「サウンド大喜利」は、ゲーム会社のサウンドクリエイターがその場で提示されるお題に対してサウンドエフェクトを制作する、ライブ型のイベント。2時間超の大型ステージですが、クリエイターが実際に使用している機材やソフト、アプローチの仕方などサウンド制作の裏側をまるっと見られる貴重な場です。司会を務めたのは、DETUNEの佐野信義氏とセガの日本一歌のうまいサラリーマンこと光吉猛修氏で、笑いあり裏話ありの内容で、会場を盛り上げました。
出演者は、バンダイナムコスタジオの矢野義人氏、セガの瀬津丸勝氏、ノイジークロークの蛭子一郎氏、タイトーの土屋昇平氏、カプコンの北川保昌氏、イニスの屋敷貴道氏の6名でした。各人愛用の機材を用意…と思いきや、蛭子氏のノートPCは今日のために引っ張り出してきたというものであったり、瀬津丸氏は所有Macが新しすぎたためにLogic Proが入らず、もう1台用意したPCでは接続に問題が発生したり、土屋氏はMacでCubaseを使ったことがなかったりと、出だしから問題が連発。早速笑いを誘いつつ、第1問がスタートしました。
■「1プレイ100万円のクレジット音」
第1問は「クレジット音」で、制限時間は15分。しかしこちらは追加要素があり、「1プレイ100万円のクレジット音」ということになりました。
矢野氏のイメージは、「クレジットを入れた際に100万円を機械が認識し、プレイヤーを喜ばせるようなSEを追加した」ということで、「キュイーン」と起動音に似たSFチックな音の最後に「ありがたや~」という低いボイス。これはナムコのアーケードゲーム『源平討魔伝』のオマージュだそうで、矢野氏がその場でiPhoneに録音して加工したものでした。
瀬津丸氏は「(100万円という大金なので)失敗したらお前の人生終わるぞ的なもの」を目指したということで、豪快な爆発音と悲鳴のようなものが響く近未来的サウンド。「時間が全然足りませんでした!」と悔しげなコメントも出ました。
蛭子氏は、「100万円は入れるのも大変なので、札束を読み取るマシーン」をイメージし、「ぴこんぴこん」「きゅいーん」という機械的な音の後、クレジットが入ったことを示す「ばーん」という音を合わせたSEに。
土屋氏は、「良い筐体の音」「(大金を投入することの)哲学的な思い」を表現。ベースが利いていて身体が振動するようないい椅子のサウンドをイメージしたという「しゅごぉお」というサウンドになりました。
北川氏は「(大金すぎて)機械が判別できない部分を表現」しました。iPod touchで採った「ぴろりぴろり」という機械音に、100万円を入れてしまった後悔を表現する「うぉーん」という叫びのような音を組み合わせ、エラーを彷彿とさせるサウンドを作り出しました。
屋敷氏のコンセプトは、「100万円だけどなんかかわいい音」。昔ながらのタイトルロゴ画面で流れるようなシンプルなサウンドの後、「ぴこーん」とアクセントが入り、佐野氏からも「かわいい」のコメントが飛び出しました。
第1問目では、来場者から矢野氏に3票が。しかし佐野氏による「リッチマン賞」は「100万円を感じさせないところがいい」という理由で屋敷氏に決定しました。
■「回復魔法LV32とLV99」
第2問は「回復魔法LV99」で、制限時間は20分。こちらも開始数分後に追加情報が入り、「仕様追加でLV32も作れ」という指令が加わりました。
矢野氏は、まずノイズでボリュームカーブを描いてから、光の音やエフェクトを加える形を取りました。仕上げには鍵盤でエフェクトやピッチシフトなどをアサインできるFingerというシンセを使用。LV32でもLV99でも入った上昇系の「ぽぽぽぽ」音は、「ありがたや~」同様、iPhoneを使っての録音でした。
瀬津丸氏は、自身がMacソフト「Max」で制作したというピッチEG専用のツールを使っていました。LV99から作ったという瀬津丸氏は、普段でも派手な方に先に着手して地味な方を後に、というアプローチをとっているそうです。LV32の最後に入った「ぽんっ」という音が笑いを生みましたが、「ぽんっ」は実作業でもお気に入りのサウンドだそうで、30を優に超えようかという膨大な数のライブラリも披露されました。LV99の最後には「セーガー」の音が響き、そこでもまた爆笑が起こりました。
蛭子氏は、オーディオを直接エディットするような形で、ひとつひとつ波形から作っていくタイプ。LV32は「時間が足りなかった」そうで、シンプルなピロリ音のオーソドックス系に。対するLV99は「ドラゴンに回復してもらうイメージ」で、LV32とは違い、きらきらしくも豪快なSEでした。
