登壇者は、神谷誠監督、土井淳CGディレクターによるモデレーターはデジタルハリウッド大学の高橋光輝准教授です。
■「バイオハザード ダムネーション」制作のきっかけ
神谷監督は、2作目となる映画誕生の経緯について「そもそも映画を担当することになった大元のきっかけは、10年くらい前にカプコンさんの『ディノ クライシス3』のムービーパートの演出をするという話がありました。ちょうど『ディノ クライシス』シリーズのディレクターやプロデューサーに『バイオハザード』シリーズを手がけていた人たちが揃っていたので、バイオが本当に好きだというのを散々話したんです。それから数年後、巡り巡って『バイオハザード』のCGアニメを作るという企画が立ち上がったんですね。その時、思い出してもらってお話を頂けたんだと思います。その際、ゲームのCGを実際に制作していたのがデジタルフロンティアなんです」と語ります。
こうして制作された1作目「バイオハザード ディジェネレーション」は、日本では2週間で3館のみという規模でした。しかし平日でも超満員、DVDのセールスも世界的に好調という結果に。そこで2008年末頃、2作目についての打診を受け、2009年春ごろより具体的にプロジェクトがスタートしたといいます。
■より具体的な制作ワークフローの解説
予告ムービーの後、土井氏が制作ワークフローについて説明します。まずは作品のシナリオを決めた後、ロケハンで舞台設定についてイメージを固め、持ち帰ってから画コンテ作成という流れになります。
本作では、キャラクターデザインと背景イメージボードを同時進行。キャラクターデザインでは、まず線画のデザインを起こしてもらい、CGモデルを作成。フェイシャル(顔の表情)やクロス(服)・ヘアー(髪)シュミレーション、ライティング(照明)と素材を揃えていきます。背景部分は、ロケハンしたものを元にイメージボードを作成し、モデリング作業や必要最低限のものを簡単に置いただけのローポリゴン作成などへと移っていくこととなります。
アニメーションは、画コンテを元にモーションキャプチャ(芝居)を撮影し、アニマティクス(CGで作るビデオコンテのようなもので、アニメーションの基礎となるもの。全体の尺にも関わる)を作ります。さらに表情や背景を足していくことで、アニメーションが完成。完成した素材を合成してからカラコレ(シーンごとに色のトーンを調整する)を行い、最後に3D化となります。
■制作スケジュール解説 ― 脚本
本作の脚本は担当した菅氏だけはなく、神谷監督とプロデューサーチームによるミーティングの積み重ねで作成されました。最初は月に1度、徐々に2週間に1度くらいの頻度で話し合いを続け、管氏がプロットを取りまとめて議論を重ねるという形をとりました。
今回は2作目ということで、最初は「1作目でできなかったことをやりたい!」と非常に盛り上がってしまう結果に。「カーチェイスがやりたい!」という案はすぐに却下され「バイクで走りたい!」も画コンテまでいったものの、最後は泣く泣くカット。
脚本とは全体の設計図であるため、やりたいものの詰め込みだけでなく、制作ラインにのせる時のスケジュールや予算、作品のバランスに問題はないかを考えます。なかにはオーディション直前までいたキャラクターが、オーディション直後にいなくなったこともあるとか。「こうした取捨選択の作業をしっかり確実にやっておかないと、後で必ず大きなしわ寄せがくる」と神谷監督は言います。こうした作業はロケハン後の画コンテ作業でも行われ、スケジュールや予算で難しい部分を違う方向へと考えられていきます。
■制作スケジュール解説 ― ロケハン
2010年末前には脚本の決定稿までこぎつけ、続いてウクライナのロケハンへと向かうことに。前作はアメリカが舞台だったため、監督をはじめ実際に行ったスタッフも多数。ハリウッド映画などにもお手本がたくさんあったので、イメージはとても掴みやすいものでした。
しかし、今回の舞台となるのは東欧に存在する架空の国。スタッフ10人に「東欧とはどんなイメージなのか?」と聞いても全員から異なる答えが返ってくるような場所のため、実際に見に行って雰囲気や建物、人物を確認してみないとイメージの共有は非常に難しいものだったといいます。ロケハンで撮影された映画冒頭に登場する地下道や、大統領府のイメージ写真なども披露されました。ちなみに作中の大統領は、実際にウクライナで大統領をつとめた女性をモデルにしたそうです。
(後編に続きます)
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