大澤:新しいことを色々やろうかなと思っていたんですが、ことごとく先にやられてしまいました(笑)。基本的には、先ほども話したとおり原点回帰としてロケテストに集中することが一番重要です。そのため、テストをしやすいような環境を整備することに力を入れています。というのも、実際にテストをするとなっても、どうやってテストをしたら良いか分からないという参加者も多いのではないでしょうか。そこで業務用のロケテストでやっている調査やコンシューマの定性調査などを参考に、どうやってアンケートを取ったり、インタビューを取ったりするのかという基本的な事項を主催者側から提示する予定です。現在、アンケートシートを作っており、これは各団体に自由に利用していただこうと思っています。
小野:法人も個人も参加できるということですが、意識の差などはあるのでしょうか?
大澤:以前、掲載された座談会記事「3回目を迎える東京ロケテゲームショウ!ロケテの聖地に同人・インディーゲームが一堂に会する 主催者と出展者が語るイベントの意義と未来」で分かったことですが、見方はかなり異なっています。法人から見た場合、たった6000円で数百人のテストができるならば、これは安いよねという意見が印象的でした。他方、個人の方にとっては6000円という金額は高く感じられます。そのため、金額に見合った価値を見出してもらう必要があります。
小野:では、江崎さんに今年初めての開催になるデジゲー博にかける意気込みなどを聞かせてください。
江崎:おかげさまでサークル参加者数が盛況ということで、結果として主催者側の企画を行うスペースがなくなってしまいました。とにかく今回が初めてなのでイベント自体を成功させるしかないと思っています。イベントの準備は万全ですが、先の展開は走りながら考えている段階ですね。
小野:さきほど現在の同人ゲームが概観できるという話を聞きましたが、どんなジャンルのゲームが多いのですか?
江崎:多いのは、アクションやシューティングです。これだけで半分くらいを占めています。完成品を頒布するサークルがどれほどいるかわからないですが、こういうイベントは初めてなので、サークルの方には体験版や過去作品なども積極的に頒布してもらおうと思っています。
小野:アクション、シューティングの次はやっぱりノベルゲームが多いのですか?
江崎:ノベルゲームは実は多くないです。宣伝がリーチしきれなかったのか、サークル数としては10サークルほどです。RPGの方が多いですね。
小野:会場の規模はどれくらいになりますか?
江崎:サークル数は先ほど言った通り、116団体が集まりました。来場者数は500人くらいを予想しています。正直に言うと、たくさん来て欲しい反面、あまりに多くの人がくると会場がパンクするので難しいです。
七邊:同人ゲームを頒布するイベントというと、以前はパソケットというイベントが、1988年頃から毎月開催され、X68000やPC-9801 といったWindows PC以前のPC向けのゲームが出展されていました。しかし、プラットフォームがWindows機に変わった際に、MS-DOS向けの制作ノウハウが利用できなくなった自主制作者の方たちがPCゲーム制作から離れ、パソケットに訪れる制作者とユーザーが減り、イベント自体が開かれなくなりました。1990年代半ばは、日本のゲーム自主制作文化の停滞期であると言われています。
小野:X68000などで優秀な同人ゲームを作っていた人の中には、プロになられた方もいましたね。
七邊:そうですね。ちょうどSCEさんが1995年から1999年にかけて「ゲームやろうぜ!」という商業ゲーム制作支援プロジェクトを行っていましたので、どうせ新しいプラットフォームに挑戦するなら、Windows機ではなく、PlayStation向けのゲーム制作にチャレンジしようと考え、商業デビューされた方も大勢います。また1990年代前半にパソコン通信でフリーゲームを配信されていたBio_100%という制作集団の方々が、Windows機向けライブラリのDirectXのエヴァンジェリストになられたり、ドワンゴに所属されて「ニコニコ動画」の制作に携わられています。当時の自主制作文化を担った方々が、現在の産業を支えているということができます。その一方で、パソケット終了後、自主制作ゲームを中心に展示・頒布するイベントが開催されることは、残念ながらほとんどなくなってしまいました。音楽では「M3」、ボードゲームでは「ゲームマーケット」といったオンリーイベントが開催されていますが、デジタルゲームに関しては同様のイベントがなかったのです。しかし、「デジゲー博」さんがついに、パソケットに相当するイベントを現代に復活させた、ということになります。
■ゲームマーケットをモデルとするニコニコ自作ゲームフェス
小野:では伊豫田さんに次回のニコニコ自作ゲームフェスのことを伺いましょう。
伊豫田:第二回目は238作品ほど来ました。前回は400作品程度あったので減少したものの、全体の質は上がっている印象です。今後、お手本にしていきたいのは、さきほど出たゲームマーケットです。ボードゲームといったアナログゲームは自作のデジタルゲームに比べても、なおさら遊ばれにくいと思います。しかしながら、アナログゲームはコミュニティを丹念に育てていった結果、現在、自主制作のアナログゲームを遊ぶ人たちがビッグサイトの西館を埋めるほどにまで成長しています。我々もそういった自作ゲームで遊ぶコミュニティを作ることを目指したいと思っています。というのは、昔はフリーゲームを遊ぶコミュニティは、2ちゃんねるのフリーゲームスレッドを中心に存在していました。ところが、それらがだんだんと下火になって、現在、フリーゲームで遊ぶ人たちは少なくなっています。そこを育てて行きたいなと思っています。
大前:僕も実はゲームマーケットには何度か参加したことがあります。フロム・ソフトウェア時代に笹塚ゲームクラブという社内のボードゲーム・サークルがあり、そこで自作したボードゲームを何個か出展していました。サークルとしては販売までこぎつけた作品もあります。ゲームマーケットの良いところは、販売だけではなく、試遊するスペースがあって、参加者が自由に遊べるところです。ユーザーに遊んでもらうことで、フィードバックが得られるし、ユーザーも遊ぶモチベーションで会場に来てもらえる。買うモチベーションだけではなく、遊ぶというモチベーションも含めて来場するのが、通常の即売会と異なっているところだと思います。同人誌などは、その場で読めるので、読んで購入するかどうかを決められますが、デジタルゲームは即売会では判断が難しい。同人ゲームの開発者からも、その場で遊べるようにしたいという声は訊いたことがあります。
大澤:即売会という体裁を取ると、狭いブースの中で遊んでもらうのは難しい。だからこそロケテショウでは、販売をせずにプレイすることにフォーカスしています。
江崎:スペースに余裕があれば、自由に遊べるスペースをもうけたいんですが、今回はサークル参加が増えたのでできなくなってしまいました。今後、試遊スペースは作ってみたいです。
■ミドルウェアの普及で広がるゲーム開発