まずインターネットなどのネットワークに関連する特許(いわゆるネットワーク特許)について、「ゲームシステム」「ゲームサーバ」「ゲーム端末」「ゲームプログラム」「ゲーム方法」などというように構成要素が複雑化していることから、処理の主体がどこで、何をするのか、という点を詳細に記載することが特許出願では重要であると述べました。
一方で権利を侵害された場合もネットワークの構成は複雑化していて、確認事項が大幅に増えているということです。例えば、
・特許はどの国で取得?
・特許内容はサーバー、端末、システム?
・権利侵害箇所はどこ?サーバー、端末、システム?
・権利侵害者は誰?どこにいる?
・どこの国で実質的なサービスを提供している?
などです。ネットワークサービスにおいては事業主体が日本に帰属している必要がないので、権利についても何の特許にも引っかからない可能性があります。サーバーのクラウド化も今後も進んでいくため、問題は尽きないと考えられます。
■激化する特許紛争
ソーシャルゲームに限らず近年増えているのは「儲かっているのが目立つと特許紛争になるケース」だとか。特に米国ではパテントトロール(いわゆる日本で言うところの特許ゴロ)と呼ばれる存在があり、日本企業は格好のターゲットになっているそうです。日本で特許を取得して、それを侵害している企業を探して訴訟を仕掛けるといった場合もあるとか。
また、競争が激しく類似の商品が多い市場では差別化の手段として特許に注目が集まるケースもあります。ソーシャルゲームの分野でも類似ゲームを巡る訴訟というのは既に多く発生しています。恩田氏は韓国、台湾、中国企業も多数の特許を取得するようになっているため、動向には警戒する必要があると述べていました。
戦略論としてある米国のゲームメーカー幹部は「特許で訴訟になれば、訴訟相手の会社ごと買ってしまう」と述べたケースもあるそうです。つまりこの分野の紛争は更に激化していくことを示唆しています。
恩田氏はソーシャルゲームのようなネットワークゲームは特許取得や侵害問題など従来の特許よりもはるかに複雑で取り扱いは難しいと言います。しかし、『Mafia Wars』のゲームシステムが特許で保護されていたら・・・と考えれば莫大な利益が転がり込んでいたのは間違いなく、特許の調査や取得など権利と上手く付き合って活用していくことが求められると語り講演を締めました。
ちなみにバンダイナムコゲームスでは保有特許の一部について「開放特許情報DB」にて公開しているとのことで、使用したい特許などあった場合は特許部宛に連絡を、とのこと。