◆CGアニメ、今後の行方は?
――フォトリアルは、文字どおりリアルなものを目指した映像ですが、今後はより実写に近づくんでしょうか、それとも別のものになっていくのでしょうか。
荒牧:ズルい言い方ですけど、それは作品によって変えていくべきだと思っているんです。『アップルシード アルファ』はテーマ的にもこういうルックに合うものにしようとやりました。カメラワークも自然にしたかったし、そのなかで最後に異質なものを出してショッキングにしたいなって思っていた。
ルックも含めて作品によってコントロールできるというのがフルCGのおもしろいところ。「全体がこっちに行かないといけない」というのは全然ないんです。
――逆にセルルックを突き詰めていった時に、これがいまの作画アニメにどんどん近づいていくのか、あるいは逆にそれ自体が自立して行き、別個のものになるという考えはありますか?
水島:別個のものになるのが理想だと思います。ただ今の3Dのセルルックの最終目標は2Dと同じことができることにあります。あまりそこだけを狙って行かないほうがいいとは思いますね。もちろん代替する作品もあった方がいいです。萌えものも、3Dでできると証明できたわけですから、キャラ崩れがないことが最優先の作品とかね。
メジャーではやれなかった表現をやれる場所が出てくればセルルックの2Dと3Dの表現に幅が生まれてくると思います。
――3DCGは昔は予算の高いものと言われていました。もし手描き2D並みのコストになったら逆に全部入れ替わってしまうという危惧はありませんか。
水島:手描き並みのコストに下げちゃダメです。手描きのアニメーターがいま豊かなわけでありません。CGの予算は昔よりは下げるべきだとは思いますが、ある程度は保つべきです。そして効率が上がった時に生まれた余裕は新しい映像表現のために使った方がいい。
そこを下げると結局はセルアニメと同じ事態になってしまうと思います。そこは予算をくんだり調達するの方々に頑張ってもらいたいですね。と、同時にセルアニメの予算も3Dアニメと同等に持ち上げる事も是非お願いしたい。
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――最後に、改めて『アップルシード アルファ』の見どころを紹介していただけますか。
荒牧:まずは最後に大きなメカが出て来るところですね。じっくり描いたのでメカ好きな方は期待していてください。後はキャラクターの表情。キャラクターは、物語の中で見ている人がどこまで自然に共感できるようになるのか、というのがチャレンジでした。先ほど水島さんから「萌えを廃した」との言葉をいただきましたが(笑)。
水島:誉め言葉ですよ(笑)。相当度胸がないとできないじゃないですか。それでもデュナンはやっぱりチャーミングに、かわいく見えたりしますから。
荒牧:『アップルシード』は今までスケールの大きな話が多かったんです。人類の未来はどうなるのか、とか。そうしたレベルではない普通の2人のバディもので楽しめる作品になっています。物語を自然に見てもらえたらいいなと思います。
――水島監督には改めてCGアニメの面白さを伺えればと思います。
水島:映像作品としてCGを使ってこれぐらいのものが出て来るようになった現在はすごく豊かでいいなと思います。同時に進化を楽しんでもらえたらと思います。
いまある3DCGアニメをそれぞれの文脈で眺めると、どこで何が起こっているのか面白く見られる。単純に作品に没入してもらうのが僕らには一番ありがたいのですが、3DCGという流れで見ることも可能です。そうした見方もお楽しみください。
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記事提供元: アニメ!アニメ!