「Marmalade SDK」の特徴は、デバイスやプラットフォームに合わせて、CPUネイティブのバイナリ(ARM/MIPS/x86)を生成することができ、ハードの性能を最大限に引き出すことができる点にあります。モバイルにおいても作り込まれたゲームが増加していて、ライブラリのボトルネックは最小限であるに越した事はありません。また、ゲーム開発で標準的に用いられてきたC++が基本となることから、過去の資産の再利用も容易です。オープンなシステムであるため、過去に培ってきた独自モジュールを追加するなどの拡張も可能です。クロスプラットフォームにも力を入れており、他のゲームエンジンが弱い、Blackberry、TIZEN、スマートテレビ、STBなどもカバーします。
パートナーも豊富で、Scaleform、Photon Cloud、admob、playhavenなどの機能を容易に組み込むことができるようになっています。今回のGTMFでは、CRI・ミドルウェアが提供している統合音楽ソリューションの「ADX2」がMarmalade向けにも提供されることが発表。ますますエコシステムが拡大しています。
数千タイトルがリリースされている「Marmalade SDK」。国内でもコナミデジタルエンタテインメントの『ワールドサッカーコレクションS』などの開発に採用。NVIDIAのSHIELDのプリインストールゲームである『Expendable Rearmed』はドリームキャストでリリースされた『Millennium Soldier』を移植したものだそうです。ピーター・モリニューの新作『Godus』も「Marmalade SDK」で制作が進められているとのこと。前作の『Curiosity』ではUnityを採用しましたが、直接ハードウェアを叩ける事やカスタマイズ制が評価されたようです。
ハードウェアまで叩ける「Marmalade SDK」だけでなく、ハイレベル言語で容易に開発できるプラットフォームとして「Marmalade Quick」も同社では提供。こちらではCocos2D-xやBox2Dをベースに、Luaで2Dゲームを迅速に開発できるもので、特に「Marmalade SDK」には依存せずに開発が可能です。
「Marmalade Juice」というiOSのネイティブコードで書かれたアプリケーションを「Marmalade SDK」で動作可能な状態にコンバートするためのシステムも提供。iOSのUIKit、課金、プッシュ通知、Game Centerなどの独自機能を「Marmalade SDK」のAPIにマッピングするため、ネイティブのパフォーマンスを活かしながら、iOS以外のAndroidやWindows8などのプラットフォームに移植することが可能となります。iOSの資産がありながら、クロスプラットフォーム展開ができない、と悩んでいるメーカーには朗報と言えそうです。
まだまだ日本での知名度は低い「Marmalade SDK」ですが、日本語のサポートも提供されますし、ドキュメント類も日本語化が進みます。また、書籍の日本語化も行われているということで、導入のハードルは下がっていくと考えられます。登壇した中村靖氏によれば日本市場の開拓も順調に進んでいるということで、モバイルゲーム開発の際には考慮に入れても良いのではないでしょうか。