ファミコンとは思えないほどのきめ細かいグラフィック、ハードスペックの限界すら計算し尽した演出、動きのある画面作り、そして綿密に張り巡らせた伏線が盛り上がりに合わせて収束されていく醍醐味は名作と呼ばれるに恥じない完成度と充実度を併せ持っており、今もなお語り継がれる根強い支持を得ています。
Wiiのバーチャルコンソール化を果たしたため一時期よりは落ち着いたものの、実機のソフトは今もなお高値を継続。また昨年は長らく絶版状態だったファンブックのリマスター版が登場、そしてこの春には初のサウンドトラックが発売されるなど、生誕から23周年を迎えたこの1年は特に刺激的な提案が続きました。
そんな1年を締めくくるに相応しいスペシャルイベント「グローリーナイト」が、今月行われました。これはサウンドトラックの発売記念として、シティコネクションと東京カルチャーカルチャーにより行われたゲーム実況&トークライブです。『メタルスレイダーグローリー』の生みの親となる☆よしみるさんを招き、制作当時の裏話などを伺いながら、本作の実況プレイを平行し参加者と共にエンディングを楽しもうというファン心をくすぐるイベントでしたが、伝説的なレアソフトと呼ばれる『メタルスレイダーグローリー』のイベントだけに、予想を上回る驚愕の展開を見せました。その熱気や興奮、そして見逃せない新情報などをこちらで紹介させていただきます。
本イベントの案内となる看板には、☆よしみるさん直筆のイラストが登場。参加者の方々の多くが写真に収める姿が印象的でしたが、イベント開始前の見どころはそれだけではありません。本作の物語を語る上で欠かせず、また高い人気も誇るキャティがマックベリーズの制服に身を包んだフィギュアも展示。この粋な計らいに喜んだキャティファンも多いはず。
しかも壇上には「Cattyさんファンクラブ 姫路第830支部一同」より贈られた盛大な薔薇が飾られていました。上段はピンクや赤、紫と明るい色でまとめられており、下段には鮮やかな青い薔薇がふんだんにあしらわれていました。この見事な薔薇の山を前に、☆よしみるさんも驚きと喜びを露わとしていました。
ちなみに会場となった東京カルチャーカルチャーでは、本作にちなんだ数多くのユニークなメニューが登場し、こちらもファンの方々を大いに楽しませてくれました。「シルキーヌさんとペントハウスで…」などのメニュー名には、想像力を刺激せざるを得ません。
☆よしみるさんのトークと実況プレイがメインとなるイベントですが、時間的な制約により、このイベントでのプレイは後半からのスタートとなります。前半部分の実況に関しては、「Rom Cassette TV」にて事前に行われており、その時のプレイを振り返るダイジェスト映像がイベント会場に流れます。
物語の始まりから重要なシーンの提示まで、隙なく構成された約5分ほどの映像に、会場のファンは早くも釘付け。濃密なストーリーを分かりやすくまとめつつも、本作ファンにはお馴じみの「あずさのジャンプシーン」は2回繰り返すというこだわりぶりも見せてくれました。
まずは映像で、イベント参加者とニコニコ生放送の視聴者を掴んだ「グローリーナイト」。その進行を担当したセクシー有田さんは、安定感のある語りとキラリと光る個性で定評のある人物です。そんな有田さんと絶妙の掛け合いを繰り広げるマーブル先生は、強めの言動と滲み出る人柄の良さを漂わせながら、エンディングを目指す実況プレイも兼任。そして、ファンが聞きたい本作の秘話を鋭い質問で探り出す風のイオナさんが、それぞれの立場からイベントを盛り上げていきます。
そして満を持して☆よしみるさんが登場すると、熱気と拍手が更に倍増。その流れを受けて、姿を自在に変化できる異星生物を看破する場面から実況プレイが始まりました。
私設軍の切り札「T・ストーク」に集った重要人物に潜り込んだ異星生物をあぶり出す役目をマーブル先生が行いつつ、「(当時の制作環境は)14インチほどのディスプレイでした」「HAL研に用意されたツールがすごくよかった」など、開発秘話が早速飛び出します。
聞き逃せないこぼれ話が飛び交う中、実況プレイでは異星生物の正体が判明し、敵の襲撃、そして最終決戦へと移ります。なお、正体を暴く際に鍵となるのは「匂い」ですが、☆よしみるさんが本作のシナリオを書き始めた当初は、音楽が鍵になる予定でした。しかし、こちらも名作として知られている『ジーザス』が登場。プレイされた方はご存じかと思いますが、『ジーザス』では音がキーワードとなっているため、「匂い」へと変更したとの背景も明かされました。
またプログラマーさんの名前と、主人公の名前が同じことについて風のイオナさんが訊ねると、「そのまんまです(笑)」と☆よしみるさんが笑って答える場面も。☆よしみるさん曰く、その時々によるものの、キャラクターの名前を付ける際に周りから取る場合もあるとのこと。名前を使われた方は、同名の主人公がこんなに長く愛されるとは、当時想像もしなかったことでしょう。
そして、忠たちが住んでいる地区は日本の「伊東」との衝撃的な事実も判明。宇宙へ行くためのシャトルに乗るエアポートは相模湾にあるそうです。この他にも、作中の重要人物「ジフ」のデザインに関して「江頭さんが入ってるかも」との☆よしみるさんの発言も。言われてから見ると確かに面影も感じ、20年以上経過しながらも新鮮なこぼれ話が次々に飛び出します。
