今回取り上げる話題は、ずばりアニメ「機動戦士ガンダムUC」です。
2014年5月17日より、ファイナルエピソードとなる「機動戦士ガンダムUC episode 7 虹の彼方に」の上映・配信が開始されました。2010年にスタートしたアニメ作品が足掛け5年でいよいよクライマックスを迎えています。大のガンダムファンである筆者は、もちろん全エピソードをチェックしてきました。というか、何度同じエピソードを繰り返し見たことか・・・(笑)。
多数のゲーム作品に登場し、PlayStation Storeで先行してアニメが配信されるなど、ゲームメディアと何かと縁がある「機動戦士ガンダムUC」。今回は、そんな「機動戦士ガンダムUC」の魅力を、これから「一気見」する人に、初めて見る人に、すべてを見終わって一息ついている人に、独自の切り口も交えてしっかりお届けしたいと思います。
■ガンダム世代が見るべき「ガンダム」
ファースト・ガンダムという作品に対する我々世代の返礼という括り方もできると思います。
(角川書店「機動戦士ガンダムUC パーフェクトガイド」スペシャルインタビュー 福井晴敏より)
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「宇宙世紀」と呼ばれる世界観は、「機動戦士ガンダム」を原点とし、その後も多くの続編や派生作品に登場します。その根幹を辿るという壮大なテーマに挑む「ガンダムUC」は、単体のSFロボットアニメ作品としてももちろん高品質なものに仕上がっていますが、「ガンダム」シリーズを知っているほど2倍、3倍と面白みやストーリー深みをより感じられるような構造になっています。懐かしいモビルスーツや、設定やプラモだけが存在するアニメ未登場のモビルスーツ、そしてガンダムファンにはたまらないキャラクターたちが多数登場するのも魅力で、「ガンダム」ファンにこそ、より見てほしい作品と言えます。
【機動戦士ガンダムUC episode 1 「ユニコーンの日」- 予告編】
YouTube 動画URL:http://youtu.be/fQGqpdx4tes
■「ガンダム」に理解の深い福井晴敏氏による原作
「どうせ書くんだったら、局部をつまむものじゃかくて、全体をわしづかみにするようなものがいいんじゃないか」とポロっと言ったんです。
(角川書店「機動戦士ガンダムUC パーフェクトガイド」スペシャルインタビュー 福井晴敏より)
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アニメ版は原作小説をもとにした内容ですが、大胆にカットしたり、アレンジしたりと省略された部分も多く存在します。しかし、小説版の作者である福井氏が監修的な立場でアニメ版の制作にも参加しているため、アニメならではの魅せ方で、よりシンプルに、よりわかりやすく、よりエンタテインメント性を高めた作品となっており、小説版のファンからも概ね好評で、何より旧来のガンダムファンを熱狂させる「大人向けのガンダム」として大きな支持を集めています。
■キャラデザ・安彦良和氏、メカデザ・カトキハジメ氏という最強の布陣
お二人が参加してくれたおかげでプラモ化やアニメ化を含めた「UC」計画を軌道に乗せることができました。
(角川書店「機動戦士ガンダムUC パーフェクトガイド」スペシャルインタビュー 福井晴敏より)
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メカニックデザインはカトキハジメ氏。「機動戦士ガンダムZZ」から数多くのガンダム作品に関わっています。特に近年の「ガンプラ」には欠かせない人物となっており、「HGUC」シリーズ、「MG」シリーズの多くのデザインを手がけ、自らのブランドとも言える「ver.Ka」など、多くの立体物商品で非常に高い人気を誇っています。
福井晴敏氏はインタビューで、2人にラブコールを送り実現に至った経緯として、「宇宙世紀」の根幹を揺るがしかねない作品を(ファンを裏切らずに)作るためには、安彦良和氏によるビジュアル的な「保証」と、カトキハジメ氏よるガンプラで数々のモビルスーツをリファインしてきた「懐かしいけど新しい」デザインが、必要不可欠だったと語っています。
これまでのガンダム作品にも今我々が暮らす「西暦」とのつながりを具体的に示すキーワードは存在しました。しかし、「ガンダムUC」では、その作品性から、より踏み込んだ形のキーワードが多数存在します。ここでは、それらのキーワードから特に注目すべき2点を取り上げてみたいと思います。
■貴婦人と一角獣
貴婦人とユニコーン。中世期以前にフランスで製作されたと思われるタペストリーです。レプリカではありません。一年戦争以前に先代が苦労して手に入れました。
(アニメ「機動戦士ガンダムUC episode 1 ユニコーンの日」カーディアス・ビスト 台詞より)
