今まで想像しなかったような場所で、美しい映像を上映することができることから非常に注目を集めている「プロジェクションマッピング」。日本国内で最初に注目を集めたのは東京駅のリニューアル完成に合わせて行われ、僅か2日間で10万人を動員した「TOKYO STATION VISION」でしょう。CEDEC 2日目には同プロジェクトを手掛けたNHKエンタープライズの森内大輔氏が登壇しました。
森内氏らは「日常を劇場に」というテーマで「劇的」というプロジェクトを推進しています。「TOKYO STATION VISION」はその作品の一つ。東京駅が復元されたことを記念し、東京駅全体をスクリーンにしてしまおうという超巨大なプロジェクションマッピングのプロジェクトです。明治、大正、昭和、平成という時代を駆けてきた東京駅の100年間を紡ぐ「時空を超えた旅」がテーマとなりました。
投影される東京駅は横120m、高さ30m。高輝度プロジェクターを実に46台用い、駅を10のパートに分割して映像が制作されました。各パートは3~4台のプロジェクターの映像を重ね合わせることによって、十分な光量を確保したと言います。これらの投影機のセッティングだけでも1日半以上を要する作業になったそうです。
実際の制作においては1/300モデルを作成し当たったそうです。森内氏は「プロジェクションマッピングは空間的に楽しむものであり、肉眼で確認しながら制作するのは非常に大切」だと語りました。肉眼で見ることによって、モニター上のシミュレーションでは気づけなかった問題点や工夫の余地が見えてくるそうです。
映像を制作するに当たっては、色も難しい問題となります。スクリーンとなる東京駅は赤と白のレンガブロックで構成されています。白の部分に投影するのは問題ありません。しかし赤の部分に投影すると、色によっては適切な色に映し出すことができません。映しだした映像がどの部分に照射されるのかも考慮に入れながら調整が必要です。
こうした完成した作品は昨年9月22日と23日の2日間に上映が行われました。余りにも注目度が高く、予想を上回る人出となってしまったことから初日は途中で中止になってしまうというハプニングもありましたが、合計10万人を超える来場者が集結。森内氏は「長年映像制作に携わってきましたが、目の前でお客さんに見て、感動してもらうといような、本当に嬉しい現場になりました」と振り返っていました。
森内氏らは「TOKYO STATION VISION」以外にも様々なプロジェクションマッピングを手がけてきました。
東京スカイツリーのオープンに合わせて、隣接するソラマチのビルを使った「東京スカイツリープロジェクションマッピング」では、前面ガラス張りのビルをスクリーンにするため、全テナントの窓のブラインドを降ろして貰って実現に漕ぎ着けたそうです。成蹊学園の100週年に合わせた「SEIKEI PROJECTION MAPPING」では学校の歴史を紐解く映像で、集まった関係者の絆を深める事を目指したそうです。テレビ放送60週年を記念してNHKで実施した「どーもくんセレブレーション」は壁面だけでなく、どーもくんの像もスクリーンとして活用しました。
話題となったダイオウイカでもプロジェクションマッピングが行われました。東京ミッドタウンにて開催された「深海4Dスクエア」ではダイオウイカが吊るされ、そこに映像が投影され光るダイオウイカを再現しました。この映像はプリレンダリングではなく、ダイオウイカが生息する小笠原諸島海域のアメダスデータ(父島の観測点)を10分毎に取得して、パラメーターを構築して映像に反映するという手法が取られました。二度と同じ映像パターンは生成されないという、「ある種メディアアート的なことにもチャレンジした」とのこと。
震災復興に関連して、スケートNHK杯で関連プログラムとして実施された「ありがとうスケーティング」では、ジュニアスケーターが滑走するのに合わせてスケートリンクに映像を投影。スケーターが持つ花を目印にして映像を流したそうです。また同じく震災復興の一環として会津若松市の鶴ケ城で行われた「はるか」はお城の複雑な形状に見事な映像を投射。歴史が美しく描かれるその様子は感動的ですらありました。
講演の締めくくりに森内氏はプロジェクションマッピングの幾つかの効果を説明しました。
まずはプロジェクションマッピング自体が非常にユニークな体験であるということです。体験するには現地に行くしか無く、大勢の人と一緒に味わうものです。まだ珍しいため、メディアがこぞって取り上げてくれます。観光地などでは地域に注目を集め、観光客を誘致する効果がありそうです。夜にしか実施できないため、宿泊などで波及効果も期待できそうです。
プロジェクションマッピングは映像作品の一種といえると思いますが、空間演出や立体造形、音楽演出など要素は多岐に渡り、クリエイティブ産業に裾野が広いものといえます。様々な知見をここに投入する余地があります。プロジェクションマッピングを中心にしてクリエイティブ産業が発展していくかもしれません。
これは内容にも依存する部分があると思いますが、コミュニティの絆を強くするものではないかと森内氏は期待を示しました。例えば地域で、様々な世代が感動を共有し、地域に対するコミュニケーションを育むような。そうしたきっかけとなるのではないかということです。
プロジェクションマッピングはまだ進化を遂げている段階です。森内氏によれば、4Kや8Kといった更なる解像度を活用したものや、ビッグデータの取り込みなど新しい試みを進めているそうです。そしてCEDECのような場に立てたことに感謝しながら「クリエイティブの現場では、ジャンルの別け隔てなく、技術や意見を交わし高め合うことが非常に大事ではないかと考えます。皆さんとも一緒に仕事をしていきたいと思っています」と語り、講演を終えました。
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