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「ベンチャーVS大手」スマホゲームでどう戦うか―セガ・スクエニ・アドウェイズが語る

コナミがソーシャルゲームで大きく成功しているというニュースもあるなど、これまでベンチャーが牽引してきたソーシャルゲーム市場でも次々に資本力に勝る大手が参入し市場を席巻しつつあります。しかしベンチャーではもうダメなのかというとそうではないはずです。

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コナミがソーシャルゲームで大きく成功しているというニュースもあるなど、これまでベンチャーが牽引してきたソーシャルゲーム市場でも次々に資本力に勝る大手が参入し市場を席巻しつつあります。ベンチャーではもうダメなのか、そんな声を代弁するようなセッションが「グリープラットフォームカンファレンス2011」にて行われました。

モデレーターを務める東京芸者エンターテインメントの田中泰生氏。パネリストにはセガで『Kingdom Conquest』を担当する椎野真光氏、アドウェイズで『カイブツクロニクル』を担当する桑田一生氏、スクウェア・エニックスで『ケイオスリングス』などを担当する安藤武博氏の3人。

モデレーターの田中氏は冒頭「AppStoreのランキングを見ても、売上上位はスクエニ、セガ、アドウェイズ、グリー、、、と大きな会社ばかりで夢が無くなった。もうちっちゃい会社じゃ駄目なんでしょうか?」と問い掛けます。

これに対して大手のセガ椎野氏は「『Kingdom Conquest』には小さなオンラインゲーム一本分くらいの予算をかけています。ウチみたいな大きな会社は動きが遅いので、一発一発で勝負しないといけないので」と返答。ベンチャーと大手の投資スタイルの違いが今のところの結果を生んでいることを示唆しました。

ぶっちゃけトークを連発する田中氏は「大したゲームじゃない『カイブツクロニクル』をヒットさせているアドウェイズさんにはマジックがあるのではないか?」と質問。

対するアドウェイズ桑田氏の言葉は「おっしゃる通りでガラケーっぽいゲームで、何故売れたかは正直分かっていません。自分はブリザードのディアブロが好きで、ああいうシンプルな感じの面白さをどう表現しようかと考えました。スマホは社会人が多いので、ファミコンの時のような楽しさを落とし込めれば、運とタイミングで成功する可能性もあるんじゃないでしょうか。」ということでした。

『Kingdom Conquest』はかなりの予算がかかっているとのことでしたが、『カイブツクロニクル』は10人くらいのメンバーで4~5ヶ月、ただし中国なので1000万円程度の投資だったそうです。これに対して売上は、ということ、「『Kingdom Conquest』は日商最高が600~700万円。うち日本は6~7割を占めています」(椎野氏)、「以前TechCrunchが記事タイトルで最高額を載せていますが(=200万円)、それが最近はアベレージで出ている」(桑田氏)とのことでした。

どうやら200~300万円を売り上げれば、日本のAppStoreでは1位を獲得できるようです。

両タイトルは基本無料タイトル(Free 2 Play)ですが、売り切りタイトルを中心に展開しているスクウェア・エニックスはどうでしょうか。

「ウチのタイトルは高いのですが、売り切りでここまで値段が付けられるのはスクエニさんだけだとアップルにも言われました。といっても、携帯ゲーム機で5000円で売るタイトルが1800円とかなので決して安く売ってるわけではありません。良い物を100円で売ればお客さんは嬉しいでしょうが、未来が無いと思っているので、敢えてそうしています。ただし、基本無料のタイトルの可能性も十分認識していて、現在そうしたタイトルも開発中です」(安藤氏)

ユーザー獲得の面ではいかがでしょうか? どのタイトルもAppStoreの上位にいると、そこからの誘導が獲得の柱になっていくようです。

「『Kingdom Conquest』はランキングの依存度が高いですね。アドウェイズさんほど、Inviteを活用できてません」(椎野氏)、「『カイブツクロニクル』の場合、新規ダウンロードの2割くらいをランキングからです。このゲームはTwitterボタンを置いていて友達と共有できるようになっています。そこから入ってくる人が意外と多いんです」(桑田氏)、「スクエニということでの注目度もあり、お金を使わなくてもある程度集められるのは大手の特権ですね。これはデベロッパーさんがスクエニと組む際のメリットにもなると思います」(安藤氏)と各社それぞれの様子でした。

続いてはプラットフォームの話題です。最初はネイティブアプリで展開するのか、ウェブアプリで展開していくのかという問題です。

「セガは基本的には全方位ですが、個人的には重めのネイティブアプリで勝負したいという気持ちがあります」(椎野氏)、「自分達しか出来ない事を突き詰めるとネイティブアプリになります。ネイティブアプリだとコンシューマーライクの作り方が出来ますので。でも両張りです」(安藤氏)、「お金もリソースも潤沢ではないので、ウェブアプリが中心になると思います。HTML5も出てきて、身に付けやすいですし、iOS/Androdiの両方で提供できますので」(桑田氏)とのこと。

資金力を活かした大規模な開発ではネイティブアプリに軍配が上がり、機動力や習得期間の面ではウェブアプリが優位という認識で、各社の強みをどう考えるかという話になりそうです。

最後にアプリであれば自社で展開するのか、もしくはグリーやDeNAのソーシャルネットワークに乗るかという問題もあります。これについては場合に応じて、という事になるようです。

「社内でも方針が決まっているわけではありません。ソーシャル性が効きづらいタイトルは単独でやってもいいですし、ソーシャルを活かしたものであればグリーのようなプラットフォームで組んでもいいと思っています」(椎野氏)

「『カイブツクロニクル』は昨年8月のスタートで、他に手段が無かったので単独で展開しました。プラットフォームと組むメリットもあるので、両方やるつもりです。グリーさんなどだと元々お客さんの居る市場に向けて展開ということにもなりますし。でもその分、ライバルも多い。マーケティングアクト、プラットフォームありきで考えるよりは、面白いゲームを作って最後にプラットフォームを決めるのがいいんじゃないでしょうか」(桑田氏)

「どちらもありですね。グリーさんと組む時は、自分達ではできないことがどこまで実現できるかが鍵だと思います。ガラケーで感じたのは、グリーさんのコンサル能力は凄いということ。『ナイツオブクリスタル』は最初は駄目駄目だったのが、色々教えていただいて人気アプリに成長できました。GameCenterという競合もあり、プラットフォーム自体も厳しい戦いになると思いますが、それぞれ一緒に何ができるかという観点で考えていくつもりです」(安藤氏)

かなり具体的な数字も飛び出してきたこのセッション。それぞれ成功を収めた話を聞いていくと、自分達の強みは何であるかという認識のように感じました。AppStoreの売上ランキング上位を見ると、いつの間にか大手が強い結果になっていますが、桑田氏が示唆したようなベンチャーなりの強みで勝ち抜いていってもらいたいものです。
《土本学》
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