平田真氏 プロデューサー(株式会社マーベラスエンターテイメント)
廣田隆行氏 プロデューサー(ONE-UP株式会社)
稲本崇氏 ディレクター(ONE-UP株式会社)
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左から稲本氏、廣田氏、平田氏 |
―――まずは皆さんがどのように『みんなで牧場物語』と関わっているか、教えてください。
平田真氏:マーベラス側から世界観の監修をしています。これまで家庭用ゲーム機などで愛されてきた『牧場物語』の世界から大きくはみ出さぬよう、チェックしています。
廣田隆行氏:私は企画の立ち上げから携わっており、開発を担当しています。
稲本崇氏:私は廣田と作業を分担しつつ、制作進行をしています。
―――『みんなで牧場物語』は、当初の予定から延びた理由を教えてください。
廣田氏:早い話がいろんなことをやりすぎたんです。ひとりのコロボックル(※)にいろんなことをさせすぎた(笑) 社内で評価Ver.をリリースしたとき、作った自分たちではわかりやすいと思っていたものが、受け入れてもらえなかった。ですから根底から覆すくらい手を入れました。その結果、皆さんをお待たせすることになってしまいました。
※コロボックル=『みんなで牧場物語』で動物や植物の世話をしてくれるキャラクター。
平田氏:そこはONE-UPの皆さんと相談して決めました。「誰にでも遊べる」というコンセプトに合ったものにしたかったのです。ブラウザゲームはコンシューマのゲームと違い、そぎ落としてわかりやすくする作業が必要です。ゲームとしての面白さとのバランスを取るのが難しいんですけども。
稲本氏:ユーザーの皆さんをお待たせしてしまいましたが、作り直してよかったですよね?
平田氏:そうですね。かなりよくなりました。
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―――ゲーム開発の進め方はどのようになっているんですか?
稲本氏:平田さんにコンセプトを固定してもらって、それに対してこんなゲームシステムはどうかと企画書や仕様書を見てもらって、『牧場物語』としてそぐわないものがないかチェックします。それを実装して、またチェックしてもらうという形です。
―――考え方の違いが出ることも……。
一同:ありますね(笑)
平田氏:マーベラスとしては本作が初のオンラインゲームなんです。だから『牧場物語』としてファンをがっかりさせたくない。そのためのすりあわせをしています。
稲本氏:両者が目指すところにブレはありませんが、平田さんとしては家庭用ゲーム機の『牧場物語』としてのポイントを外さないでほしいというのがあると思うんです。我々ONE-UP側は「オンラインゲームとしてはこう」というのがあって、そこに『牧場物語』を乗せていくという考え方なので、そのあたりを調整します。
廣田氏:関係性だけでいえば発注元と開発側になるんですが、現場レベルではそんなことはなくて、平田さんにもチームの一員として一緒に作ってもらっているという感覚ですね。
―――『牧場物語』として譲れないポイントとは何ですか?
平田氏:やはり「ふれあい」を大事にしています。こちらが思い入れを持って接すると返ってくる。そこを崩しちゃいけないと。今回はストーリーや恋愛の要素はほとんどありませんが、『みんなで牧場物語』では人と人との「ふれあい」を楽しんでもらえればと思います。
―――『みんなで牧場物語』にはどのような「ふれあい」があるんですか?
稲本:他の牧場に行くことや、フレンド、メールといった機能があります。他の牧場に遊びにいったとき、代わりに動物や植物の世話をすることできるんです。世話された人は時間の短縮になりますし、した人はコレクションアイテムを手に入れることができます。
コレクションアイテムは自分の牧場でも手に入りますが、他人の牧場では違ったものになる可能性があります。
正式サービス以降に入るものとしては「おじゃまコロボックル」があります。これは牧場に現れて、ちょっとしたいたずらをするキャラクターです。説得すると帰ってくれるんですが、フレンドを呼んで一緒に説得するとより早く帰ってくれます。そういう協力プレイができます。
また、現在はギルドの要素は入っていませんが、この先皆さんに楽しんでもらえそうだなという段階になったら、検討したいと思います。
平田氏:今回『みん牧』の開発に携わって、かなり刺激的というか家庭用ゲーム機にはない考え方を知ることができました。「いかに友達と世話をし合うか」が大事なんですが、かといってコミュニケーション手段を複雑にするわけにはいかないというところです。
―――クローズドベータテストの反応はいかがでしたか?
