岩谷徹氏が生み出したパックマンはゲーム界を代表する超人気キャラクター。アメリカではアニメも放映されて大ブームとなり、『Ms. Pac-Man』『Jr. Pac-Man』といった作品も登場。ギネス・ワールド・レコーズは2005年には「最も成功した業務用ゲーム機」として認定しています。
Eric-Jon Rossel Tairne氏は「パックマンはなぜゲーム界最初のセレブになれた?」と題した記事を発表。その秘密を「女性に向けたこと」「ゲームデザインの革新性」「物語が感じられること」だと分析します。
■女性に向けたこと
「『スペースインベーダー』は夜通し遊ばれる唯一のゲームとなり、煙草の煙が漂うゲームセンターには社会に適合できない男性たちで一杯になった。
この光景には明らかに間違ったものがあり、岩谷徹はそれを見つけ出そうと考え続けた。女性はどこにいるのだろうか。なぜゲームはここまで汚名を着せられたのか。2つの事柄には関連性があるのだろうか。女性にアピールするのは何だろうか。女性の生活には何がモチベーションとなっているだろうか?岩谷はこれをファッションと食べることだと考えた」
■ゲームデザインの革新性
「『スペースインベーダー』の印象的な脅威の代わりに、『パックマン』は閉じた生態系を提示した。ある種のマイルドなバイオレンスはあるが、それはフェアで理解しやすい。システム上の全ての要素には役目と目的があり、ゲームを遊ぶことはその論理に自らを没入させることだ。岩谷は全てのエサを食べるゲームデザインを考え、プレッシャーを与えるためにプレイヤーを取り囲むモンスターを設定した。迷路を逃げ回ってエサを食べることが防御になるようにし、パワーエサで逆襲してもモンスターが死なずに巣に戻るようにした」
■物語が感じられること
「パックマンは巨大な口であり、表現力豊かだった。モンスターはそれぞれ名前を持つことがデモで伝えられた。岩谷はボスにゲームを見せたときに全てのモンスターを赤色にしろといわれたが、アイデンティティを持たせるために色を変えた。また、多くの抗議があったにもかかわらず、面と面の間にコーヒーブレイク(パックマンたちによる寸劇)を入れるといって譲らなかった。プレイヤーにより感情移入をさせるために。『スペースインベーダー』のようなゲームを遊ぶことはシンプルなストーリーをなぞることだ。しかし現在はムービーが面の間に入ってストーリーを伝える。
『パックマン』からは日本的デザインの最先端を感じられる。パックマンとモンスターという異なったキャラクターたちは、プレイを通し、その外側にある大きな物語を提示する。限定された世界であると同時に、プレイヤーが探究できる開かれた世界。
プレイヤーはキャラクターになったつもりになってゲームの世界を探究し、楽しんだ。パックマンは朝食シリアルになり、アニメになり、レコードになった。パックマンはゲーム界のセレブになり、最終的には男女が共に楽しめるゲームになった」
この考察で特に印象的なのはストーリーに関する言及でしょう。『パックマン』がアニメ化された海外ならではの視点で、岩谷氏が様々な反対を押し切って導入したキャラクター性が見事に開花していることが分かります。ゲームがストーリーを生み出す時代は意外に早くから訪れていたのかも知れませんね。
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