本作はADVゲームですが、最終決戦はSTG要素と判断力が問われるゲーム性の高いものとなっています。もちろん敵にやられるとゲームオーバーになるので、実況担当のマーブル先生の重圧は相当なもの。そのプレッシャーのせいか、選択肢の「ジャミング」を「ジャンプ」と読み間違え、頭に「?」を浮かべる場面もありました。
そんなナチュラルさで場を和ませながらも戦場をくぐり抜け、いよいよ敵の中枢へと近づきます。ゲームオーバーの危機を回避した安堵感からか、今度は最終兵器解除の場面で正しいパスコードとなる妹の名前ではなく、「AZURA」と入力。「アズラって誰だ!?」と、新たに生み出された謎のキャラに会場も沸き上がります。
ですが、更なる驚きはこの後に控えていました。最終兵器のロックも解除し、敵中枢に対し最後の一撃を加えるべくボタンを押し──しかし、まさかの失敗! 敵の主砲を止められず、忠とグローリーは撃沈。当然、ゲームオーバーとなります。
会場を衝撃が包み込みますが、最も驚いていたのは間違いなくマーブル先生。「ジャンプ」と読み間違えた時とは比較にならないほどの「???」を浮かべ、コントローラーを握ったまま自失呆然。
先生の名誉のために一言添えておきますが、ロケハンでは無事クリアを果たしています。当日の緊張と、放送用機材などのセッティングを行ったためにモニタとのタイムラグがあり、最後のボタンを押すタイミングがズレたものと思われます。
ですが、失敗は失敗。そして、イベント及びニコ生放送時間の終了時刻は、刻一刻と近づきます。「みんなでエンディングを迎えよう」という主旨だけにこのまま終わるわけには行きませんが、残り時間を踏まえると危険な展開になってきたのも事実です。
もう一台用意されていた実機へ切り替えるも、場面は戦闘シーンの最初から。多少の延長が出来たとしても、終電などの時間は変えられません。今から戦闘をやり直して間に合うのか。緊張感に包まれた再チャレンジに挑む、そんなマーブル先生に救いの手を差し伸べたのは、生みの親である☆よしみるさんでした。
戦闘シーンの合間に、突然☆よしみるさんがコントローラーを握りました。そして、「ポーズをかけて十字キーを操作すると、スピードを調整できる」という一部の方には知られているコマンドを駆使することで、なんと戦闘シーンの合間にある会話を省略し、次のエンカウントまで一気に飛ばせるという裏技を披露してくれました。しかもこの裏技は、「もしかしたら、初公開かもしれませんね」との発言もあり、この状況だからこそ聞くことができた新情報かもしれません。
敵は飛ばせないものの、裏技により移動時間が短縮。この光景を見ていたニコ生の視聴者からは、「グローリーは短距離ワープできる」「こんな機能が隠されていたのか」「これがジャンプだったのだ!」とのコメントが届きます。あの「ジャンプ」発言が、このような形で繋がるとは。さすがマーブル先生です。
こうして迎えた2度目の最終局面では、最後のボタンを☆よしみるさんと一緒に押し、無事最終兵器が発動。会場に設置された大型モニタには、忠たちによる感動的なエンディングが流れ、また会場にも歓喜と安堵の混じった拍手が鳴り響きます。最終的に30分の延長となりましたが、放送でも無事エンディングが流れ、また終電にも間に合う見事なフィナーレをマーブル先生が飾ってくれました。
興奮の連続と奇跡の瞬間を共有したイベントとなりましたが、『メタルスレイダーグローリー』の奇跡はまだ終わりを迎えません。このイベントにて☆よしみるさんから、刺激的な提案が新たに飛び出しました。
『メタルスレイダーグローリー』の続編に当たる物語を漫画で描くためのクラウド・ファンディングを、3~4ヶ月後くらいに開始すると発表。支援者が集まれば、途中で止まってしまった単行本「エイミアの面影」の続きや、ヴィヴァーチェがまだ生きてる時代のキャティの話などの前日譚などが形となる可能性が浮上しました。
また漫画制作が実施され好評を博したならば、ゆくゆくはゲーム化、アプリ化なども考えているとの構想も明かしてくれます。そのためにはまず、新しい漫画を描くためのクラウド・ファンディングが全てのスタートであり、「皆さんに支援を頂いて描いていきたい」と☆よしみるさんが重ねてお願いすると、会場からは本日最も大きな拍手が送られました。
23年前に生まれたゲームが、この長い時を経てなお、新たな展開を迎えようとしています。それは、まず☆よしみるさんが魅力的なゲームを作ったこと、それに伴う開発スタッフの尽力、そしてユーザーの熱心な支持など、数々の要因があって辿り着いた現実であり、同時に奇跡的な展開とも言えるでしょう。
開発秘話に実況、そして新展開と、『メタルスレイダーグローリー』の一夜は刺激溢れる展開で幕を閉じました。しかしこれからの『メタルスレイダーグローリー』は、まだ始まったばかりです。24年目を迎え、どのような躍進を見せてくれるのか。新たな奇跡に、期待しましょう。
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(C)1991 HAL LABORATORY INC.
(C)1991 ☆YOSHIMIRU.
(C)1991 LIVE PLANNING.