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ゲームの臨場感を高めるために重要なのが音と映像だ。特に、映像については画面が広くなるほどに迫力が増す。一般的な30~40インチのテレビから、50インチ以上の超大画面テレビへ。そうして行きつく先は、やはりプロジェクターになるだろう。
投影できる映像はゆうに100インチを超える大きさ。プレイステーション4の発売が来年2月に決定したが、『コール オブ デューティ ゴースト』のような臨場感あるゲームをプレイすれば、映画館でアクション大作を観ているような感動が日常的に楽しめるようになる。
ただ、一般的なプロジェクターで100インチの映像を投影しようとすると、焦点を合わせるためにある程度の距離が必要だ。具体的には奥行2~3メートル離れた場所にスクリーンや白壁がある必要があるのだが、一般的な日本の間取りを考えると、これは少々ハードルが高い。もちろん、ある程度の広さがあるリビングがあればいいのだが、それでもスクリーンとプロジェクターに場所を制圧されては、毎日の生活の邪魔になるだろう。
そこで、一人暮らしの1LDKでも使えるようなゲーミングプロジェクターの選択肢になるのが、短焦点での投影に対応したモデル。中でも、注目なのがBenQの「W1080ST」だ。世界で初めてフルHDに対応した短焦点プロジェクターとして、発売から半年以上経った今でも高い人気を集めている。
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2013年5月に発売されたBenQの「W1080ST」。最大2000ルーメンと輝度が高く、3D表示にも対応している。
■“短焦点”がプロジェクターを身近なものにする
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壁とあまり離れられないような場所でも映像を大画面に投影可能。テーブルに置くと映像がちょうど目の高さに投影される。
「W1080ST」の最大の特徴は、わずか1メートルの距離でも65インチオーバーのフルHD映像を投影できることだ。100インチの映像を投影する場合でも、必要な距離は約1.5メートル。これなら、普通にテレビを観ているのと変わらない距離感で、プロジェクターを設置できる。
それに加えて、コンパクトなサイズ感もプロジェクターの設置を手軽にしている。接地面積は横幅312ミリ×奥行244ミリとA4用紙を一回り大きくした程度なので、テーブルに置いても、床に置いても、まず邪魔になることはない。何より、重さが約2.85kgと女性でも片手持ちできるぐらいなので、普段はAVラックなどにしまっておいても、取り出すのが全く苦にならない。あとは、電源ケーブルをコンセントに挿し、HDMIケーブルをゲーム機に繋げるだけで準備は完了するので、ゲームする時だけプロジェクターを引っ張り出すという使い方もアリだろう。携帯用のバックが付属しているので、友達の家に持ち込んでのプレイもできそうだ。
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HDMIを2系統用意し、複数台のゲーム機を同時に接続可能。PC向けのD-Subも用意する。
なお、「W1080ST」には10Wのスピーカーが内蔵されているため、プロジェクター単体でもゲームを楽しむことができる。ただ、音量調整をした際に、音量があまり下がらない印象があった。深夜のプレイでは外部出力のステレオミニジャックにヘッドホンを挿してのプレイを推奨したい。もちろん、音質にこだわりたい場合には、ここに外部スピーカーを接続すればOK。これだけで、ゲームの迫力がワンランクアップする。
■迫力のゲーム体験を手軽に楽しむ
なお、今回はスクリーンを設置しないお手軽環境でのプレイを再現するため、会議室の壁に映像を投影してみた。そのときの様子が以下の写真だ。さすがフルHDだけあって、表示された映像には荒さがほとんど感じられない。投影がDLP方式なこともありコントラストもハッキリとしている。これなら、部屋にある程度のサイズで白い壁があれば、スクリーンなしでも十分なクォリティーでゲームが遊べるだろう。
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白壁にPS3のゲーム映像を投影した様子。壁の模様が2本縦に入ってしまったが、色むらや歪みなどは全く感じられない。
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Wii Uのゲームもこの通りバッチリ表示。コントラストが高いため、黒が引き締まって表示された。
また、今回はロックスター・ゲームズのPS3/Xbox 360用アクションアドベンチャー「L.A.ノワール」でテストプレイを行ったが、操作中に遅延などを感じることは全くなかった。視点操作時の残像感もほとんど無いので、一般的なアクションゲームであれば、問題なくプレイできるだろう。字幕やメニューの表示も潰れることなく読めるので、長時間プレイしても目が疲れるようなことはない。
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ハイコントラストかつ高解像度な表示のおかげで、字幕もはっきりと表示された。
そして、プロジェクターとなると、気になるのがファンの騒音。「W1080ST」は小型機ということもあり、稼働中はそれなりの騒音が発生したが、それでもゲームの進行を妨げるほどではなかった。これは、すべての排気口が本体正面を向いているなど、天井に据え付けるというより、プロジェクターの後ろでプレイするのに最適化されていることも大きい。
■高いコストパフォーマンスも魅力
「W1080ST」はBenQの家庭向けプロジェクターの中でもミドルレンジに位置する製品で、価格は10万円前後に抑えられている。これは一般的な国産のフルHD対応モデルと比較すると、かなり値ごろ感のある価格設定だ。
加えて、設置の手軽さなどもあり、プロジェクター初心者にもオススメしやすいモデルになっている。前部のスタンドを引き出すことで投影方向を上向きに調整でき、縦方向の台形補正ではマニュアル調整機能も用意。テーブルに置いた状態であれば、何も補正しなくても視線の高さに映像が来るので、ほとんどユーザーが設定などで手を加える必要はない。
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設定は本体上のボタンから行う。映像入力の切り替えや台形補正など、頻繁に使う機能には専用のボタンも用意。また、リモコンからも操作が可能だ。
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「ZOOM」レバーを左右に倒して表示サイズを調整し、「FOCUS」でピントを調整。この辺りは通常のプロジェクターと同じだ。
プロジェクターと聞くと、どうしても敷居が高い印象がある。しかし、「W1080ST」は優れたスペックを実装しながらも、エントリー向けと言っていい手軽さを兼ね備えていた。ゲーミングプロジェクターの1台目として購入するには、ベストな選択肢と言えるだろう。