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それぞれのタペストリーには意味があり、「味覚」「聴覚」「視覚」「臭覚」「触覚」と、人間の五感を表しているとされています。しかし残る1枚のテーマは謎めいており、絵の中央のテントに書かれた「我が唯一の望み」という文字以外、現在に至るまですべて推測でしか解釈されていません。この解釈ひとつが、第六感で「理解すること」であるとも言われており、これは「ガンダム」シリーズに登場する「ニュータイプ論」、すなわち、宇宙で暮らすようになり可能性の広がった人類に目覚めた能力と一致します。
「ガンダムUC」では、この「貴婦人と一角獣」を通して、改めて「ガンダム」作品における「ニュータイプ」の在り方、あるいは、主人公が乗るガンダムのモチーフがタペストリーにおける「第六感」の象徴とも言える「ユニコーン」であるなど、作品を更に深く見ることができます。しかも、このタペストリーは、フランスのクリュニー中世美術館に今現在も所蔵されています。
筆者は、タイミングが合わず「貴婦人と一角獣展」に足を運べなかったのですが、もし機会があるなら、ぜひ実物をこの目で観てみたいです。
■オードリー・バーン
私は・・・オードリー。オードリー・バーン。
(アニメ「機動戦士ガンダムUC episode 1 ユニコーンの日」オードリー・バーン 台詞より)
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アニメ版では、「episode 1」の舞台となるコロニー「インダストリアル7」の映画館で「ローマの休日」が上映されており、映画館の前を通りかかった「オードリー」がその看板にチラリと目をやるシーンが描かれいます。その後、名前を聞かれた際に、咄嗟に答えてしまったということで、作中ではその本名とともに「オードリー」という偽名も重要な役割を果たし続けます。
ちなみに小説版では、「ローマの休日」におけるオードリー・ヘプバーンの役と、「オードリー」の境遇が似ていることからそう名乗ったとされています。「ローマの休日」を観ておくと、より「オードリー」の心情が読み取れるかもしれません。
■「大人」とは何かを真剣に描く
歯車には歯車の意地がある。お前もお前の役割を果たせ。
(アニメ「機動戦士ガンダムUC episode 3 ラプラスの亡霊」ダグザ・マックール 台詞より)
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これまでの「ガンダム」作品では、「大人は社会に縛られ、口ばかりで何もできない“悪”」として描かれることが多かったと思います。「ガンダムUC」でも、そのような大人は確かに登場するものの、その中で、なぜ社会に縛られなければならないのか、それが本当に「悪」であるかを問うようなシーンもしばしば登場し、それらはまるで、不器用な父親が反抗期の息子を諭すかのように描かれます。
「大人も縛られた社会の中で一生懸命に生きている」という描写は、これまでの「ガンダム」では、あまり描かれなかった視点だと思います。これもまた、大人向けのガンダムたる所以とも言えそうです。
■ひたすらかっこいい「おっさん」を描く
人を想って流す涙は別だ。何があっても泣かないなんて奴を、俺は信用しない。
(アニメ「機動戦士ガンダムUC episode 4 重力の井戸の底で」スベロア・ジンネマン 台詞より)
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主人公の「バナージ」自身も、そんなかっこいいおっさんたちの影響を受けて成長していきます。各エピソードに登場するおっさんたちが、もうひとつの主人公であると言っても過言ではありません。近年の「ガンダム」作品の美少年たちに飽きてしまった方々は、ぜひこのおっさんの良さを感じ取って頂きたいです(笑)。
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さて今回の【そそれぽ】、あまりに内容が多くなってしまったので、前後編に分けてお届けします。前編では主に「機動戦士ガンダムUC」の作品の魅力についてお伝えしましたが、後編では関連ゲーム作品やモビルスーツなどに焦点を更に当てて掘り下げていこうと思います。
後編へ続く!
(C)創通・サンライズ
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津久井箇人 (つくいかずひと) a.k.a. そそそ
愛内里菜らに楽曲提供をし、VOCALOID音楽のクリエイターとしても有名な作・編曲家。ゲームを紹介するブログ記事が評価され、2011年からINSIDEでライター活動を開始。レトロゲームから最新ゲーム、戦略SLGから格ゲーまで、幅広いジャンルのゲームをプレイする。
Twitter:@sososo291
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