廣田氏:始める前は、これまで家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機でしか発売されていなかった『牧場物語』を、コントローラでなくマウスで遊んでもらうことに不安があったんです。ゲーム性も操作性も変わるわけですから、受け入れてもらえるのだろうかと。
でもお寄せいただいた意見を見る限り、おおよそ楽しんでもらえたようです。もちろん良い話ばかりでなくて、バグがあるとか重いというお話もいただいていまして、そちらについては真摯に受け止め、対応したいと思います。
たくさんの方々に集まっていただかないとわからない負荷やバグが判明したんで、参加していただいた皆さんには本当に感謝しています。
平田氏:『牧場物語』シリーズのファンからは、ある程度反発や拒否反応があるかと思ったんですが、おおむね好意的に受け入れてもらえたみたいですね。「こういう『牧場物語』もアリなんだ」と。
稲本氏:『牧場物語』シリーズは幅広い層に受け入れられているので、『みんなで牧場物語』も特定の層を意識するというよりは、皆さんに楽しんでいただければ。
―――『みんなで牧場物語』は『牧場物語』シリーズの入門的な位置づけなのかも知れませんね。
平田氏:そうですね。たとえば家庭用ゲーム機のタイトルでは、序盤からストーリーを盛り上げていく必要があります。でもブラウザゲームにそれを入れるわけにはいかない。遊べるようになるまでの時間がすごく大事なんで。
稲本氏;ストーリーはブラウザゲームでも大事ですが、まずはできるだけ早くゲームの面白さを味わってもらいたいというのがあるんです。
平田氏:そういう意味では、『みんなで牧場物語』はシリーズ最速で牧場を大きくする楽しさを味わえます。
廣田氏:「シリーズ最速」! いい言葉ですね。その通りです。
平田氏:このインタビューを読んでいただいている方も、今公式サイトに飛んでいただければ、すぐ種をまくところまで進められるはずです!
―――読み終わる頃には花が咲いているかも知れませんね(笑)
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すぐに始められる手軽さも特徴 |
―――いわゆる「牧場系」のゲームはたくさんありますが、勝ち抜くための秘策はあるのでしょうか?
平田氏:実をいうと、そこまで他のタイトルを意識してはいません。強いていえば「動く壁紙」……こういうと『キン肉マン』かなにかの必殺技の名前みたいですが、「動く壁紙」のようにコロボックルが働いているさまを楽しめるところでしょうか。
廣田氏:コロボックルがかいがいしく働いてるのを見てるだけでも楽しめるようなにぎやかなゲームは、他にないと思います。日本で「牧場」がつくタイトルといえば『牧場物語』。おもしろさの確証はあるわけですから、プレイヤーの皆さんにも安心感があると思います。
稲本氏:ずっと世話することもできるんですが、ちょっと種をまいて、また実がなるころにログインすることもできるんで、他のタイトルと時間の取り合いをすることもないのかなぁと。特にこのタイトルでは他のプレイヤーと競争するとか、争うといった要素を最小限にしてますので、皆さんそれぞれの『牧場物語』をつむいでいただければと。
平田氏:あとから始めた人が「このサーバーは終わってるな……」と嘆くようなゲームではありません(笑)
稲本氏:先ほどお話ししたコレクションアイテムの出現率は、ゲームを始めたばかりの人と、やりこんだ人とで違うんです。たとえばゲームを進めた人は、なかなか出ないアイテムが出やすくなる反面、序盤で手に入ったアイテムが出にくくなります。そうすると、始めたばかりの人とコミュニケーションをして、分けてもらうほうが早くなるんです。
―――課金アイテムはいつから販売しますか?
平田氏:オープンサービス開始後、タイミングを見て課金アイテムを追加します。時間を短縮するものですとか、作業効率をあげるためのものが中心ですね。
―――クエストの数も増えるのでしょうか。
稲本氏:オープンサービスでは、クエストの数がクローズドベータテストのときの約3倍になります。クエストはツリー形式になっていまして、ひとつ達成すると次のクエストが出てきます。チュートリアルから始まって、動物の世話をするルートや、植物の成長をしていくルートなんかにわかれています。これは自分の牧場をどのような形にしたいかで、選んでいただけるようになっています。
平田氏:迷ったら、クエストです(笑)
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まずはクエストをこなしていくと良さそう | クエストは様々に分岐していくそう |
―――わかりました。では最後にユーザーの皆さんに向けてひと言ずつお願いします。
平田氏:ようやく皆さんに遊んでいただけるものができあがりました。マーベラス初のオンラインゲームをお楽しみください。
廣田氏:他の牧場を見ることで「自分の牧場はこうしたい」という思いが出てくるはずです。ぜひ自分好みの牧場を作っていただければ。
稲本氏:『牧場物語』に関われて幸せです。苦労したところもたくさんありましたが、こうして皆さんに提供できる日がきて、嬉しく思っています。ぜひ、遊んでみてください。