「βテストは単なるバグ取りではありません」Pearsall氏は話します。βテストとは言っても、1つの市場で、リアルなユーザーを対象とした実際のゲームサービスに近いものです。ゲームバランスは適切か、どのようなイベントが受け入れられるのか、どのように機能を投入していくのが良いのか、といった点をテストし、改善を行っていくのです。「ソーシャルゲームはリリース後の改善が命」と言われた事もありますが、市場が成熟した今、中途半端なゲームをリリースのは命取りです。βテストはその改善を、比較的重要でなく、かつターゲットとする市場に近い市場で行っていくというものです。
どの市場で行うかは、マーケットサイズがそう大きくなく(収益に対するインパクトが小さい)、ターゲット市場との親和性が高い市場が良いとPearsall氏は述べました。米国市場を最重要市場と位置づけるのであればカナダやオーストラリアが選択肢になるとのこと。Pearsall氏は「(βテストをさせることで)カナダ人を怒らせても気にすべきではない」とコメント。現地のユーザーにとってはいち早く新作が遊べる利点もあります。一方で、βテストといっても「そんなにステルスではなく、すぐに情報は世界中に広まってしまうので、それを考慮して展開しなくてはならない」とのこと。あの企業があの国で新作を出してる、という情報はよくニュースメディアでも見られるものです。
βテストを行うにあたっては数値で目標を定めるのが絶対的に必要です。究極的には「eCPI < LTV」(獲得コスト < ユーザーが生み出す生涯利益)という図式になるかです。そのためにはβテストといっても実際に近いマーケティング施策を打ち、どのくらいのコストでユーザーが獲得できるかを知る必要があります。広告の最適化、アプリアイコンの最適化といったことも行っていきます。「ブレイクイーブンにならないならゲームを殺すのをためらうべきではない」とPearsall氏は言い切りました。
数値は変化を追っていく必要があります。数字を追いながら必要な施策を決めていきます。初期の継続率が低いならチュートリアルの改善を行ったり、eCPIが高止まりするようなら友達招待など自然流入を上げる工夫を行います。この辺りは正式サービス時の手法と何ら変わるところがありません。
また、チート対策もβテストで実施しているとのこと。いたちごっこではありますが、どのようにして攻撃され、地下でどのような情報交換がされていくのかを知っておくのはプラスになるでしょう。
講演ではβテストとはいえかなり正式サービスに近い施策が打たれていることが紹介されました。βテストの実施は初期のコストを押し上げますが、それだけ1本1本のタイトルが重要で、失敗できない市場になっていることを示すものでしょう。その一方で、まだ後戻りできる状況でもあり、満足行く数値を出せないのであれば「お蔵入りにするのをためらってはいけない」とPearsall氏は何度も繰り返していました。