―――小学校低学年からガジェットが好きだったんですね。カードに描かれた10kの抵抗やコイルやヒューズを見ると笑ってしまうのですが、やはり真空管以外にも想い入れがあるのですか?
JH:本当はもっとマニアックなものも入れたいんですけど、逆に真空管に縛られ過ぎている側面はあります。最近は、人工筋肉をサーボ化して動くフィギュア(回路とプログラムとメカ)を作っています。microSDが使えてスクリプトで誰でもモーションコントロール可能で、人工筋肉を同時に8本リアルタイム制御できるという基板。こういったものも、もっと入れたいんですよ。
―――最初に手掛けた電子工作(子供の頃)はなんですか?
JH:小学校向けの「電気ショックを与える装置」です。ガムみたいな圧電素子を使用したものではなく、電池を用いて交流を発生させるもの。「バァァァァ!」って喰らうやつを作って木刀に電極を付けて「いなづまのけん」みたいなものを作って振り回す! というのが最初の工作でした(笑)
―――危ない危ない! 最初に作ったものもやはり「そっちより」のものだったんですね。
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JH:「コンテンツ的ハードウェア」と私は定義しています。動く人工筋肉のロボットとか、アルミなども購入してきて、自分で作れるものは自分で作っています。ただ、やはり大きな旋盤・NCフライスがないと作れないものも多くて。最近思うのは「町工場って最高だな!」という事。自分でやっていたら「makeする事」が趣味になってしまい、本当に創りたいものができなくなってしまいます。本気で取り組みたいモノがあったら、本業でお金を稼いで町工場で作ってもらう。
そうしないと本当にいいモノはできないんじゃないかな、と。例えば、最近は「3Dプリンターを持つ事」が目的になってしまっていて、それを使って作るモノがない、という事が往々にしてある。これは本末転倒です。工具類も疲弊してくるので、歪みや動作がおかしいと、その整備に注力するようになってしまい、時間がかかってしまいます。ですから、設計・試作に抑えるべきだと、最近は思っています。
―――では、ドールのキャラ設定で苦労された点は?
JH:一弾はコミケに間に合わせるために短期間で作りましたが、第二弾は時間をかけました。だから第一弾は記憶に無いくらい大変だった事を覚えています(笑) 全てを同時にやっていたので……パッケージの箱のサイズ、デザイン、中川にはコネクションの部分を工場と折衝してもらって。カードゲームは中川が小さい頃からやっていた事だったので、アドバイスを聞いたり相談したりして造り上げました。キャラに関しては、もう本当に記憶にないくらい必死になってやっていました(笑) 絵にも時間がかかって……真空管で有名な長島さんという真空管アンプの製作記事を書いている方に真空管ヘッドフォン製作の際に多くのアドバイスをいただいていまして、大変参考になりました。
でも、真空管の性質や用途に縛られ過ぎると偏っちゃうんですよね。音響ばかりになったり、軍関係ばかり、テレビ関係ばかりになったりとか。キャラデザとしてのバリエーションが難しくもなるし、あまり有名ドコロの真空管を使ってしまっても今後のリリースがマイナーなものばかりになってしまう。非常にバランスが難しかったですね。あまりこだわらなさ過ぎるとマニアの方から「分かってない」と言われてしまうし、今度は忠実にし過ぎるとゲームとして面白くなくなってしまいます。途中からは開き直り、真空管を知らない方へのきっかけになればいいと思って、最近はキャラクター重視にしています。
それでも時々はコアなネタを仕込んでいますよ。最近の拡張で出した「高槻 姫(たかつき ひめ)」ちゃんという子がいるんですけど、某T社の真空管で、オタサーの姫というキャラ付けをしています。この子も「いつか入れるぞ」と考えていて、今回の投入となりました。姫ちゃんと姉妹的な存在の真空管である「300B」の子なんかも温存していたりするので、ここぞと言う時に追加していきます。
―――お気に入りは300Bの子だったりするんですか?
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JH:300Bの子はまだデザイン段階です。アリシアちゃん……「STC4 300A」という300Bに近い子がいまして、この子がビジュアル的にはストライク。金髪ツインテールのイギリス製の子で。……過去に「ツインテール力学」という教科書とDVDをコミケで売っていまして。これは「どの角度が一番萌えるのか」や「色依存性」を解説した、とても真剣な一冊でした。一時期「ツインテールの人」と呼ばれるほどツインテールが好きなので、アリシアのビジュアルがいいですね。
―――最初から金髪ツインテが好きだったんですか?
JH:最近は髪の色問わずのロングが好きになってきました。最初はショート、次はボブになってツインテール、で、現在に至ります。時代と共に変化してきています。
―――私はビジュアル的に結月がいいです。
JH:いいと思います(笑) ショートボブですね。私は全部愛して作っていますが。
―――影響を受けた作品などは……これ(矢追純一など)ですもんね。
JH:と言っても、矢追さんを尊敬しているという事ではなくて、彼の作品で「そういう物理があるかも知れないという情報を得た」という部分にショックを受けた感じですね。あとは「つくば万博」などがあるかも知れません。