―― 『ダンガンロンパ』がゲームからアニメになって、どんな印象を持たれましたか。
―― 緒方恵美さん(以下緒方)
アニメにも、ゲームが持っている要素や面白さが十二分に反映されているところに感激しました。
もちろんこのゲームがすごく好きだというのもあるのですが、ゲームの時からラジオ番組を担当していた「『ダンガンロンパ』宣伝隊長」として言わせて頂きますと!(笑) ゲームがまず面白いんです。
推理ゲームで多いのは、選択肢3択くらいから選んでクリックしていくものですが、『ダンガンロンパ』は数々のミニゲームをクリアして、プレイヤーが犯人に気付いていく仕掛けになっています。
ミニゲームは、シューティングだったり、犯人の名前の文字がアナグラムで出てきて並べ替えたりといろいろ出てくるんですが、
生徒みんなが参加する学級裁判のシーンでは、みんな、自分が犯人と思われたくないから、ウソが飛び交う。その飛び交う言葉が弾幕になって出てくる。証拠を集めて「弾丸」にして、銃で狙ってバン!って撃って、正しい証拠だったときに初めて撃ち抜ける。これで「論破」。だから『ダンガンロンパ』。
リアルタイム進行なので、ミニゲームもタイムを過ぎるとロンパできない緊張感もあるし、自分が登場人物たちにいろんな言葉を言われた末に結論を出してロンパする達成感が、リアルに“クる(来る)”感じがあって。
―― 緒方
この作品はいわゆる『バトルロワイヤル』のような生徒同士のコロシアイとか、『人狼』的なウソの証言の中から犯人捜しをするものなんですが、描かれ方が凄惨すぎずに、適度に「ポップ」なんですよ。作品紹介では「サイコポップ」と謳われているんですが、「学級裁判」とか「おしおきシーン」とかの緊張するシーンでも、絵や見せ方がおしゃれだったり、突然ポンとギャグが入っていたりと妙な明るさや軽さがともなっていて。全体的にスタイリッシュ、でもしっかりガッツリエッジの効いたテイストに仕上がっているんです。
ゲームファンの方にはそういうところが受けているんですが、アニメでも、サイコな緊張感とハイスピード感、そしてポップさを原作ママに表現しようとしていて、アフレコでもそれをすごく感じるんです。
―― 『ダンガンロンパ』のアニメのアフレコでは、どんな点が特徴的ですか。
―― 緒方
学級裁判、お仕置きシーン、処刑シーンなどのハラハラ感ワクワク感をアニメにしようとしていて、たとえば学級裁判で犯人を追い詰めていく過程で、生徒たちが自分が犯人と思われないようにウソが飛び交うんですけど、その飛び交うシーンには、私たち役者がセリフをかぶせてかぶせていくんですね。
そのリアルな掛け合いが、ゲームのもつリアルタイムな緊張感を再現していて、演っていても次第に手に汗かく感じ。尺の都合上カットされる部分も多くて残念ですが、その分日常生活シーンも含め、まさに「ハイスピード推理アクション」になっていると思います。
―― アニメのアフレコをされたご感想はいかがですか。
―― 緒方
アニメでは、役者のみんなと“生のやりとり”ができるのが、とてもうれしいです。
ゲームのアフレコではひとりでセリフをしゃべることになるので、頭の中で「この人が演るならこんな感じで言ってきてくれるだろう」と相手の言い方を想像して演じていたけど、アニメでは実際に相手が演じてくれるので生の掛け合い(会話)ができる。
そろった役者さんがみなさん中堅とかベテランの方々で……うまい役者さんたちと一緒の現場は楽しいです。セリフの掛け合いでも、こちらも手加減なしでぶつかり合えるから。
■ モノクマのしゃべりの存在感は、大山さんの世代なら
―― モノクマ役がベテランの大山のぶ代さんというところでも話題になっていますね。
―― 緒方
そうなんです。最初にゲームのときにキャスト表を見たら大山のぶ代さんのお名前があって、ホント!? と。マネージャーに電話で聞いたくらいです(笑)。
何といっても大山さんのモノクマはハカイ的です。大山さんの持ち味である、あの明るいユルめのキャラクターのテンションで、楽しげにヒドイことを言ったりする。存在感がすごいでしょ?(笑)
「ダンガンロンパシリーズ」は、「世代による役者の芝居の差」が、とても良い効果を生み出しているなあと思います。。
