■参加者
稲葉敦志 プラチナゲームズ株式会社 取締役 カプコン、クローバースタジオなどを経て現職。プラチナゲームズではプロデューサーとして『無限航路』『マッドワールド』などを開発。『VANQUISH』でもプロデューサーとしてゲーム開発を統括。
萩山勇二 プラチナゲームズ株式会社 プログラマー 本作ではサウンド、イベントなどのプログラムを担当。
丹羽映理納 プラチナゲームズ株式会社 ミュージックコンポーザー BGMの制作を担当。本作ではサウンドプレステージ合同会社の高田雅史氏と共同でBGMを担当。
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■プラチナゲームズと三上真司が放つアクション要素満載のTPS
―――『VANQUISH』というタイトルの生い立ちから聞かせていただけますでしょうか?
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稲葉氏 |
―――核となったコンセプトというのは?
稲葉: 神谷英樹がアクションという得意分野で『BAYONETTA』を作りました。三上真司は何を作るか、と考えた時に、以前開発した『バイオハザード4』でTPS(サードパーソンシューター=客観視点のシューティングゲーム)という新境地を切り開いたノウハウを活かしたゲームを作ろう、と自然な流れで決まっていきました。『バイオハザード4』はアドベンチャー要素に寄ったTPSだったので、今度はプラチナゲームズが得意とするアクション要素を満載したTPSというコンセプトが面白いんじゃないかということになりました。それも宇宙ものに挑戦したいということからコンセプトが固まっていきました。
―――時期的にはいつごろの話でしょうか?
稲葉: プロジェクトとしての立ち上がりは2008年の春頃でしょうか。先ほども言ったように『BAYONETTA』が落ち着くまで本格的な始動は無理だと分かっていたので、各分野の核となる人物で十数人のチームを作って、少数精鋭でコンセプトを固めていきました。それが2008年中は続いたというイメージです。そこから徐々に『BAYONETTA』のチームが合流していって、トータルで2年半くらいの制作期間を経て完成という形です。
―――一番多い時でスタッフは何名くらいだったんでしょうか
稲葉: 70名くらいでしょうか。 内訳は、プログラマーが10名、デザイナーが30名、企画が4名、サウンドが4名、イベント関連が外部を含めて10数名です。
―――この規模のプロジェクトとしては少ないですね。驚きです。
稲葉: 普通の感覚からすると半分くらいかもしれません。でもプラチナゲームズでは普通なんです(笑)。プログラマーも少ないと思います。『BAYONETTA』の大森(亘氏、『BAYONETTA』でリードプログラマーを務める)と話をしていたら、全体のコード量と期間を考えると、『BAYONETTA』ではプログラマーは1人が1日に3000~4000行は書いていた計算になるということでした。後から考えると恐ろしいと(笑)。
―――それを可能にしているのは何なのでしょうか?
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萩山氏 |
―――なるほど(笑)。
萩山: ただ、実は今回の開発は『BAYONETTA』で開発したものをベースにしているので、"比較的"(強調!) 楽でした。システムの根幹の部分など、再利用できるものは再利用しています。最終的には手を入れた部分も多いですが、とりあえず動かせるものがあるというのは助かりましたね。
―――プレイステーション3版も今回はプラチナゲームズで作られたということですが(『BAYONETTA』ではPS3版はセガが担当)
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稲葉氏 |
―――PS3とXbox360ではディスク容量の違いがあると思いますが、どのように解決したのでしょうか?
稲葉: 実は終盤に一番苦労したのはそこなんです(笑)。事件は二度ありました。最初は効果音のスタッフが容量計算を間違えていました。二度目はマスターアップの2ヵ月前という時期になってメインプログラマーが「ディスク容量を間違えていた」と真っ青な顔で僕のところに来て・・・。2GBくらい間違えていたんです(笑)。
―――当時は笑えなかったでしょうね(笑)
稲葉: ええ。ただ、色々な工夫を重ねて何とかディスクに収める事が出来ました。といっても、何かが劣化したということはありません。見た目が変わらない範囲で圧縮率の調整などをかけています。
―――ディスクの中身の内訳はどのようになっているのでしょうか?
萩山: 大部分がムービーです。PS3は12GBのうち9GBがムービーで、残りの3GBの半分ずつがゲームデータと音声という感じです。ムービーは総尺で80分以上入っています。
―――ということはムービーの大半はプリレンダムービーということでしょうか?
萩山: そうですね。イベントは基本的に全てプリレンダムービーです。当初はリアルタイムムービーも考えましたが、ロード時間を短くしたいという思いから、全てプリレンダムービーにしました。ムービーの圧縮はすべてCRIのミドルウェア「Sofdec」で行っています。
―――なるほど。ロード時間に配慮されているのですね。
萩山: そうなんです。最初からロードが結構きついというのは想定としてあって、開発のかなり初期段階でリアルタイムムービーは使わないことを決めていました。それでもよりロード時間を短縮したかったので、最初にハードディスクへのインストールを必須にして、ロード画面にはストーリーの説明などを入れるようにして、なるべくロード時間を意識させないような工夫をしました。
―――ゲームの合間に、主人公のサムの視点になる演出がありますが、HUD(ヘッドアップディスプレイ)が透けていて面白い表現になっていますね。
稲葉: 『VANQUISH』はTPSなのでバトルスーツは外観からしか見ることができません。サムのバトルスーツ感を出すための演出は何か入れられないか、ということで採用された演出です。
―――ちなみにHUDの部分はリアルタイムでやられているのでしょうか?それともSofdecのαムービー(※)でやられているのでしょうか?
萩山: HUDの部分はリアルタイムで行っています。
※α(アルファ)ムービー・・・ムービーに透過度を持たせて、ゲームの背景と融合させる手法。CRI Sofdecを使うと簡単に実現することができる。
■激しさ満点のアクション