企画についてはZeniMaxの傘下に入る前から幾つか検討を行なってまして、現在のサバイバルホラーというジャンルに落ち着くまでは紆余曲折ありました。大きく後押ししてくれたのはZeniMaxの他のスタジオのクリエイター達で、「もう一度三上さんのサバイバルホラーが遊びたい」とみんな言ってくれるわけです。「お前が作らないなら俺に作らせろ」というようなクリエイターもいました。そういう期待に応えるのも面白いんじゃないかなと思いましたね。
―――ユーザーさんの中にも三上さんにはもう一度サバイバルホラーを作って欲しいと思ってる方が多いと思います
それは分かってます、でも天邪鬼なんで「作ってくれ」と言われると別のものを作っちゃうんです(笑)。でもそろそろサバイバルホラーを作ってもいいと思うタイミングだったんでしょうね。そこに声をかけてもらって、その気になってきたのかなと。
―――やはり「バイオハザード」は意識するのでしょうか?
正直に言うと、「バイオハザード」と違うということを最初は強く意識していました。でも、そこを意識することで逆に自分を見失ってしまうのではないかと考え、今は自分が思うサバイバルホラーを純粋に作ろうという気持ちで開発を行なっています。
―――自分が作ったものを超えなければ、というような想いはありますか?
それは当然ありますね。ただ、それとゲームのスタイルを意識するのは違うかなと思います。
―――三上さんの考えるサバイバルホラーを改めて教えていただけますか?
恐怖を自分の手でぶち壊す、破壊するという爽快感ですね。恐怖による緊張感を破壊していく、弱いものが強いものを倒す、そしてそれを自らが体験するというものです。同じテーマを描きながらホラー映画では表現できない、ゲームならではの体験という部分にこだわっています。
―――公開されたイメージボードには気になる部分が沢山あります
公開したイメージボードは雰囲気を伝えるのが目的で、具体的に何かメッセージを伝えたいというのはありません。本来のゲームから外れているわけではありませんが、少しぼかしています。色々なものが描かれているので、こんな場所があるんだ、と想像していただいているようで有り難いのですが、そこまで深い意図は無いものです(笑)。
―――「Zwei」という開発コードは何を意味しているのでしょうか?
ドイツ語で「2」という意味です。最初は意味があったのですが、今では単なるコードネームになってしまいました(笑)。元々響きが気に入ってたんです。
―――三上さんも現場ベッタリで取り組んでいるそうですね
ウェブサイトではエグゼクティブプロデューサーという肩書きになっていますが、Zweiへの関わりは日本で言うところのディレクターです。本当に現場ベッタリで、他のスタッフと机を並べて日々開発に取り組んでいます。しんどい事 も多いですが、今は楽しめています。
―――三上さんのゲーム作りについても聞かせてください。三上さんのゲームはあまり日本や世界を意識せずに、それでも世界に通用しているような印象を受けます
特に海外のユーザーを意識して作っているわけではありませんし、それはあまり上手く行かないやり方ではないかと思ってます。マーケッターがゲームをつくるようなもので、大失敗はしないけれど大成功もしないゲームしか作れないんじゃないかと。じゃあ何をやってるのかというと、海外のゲームも日本のゲームも意識せずに遊ぶような人をチームに集めるんです。すると、出来上がるゲームも自然と海外よりなゲームになります。
―――ワールドワイドで通用するものを作りたいという意識はやはり強いのでしょうか?
日本のゲームの良さを再認識させたいという思いはあります。世界に挑戦するといっても、野球選手やサッカー選手のように日本から離れる必要もありません。日本から世界にチャレンジして、できるだけ多くの人達に自分達のゲームの良さを発信していければと思ってます。
―――三上さんから見て今後のゲーム開発はどのようになっていくと思われますか?
これまで以上に二極化が進むと思います。NASAが研究者を集め最先端の技術でロケットを作りながら、一方では町工場が職人芸でロケットを作るような。ゲーム開発の技術は既に非常に高いところまできていて、id Softwareのジョン・カーマックなんかはNASAでロケットエンジンを作りながらゲームも作ってます。そのくらい卓越した技術を持って作るチームと、小規模で職人的に作るチームに今以上に分かれていくのではないでしょうか?
―――Tango GameworksはNASAを目指すと
まあ、NASAになりたいわけじゃないんですけど(笑)。ただ、ワールドワイドで通用するゲームを作ろうとするとどうしても最先端の技術レベルが求められますので、そこはやっていくつもりです。今後も急速に発展していく世界だと思いますし、技術者にとっては可能性を試せるチャレンジングな舞台になるんじゃないでしょうか。
―――Tango Gameworksでは人材募集も積極的にやられていますね。「Zwei」の発表もそこを意識したものだと聞きました
Tango Gameworksは1つもゲームを発表してません。でも、まだまだスタッフは増やしていきたい。何をやってるかも分からない会社に入社しようとする方はなかなかいらっしゃらないので、今回はこういう形で「Zwei」を発表することになりました。
―――Tango Gameworksではどんな経験ができるのでしょうか?
冒頭でも言いましたが、人を育てられるスタジオになりたいと思っています。その為には職種の壁を超えゲーム開発の様々な箇所に関わることができ、かつ自由闊達な雰囲気が重要と考えています。社内にはパーテションはなく、ワンフロアで全体を見渡せるオフィスになっています。気軽に集まって意見を交わしたり、文句を言い合ったりできる環境です。また、職種や上下関係に囚われることなく、実力本位で正しいと思える意見が通る雰囲気、空気作りを僕自身も心がけています。
―――最後にゲームユーザーの方にも一言いただけますでしょうか?
今は「サバイバルホラーをもう一度作ります」としか言えませんが、期待しておいて下さい。もっと多くを話せる時期が来るのを楽しみにしています。
―――どうもありがとうございました