ひとくちに役者と言っても、世代によって習ったり流行ったりする演技メソッドが違うので…あのモノクマのしゃべりの存在感は、大山さんの世代ならではだなと。
―― 「世代の差による芝居の差」とは具体的にはどういったものですか。
―― 緒方
大山さん以下、私より先輩世代の声優は、子役や新劇の舞台役者出身の方が多くて、アフレコのときも、舞台のように遠くの距離まで通る声になるんですね。演技もオーバーアクション気味で、特にマンガ的なコミカルな役などでは、圧倒的な存在感があります。
対して、今の若手はナチュラル志向です。そこまで張らなくても自然な声を拾ってくれる機材の発達もありますが、「キャラ=等身大の自分」を求められることも多い。それくらい、よりリアルが求められます。
私自身はその中間…というか途中経過世代ですが、若手とベテラン、両方の芝居を見て、改めてリアルな芝居も舞台的な芝居も、自在にできるようになれたらいいなと思いました。
『ダンガンロンパ』のアフレコ現場では、そういう新しい発見が幾つもあって。
アフレコ現場はみんな仲が良くて和気藹々なんですが、一方で、演じている最中は、学園に閉じこめられた生徒たちと心理的に重なるところも…。音の漏れない小さなアフレコブースに学園のメンバーだけでこもって演じていると、世界にはこの閉じこめられたメンバーだけしか居ないんだ、という心理になってきて、それが作品の持つ閉塞的な臨場感にも繋がっているんじゃないかなと。ってどこのスタジオも同じ環境ですが!(笑)
あと私個人としては、「ゲーム時代からの宣伝隊長」という特殊な職種上(笑)、スタッフさんたちとも比較的同じ温度感で関わらせて頂いているのも、ありがたく思っています。
―― スタッフさんと同じ温度感?
―― 緒方
はい。私たち声優は、実は作品に関われる時間が少なくて、普通は1話に付き、アフレコをしている4、5時間ぐらいしかないんです。でも、この作品では、もっと深く関われている気がします。
岸誠二監督以下、スタッフがゲーム『ダンガンロンパ』が好きで集まっていて、自らチームに加わりたいと入って来るくらいで(笑)。私も同じくらいダンガン好きな上に広報担当なので、アフレコ現場以外でもいろいろ「ダンガン交流」しています(笑)。
先日も、シナリオ打ち合わせを兼ねた飲み会というのに誘われて。そこではちょうど、シリーズ構成の上江洲誠さんのシナリオを、9ページは削らないといけないと議論している最中でした。
■ 熱いカタマリを受け取って欲しい
―― 9ページも削るのは、相当大変そうですね。
―― 緒方
既に相当吟味した後のシナリオなんで尚更…そのとき、岸監督がある部分をさしてこう言ったんです。
「この苗木くんのセリフ、6行切りましょう……緒方さん、この苗木くんの心情を『ため息』一個で表現できますよね?」って。いきなりこっちに話を振られて。
演じるほうとしてはもう責任重大ですよね(笑)。でもそれは、仲間としての信頼の証。原作ファンでもある監督達の「断腸の思い」…わかっているから「ハイ喜んで!」です(笑)。そんなふうにねばって、信じて、渡して作っていく現場なんですね。岸監督の熱意が周りのみんなを動かしているのだと思います。
―― 最後にそんな『ダンガンロンパ』を楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。
―― 緒方
膨大なゲームの内容を、アニメでは全13話分におさめるためにシーンやセリフをそぎ落としたり、研ぎ澄ましたりしていて、それが密度の非常に濃いセリフや物語になっている理由でもあります。
非常に熱量の高い、熱いカタマリみたいな作品だと思います。そのカタマリを、ぜひ皆さんにもそのまま受け取って欲しいなと思います。
[インタビュー取材・構成: 渡辺由美子]
『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 The Animation』
7月よりアニメイズム枠にて放送開始
http://www.geneonuniversal.jp/rondorobe/anime/danganronpa/
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