何かをするというのが難しくなってしまいました。CRIでは、おっしゃったようなドラムのパターンに合わせて敵を出したり、拍に合わせてクロスフェードしたり、音楽的に自由な演出をできるような仕組みやツール整備に取り組んでいます。

横尾: それは心強いです。期待しています。よろしくお願いします。

■ニーアの展望

《土本学》
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