日本で「テイルズ オブ」シリーズを知らないという方はいないでしょう。スーパーファミコンで発売された『テイルズ オブ ファンタジア』を皮切りに、50タイトル以上、累計1600万本を売り上げてきた日本を代表するRPGの一つです。台湾の会場では1/5ほどが「遊んだことがある」と挙手していました。
馬場氏は「テイルズ オブ」の特徴として、コミックやアニメ調のグラフィック、リアルタイムのバトルシステム、勧善懲悪ではなく共存を描いた物語、といったものを挙げました。後ろの2つが今回の講演のテーマです。
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「テイルズオブ」シリーズのプロデューサー、馬場英雄氏 |
■新しい体験を創造する
シリーズを続ける上で最も大事な事は新しい体験を創造していくことだと馬場氏は強調しました。「テイルズ オブ」シリーズではリアルタイムに進行するリニアモーションバトルシステム(LMBS)がゲームシステムの根幹です。アクション性が高いものの、格闘ゲームのように現実のアクションを置き換えるわけではありません。勝った時の気持ち良さは大事ですが、同時にゲームが得意でない人でも簡単に遊べるような操作性も大事です。RPGは物語が読みたくて遊ぶというユーザーも多くいるからです。
バトルシステムで最も気を使うのは、何度やっても楽しい、ということだそうです。物語を進めたいのにボスが強くて進めない、という経験はどんなゲーマーにもあるものだと思いますが、馬場氏は「楽しくなければ遊びではなく義務になってしまう」と話し、敵を見つけたら自らエンカウントしたくなるような繰り返し楽しいバトルシステムの構築に腐心していると言います。
バトルシステムはLMBSをベースにしながらも作品によってどんどん進化を遂げているそうです。『テイルズ オブ グレイセフF』ではSS-LMBS(スタイルシフト)という、キャラクターが2つのスタイルを切り替えながら戦うシステムを採用。『テイルズ オブ エクシリア』ではDR-LMBS(ダブルレイド)という二人のキャラクターの協力を主眼に置いたシステムを採用しました。毎回、改良を加えながら楽しさを追求しているわけです。
■伝えたいメッセージはなにか
「テイルズ オブ」シリーズで特徴的なのは独特のジャンル名です。最新作『テイルズ オブ ゼスティリア』であれば「情熱が世界を照らすRPG」、『テイルズ オブ エクシリア』は「揺るぎなき信念のRPG」、『テイルズ オブ シンフォニア』は「君と響きあうRPG」といった形です。これはその作品が伝えるメッセージを端的に表したものだといいます。
ゲームは小説や映画とは異なり、自分が世界に入り込み体感する物語です。操作をすることで疑似体験し、キャラクターたちの想いを共有しながら進んでいきます。「テイルズ オブ」では喜び、怒り、心の葛藤、など感情を豊かに表現しています。これは単なる物語ではなく、何らかのメッセージを届けようという試みです。「ゲームを遊んだことで、ユーザーに何かのヒントを与えられるように、テーマの設定は最も重視している部分です」
『テイルズ オブ エクシリア2』では「選択が未来を紡ぐRPG」というジャンル名で、「選択」というテーマが与えられました。「人は何気なく毎日沢山の選択をし、その結果を生きています。その選択の意味を深く考える事は多くありませんが、その一つ一つが大きな変化をもたらす可能性があります。それを考えるきっかけになって欲しいと思ったのです」。本作ではゲームプレイにも選択という要素が取り入れられ、プレイヤーの選択によって物語が変化していきました。テーマは単に物語ではなく、ゲームに深く関わってくる問題なのです。
また、シリーズを通して「正義 対 悪」という勧善懲悪ではなく、一環して「共存」というテーマが描かれています。「自分も敵も同じく正しい事を言っていて、それでも時代や背負っているものの違いで衝突しなくてはならない。どちらが正しい、正しくない、ではなく、お互いの気持ちをぶつけようというのが根底に流れるものです」(馬場氏)。デリケートで難しいテーマながら、「テイルズ オブ」では20年間、このコンセプトを突き通しています。それは人間、人類にとって共存こそが必要であるという確信があるからだそうです。
馬場氏は「ゲームを開発する際には、新しい体験を想像すること、そして物語を扱う場合にはテーマ設定の重要さを思い起こして欲しい」と語り講演を終えました。馬場氏の語り口調は柔らかですが、20年の「テイルズ オブ」シリーズを背負う重みがあり、集まったゲーム開発者に印象を与えたようでした。
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基調講演に会場は大入り満員だった |
※第一作目は『テイルズ オブ ディスティニー』ではなく『ファンタジア』でした。お詫びして訂正します。