波形ベースにRETROLOGUEを使用した土屋氏は、「アタックガンのような銃で撃たれて、下からぷわーっと回復するイメージ」で、LV32では「ずぎゃーん」と発砲音のようなものが、LV99ではやや派手なジェット音が鳴りました。「クレジット音」でも入っていた「ぼわーん」という音について、「チャクラが開きそうな音」と説明。「チャクラ」発言は、佐野氏のツボにもはまり、後半まで引っ張られたネタです。
北川氏は、AudiobaseとAlchemyを使用。「回復=気持ちがいい、気持ちがいい=セブンスコード」という発想から、LV32はセブンスコードで制作され、LV99は「やれるだけやる」というコンセプトで2種類違う方向性から攻めました。特にお気に入りのコードはEメジャーセブンスということです。両方とも音階が上昇するタイプのSEで、少し変わった切り口の、大喜利ならではの作品となりました。
屋敷氏は、OMINISPHEREを使用。音色の種類が豊富ですがやや重いのが難点だそうです。LV32は「ふつうの癒し」、対してLV99は「完治・空が割れて神々しさがある」というイメージで、「しゃらーん」「きらきらきらー」と光が降り注ぐようなSEでした。
この回では、来場者が選ぶ「ベストヒーリング賞」が「本当に癒された」という理由で蛭子さんに決定。この後休憩をはさみ、最終問題へ突入です。
■「宇宙怪獣セデックの断末魔」
最後の第3問は、「宇宙怪獣セデックの断末魔」で制限時間は20分。「セデックは倒しちゃだめじゃないか」という突っ込みを挟みつつも制作がスタートし、数分後に「尺は15秒。簡単には倒れません」というオーダーが追加されました。
矢野氏は、ここでもボリュームカーブを先に作り、ホワイトノイズや断末魔素材などを追加した形。「断末魔にサウンド部の先輩の素材を使う」という意味でメモに名前があったりと機械以外の制作風景もちらりと見えました。
15秒という長尺へのアプローチとして、矢野氏はストーリーを考えました。未来を研究していた怪獣「セデック」がミサイルで攻撃され、もがきながら歩いていき、「セデーック…!」と言い残して倒れる・という流れで、「自分の名前を言い残して倒れる怪獣はどうなんだ」という指摘がありつつも大喜利らしい手の込んだSEに仕上がりました。
瀬津丸氏は、休憩中に採ってきたというガヤの音で、CEDECの活気あふれる感じをサウンドに盛り込んだ、とのこと。ここにも入ってきた「回復魔法」の「ぽんっ!」は、曰く「ゴミ」ということで本当は入れる気がなかったそうですが、断末魔の騒音が長くフェードした後の絶妙なタイミングが笑いを誘っていました。
蛭子氏は、「とにかく巨大なイメージ・身体が膨張していって破裂する」というコンセプトで制作し、聴きどころも、出だしの「シュイーン…」という膨張を表現した上昇部分であると語りました。土屋氏のSEはまたしても「チャクラ系」の音が登場。土屋氏のストーリーは、やられた怪獣「セデック」がチャックを開いて、よだれを垂らしながら歩いた後にチャクラが開き、倒れる前にチャックを閉める・というどこか韻を踏んだ構成でした。怪獣「セデック」の中には色々とまずいものが詰まっているため、最後は隠したいという理由でチャックの開閉があるそうです。途中のよだれが垂れる音や最後のくっきりとしたジッパーの音など、わかりやすくストーリーをなぞった展開となっていました。
北川氏は、ここで3DSを使用。自身の担当作品でもあるゲーム『エクストルーパーズ』のオーディオ再生モードに入っているフィルタリングの機能を使用しました。イメージとしては、CEDECのまじめな荘厳さと奥ゆかしさを表現しつつ、散りゆく断末魔と締めの断末魔の2種類を盛り込んだ形。機械がショートするような電子的な音の後の呻き声「セデーック…」は、なんと矢野氏のかぶってしまうという偶然でした。
屋敷氏は、機材にPSPを使用し、EQ(イコライザ)を細かくいじる様子も。EQはローカット(下から削っていく)のが基本ということです。「フィラー・オブ・セデック」と称して映画やゲームのカットシーンをイメージし、異形のクリーチャーを彷彿とさせる鳴き声が響きました。最後の一鳴きは「まだ死んでいないのでは…」という状況をイメージしたもので、一工夫が光ります。
この回の「演技派フィニッシュ賞」は、来場者の声により屋敷さんに決定しました。最終審査の方法はデシベルを測るSPLメーターを採用し、拍手の音で優勝を決めることに。結果は……
矢野氏76デシベル
瀬津丸氏75デシベル
蛭子氏77デシベル
土屋氏79デシベル
北川氏77デシベル
屋敷氏84デシベル
となり、「リッチマン賞」と「演技派フィニッシュ賞」に輝いたイニス・屋敷氏が見事総合優勝もゲットしました。出演者からは「緊張しつつも楽しかった・勉強になった」というコメントがあり、来場者はもちろん出演者にとっても実りの多いステージとなったようです。
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