―――開発チームは何名くらいの構成だったんですか?
岡田: 20人弱でしょうか。最初は各セクションのメイン核の数人でやってましたね。後半はさすがに追いつかないので増えていきましたが。若手が多いチームでして、2、3年目の活力あるメンバーが多かったですね。
―――サウンドが重要なゲームですが、サウンドチームはゲームデザインにも関わっていったのでしょうか?
北村: そうですね。『謎惑館』はかなり小規模なチームのゲームでして、企画の初期からサウンドが関わっていきました。ゲームの中心である部屋のデザインをする部分にも関わっています。どうやったら立体音響が活きる部屋になるか、企画と一緒に考えるという感じです。
―――今回、50以上の部屋があるということで、それを練るのは大変だったのではないでしょうか?
![]() |
野中氏 |
野中: 部屋の企画をしている時はみんなで毎日3部屋くらい考えてましたね。
岡田: カプコンの保養所が賢島にあって、みんなで集まってどれにするか決めるという合宿をしましたね(笑)。そこで核となる大部分が決まって、なかなか効率的で良かったですね。
―――アイデア出しも大変そうですが、開発の方も苦労されたのではないですか?
野中: 部屋毎にそれぞれ特徴が違っていて、音声認識のような基礎的な部分は汎用性があるのですが、ジャイロセンサーを使った遊びは部屋によって少し使い所が異なったりして・・・。かなり気合いで作った感じですね。あとは企画者でも使えるようなツールを用意して、ある程度の部屋のデザインは企画者ができるようにして上手く作業を分担するようにしました。
■ミドルウェアの活用で困難を乗り越えた
―――まず、今回はカプコン自社エンジンの「MT FRAMEWORK Mobile」を利用されていますね。MT FRAMEWORKを使う理由というのはどういうところが大きいのでしょうか?
野中: 「MT FRAMEWORK」はカプコンがゲームタイトルの開発に汎用性を持たせ、効率的に開発を進めるための自社ゲームエンジンです。端的に言えば、開発期間が劇的に短くなります。据え置き機向け「MT FRAMEWORK」、携帯機向け「MT FRAMEWORK Mobile」を整備しており、社内の経験者が多く、ノウハウを転用しやすいです。3DSでもMT FRAMEWORK Mobileという形で利用できる環境が整っていましたから採用しています。もしこれがなければ1年で完成というのは無理だったでしょうね。
―――CRI・ミドルウェアが提供するオーディオミドルウェア「CRI ADX2」の音声圧縮コーデックHCAを『謎惑館』で採用することになったということですが、採用に至った理由というのは
![]() |
小島氏 |
小島: その後、何度か直接お話をして、今から圧縮技術をスクラッチで作るという事と比較して、外部の技術を採用した方が有利だろうということで決定しました。
―――なるほど
小島: 自社内でやるのか、外部に協力をお願いするのか、判断は難しいところです。ただ、社内のリソースは限られていて、色んなチームから色んな事を実現したいと要望が上がってきます。会社的にはすべてに対応したいと思っても、皆の言っている事を聞くのは難しいというのも事実です。今回のようにコーデックだけライセンスいただく、というような柔軟な対応をお願いしてCRIさんとお付き合いできたのはとても幸運でした。
CRI郷原氏: 実際にはHCAはどういう用途にご利用いただいたのでしょうか?
岡田: 今回は曲数がハンドヘルド機としては多い方なんです。具体的には120曲ほど収録していて、だいたい1曲あたり平均すると1分以上あるので、2時間分以上の楽曲を収録しました。それらをROMに収めるためにHCAを利用しました。
北村: 今回HCAで圧縮したのは長尺のBGMだけでしたが、ファイルサイズが減ったのはもちろん、圧縮率に対して音質は保てたと思います。
CRI郷原氏: ファイルサイズは大きい方が一見、音質も高いように感じると思いますが、HCAは効率的な圧縮方法を採っていて、サイズと音質を両立できています。またHCAには音の特性による得手不得手がなく、高域の音が沢山入ると音自体が破綻してしまう、といった問題も発生しません。
―――処理負荷の高いリアルタイムバイノーラルとの同時再生もあったと思いますが、そのあたりでHCAの処理負荷はどうだったのでしょうか?
野中: やはり処理負荷は上がります。音数を減らすといった調整はもちろんありました。ただ、比較的「音」にリソースを割けるタイトルだったので助かりました。絵もシンプルなものが中心ですしね。あとは部屋によってかなり違うものなので、個々の調整で済ませました。
―――『謎惑館』でHCAはMT FRAMEWORKにはどのように組み込まれているのでしょうか?
小島: ベース部分があり、その上にタイトル毎のカスタマイズを行う、といった形です。そのカスタマイズ部分にHCAを組み込みました。タイトルを作る際には、特にHCAを意識しなくても利用できるようになっています。
―――そのあたりの作業は順調だったのでしょうか?
![]() |
寺畑氏 |
―――音声認識も別のミドルウェアを利用しているとのことですが?
野中: 音声認識については任天堂さんが用意している音声認識ライブラリを利用しています。どんな年齢や性別でも対応できています。認識できる言葉の数をカスタマイズして拡張しています。ぜひいろいろな単語を試してほしいですね。
■これからの開発