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グラフィックデザイナー・ライターの高橋ヨシキ氏 |
それに対して今の時代は、コンテンツの量も多く、選択肢も多様です。結局、何を摂取したらいいのかわからなくなり、人々はランキングやレビューサイトといった手段に逃げているのではないかと、高橋氏は指摘しています。ランキングやレビューサイトといった中からは人々は安心して楽しめるコンテツを選択する傾向があるため、個性的な作品との出会いが少なくなるのではないかと高橋氏は主張。名画座の三本立てや洋画劇場といった暴力的に与えられるコンテンツの良さもあったのではないかと振り返っています。
ここで須田氏の新作『LET IT DIE』のトレーラーが公開されました。このトレーラーはE3のソニーのカンファレンスで公開されたものですが、須田氏が言うには「ゴア表現を突き詰めた」そうです。この『LET IT DIE』映像は千葉氏も関わった『地獄甲子園』などで知られる映画監督の山口雄大氏が制作しています。
山口雄大氏は現在、海外で活躍しており、彼自身もコアなゲーマーであるそうです。千葉氏によると、彼は登竜門になる映画祭でも過激な表現の映画を撮影していましたが、なかなか認められることがなかったそうです。海外にはホラーやスプラッターといったジャンルから成功したピーター・ジャクソンやサム・ライミといった監督がいるのにもかかわらず、日本国内におけるそれらのジャンルの扱いは非常に低く、結果として多様なクリエイターがなかなか育たないそうです。
さらにゲーム業界の新人育成に関して黒川氏に問われたところ、須田氏自身は日本のゲーム業界をリードしているつもりはないと述べています。たまたま世界のマーケットに自分の作品を届いたことを強調して、自身のルーツはデビュー作であるファイアープロレスリングシリーズにあり、今でもプロレスラーとして戦っていると話しました。
最後に千葉氏の新作である園子温監督『TOKYO TRIBE』の海外向けの予告映像が初公開されました。普段は映画祭などでバイヤーにしか公開されないバージョンで、海外の映画マーケットでは制作会社がいかに作品を高く売ろうかしのぎを削っているそうです。しかし残念なことに日本映画の海外向け配給権は、一本50万円クラスという低価格で買われているそうです。そのような中、千葉氏は海外向けのパッケージやプロモーションを企画、ポスターは高橋氏が担当しています。
映画とゲームという二つのエンターテイメント業界を横断する今回の黒川塾でしたが、ポイントとなったのはグローバルな感性という問題のようでした。ゴア表現やスプラッター表現といったものは映画でもゲームでも世界的にウケる表現ですが、日本ではやましいものとして自粛の対象となります。それらの表現が受け入れられている理由には、育ってきた文化の差といったものはありますが、それ以上に映画やゲームといったエンターテイメントが大人の文化として根付いているという側面が決定的なもののように感じました。
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