CDMはバンクーバー市の中心部から約4kmの場所にあり、88エーカー(35万平方メートル、東京ドーム約8個分)の巨大な敷地にあります。主に企業が入居する、現代アート風の二階建ての建物と、CDMの主要施設が入居する、新設された4階建ての建物が並び、その裏手では研究者向けの入居施設などが建設中。このうちバンダイナムコスタジオバンクーバーは前者の二階に収まっていました。
わずか2名からスタートしたという同社も、現在は社員数が15名となり、さらに新規スタッフを募集中とのこと。そのミッションは、北米を皮切りに世界でヒットするモバイルゲームを、日本人とカナダ人との協業で開発することです。多文化共生主義を掲げるカナダでも、アジアとの玄関口にあたるバンクーバーは、そのために最適な場所。CEDEC2014で講演された、9ヶ月にわたるCDMとの産学連携もその一つ。日本人だけでは難しい、現地の学生ならではの斬新な発想がみられたといいます。
スタジオヘッドをつとめる中山淳雄氏は、「50対50の協業では衝突しあって、うまくいかない」と語りました。ポイントは互いの強みをいかしたモザイク型の協業をとること。具体的には「日本のゲームデザインや、フィーチャーフォン時代に蓄積された運営ドリブンのマネタイズ手法」と「カナダのビジュアルデザインや世界観」の組み合わせが重要だと言うわけです。第一弾タイトルは今秋にリリース予定とのことでした。
このバンダイナムコスタジオバンクーバーの事例のように、多くの企業と産学連携によるプロジェクトを組み、グループワークを通した人材教育を行っているのがCDMの特徴です。
本校はブリティッシュコロンビア大学をはじめとした、BC州にある4つの大学によって2007年に開校されました。約1年~1年半のカリキュラムを修了すれば、4大学共通の履修証明書と修士号が授与されます。産学連携ディレクターでCEDEC2014でも講演経験のあるデニス・シェナード氏は、「こういった形式の大学院は世界のどこにもない」と強調しました。
設立にあたっては州政府から42億円の予算がつくなど、行政からの支援も受けています。当時はPS3/Xbox 360の普及期にあたり、欧米のゲーム市場が急速に成長していったころ。デジタルメディア産業に対する支援もBC州をはじめ、カナダ全域で本格化していきました。背景には石炭などの第一次産業に依存した産業政策からの切り替えがあったといいます。
特徴の一つは厳選された少人数によるエリート教育で、開校時の学生数は21人。現在は一学年が55人で、次年度は60人、さらに70人・・・と段階的に増やしていくとのこと。授業の大半が産学連携によるプロジェクト演習で行われるため、クライアント先の企業確保と規模拡大を並行していく必要があるためです。全体の1/3がアーティスト志望、1/3がエンジニア志望、残りがその他(プロジェクトマネジメント、ビジネス開発など)となっています。
また学生の約6割が留学生で、残りの4割が北米(カナダ・アメリカ)という国際性も特徴です。出身国はデンマーク・メキシコ・コロンビア・中国・インドなどで、来年度は日本からの留学生も1人入学予定とのこと。デニス氏曰く「日本からの留学生(そしてクライアント先の企業)も大歓迎」とアピールしました。
もっとも学生のレベルは高く、アメリカならMITなど名門校の卒業生も多いとのこと。社会人学生も多く、学生の平均年齢も驚きの36歳。公立校ながら授業料も400万円とハイスペックです。運営に関する補助金は存在せず、予算はすべて学費と企業からの産学連携費や寄附(開校時にEAから1億円の寄附も行われました)でまかなわれているとのことでした。
カリキュラムは大きく4つにわかれます。第1タームは9月から12月で、全員が同じ授業をとり、ゲームデザインやビジュアルヒストリーなどを学びます。後半では4つのグループにわかれて、Unityを用いたバーチャルワールド作りの授業もあります。
第2タームは1月から4月で、クライアント先の企業から発注を受けたさまざまなプロジェクトをグループ単位で進めていきます。ゲーム以外にも幅広くデジタルメディア産業全般の企業(たとえば富士通など)と提携を結んでいるとのこと。1週間のうち4日間がグループワーク、1日が法律やビジネス論などの授業にあてられ、演習中心で進みます。
第3タームは5月から8月で、それまでと同じようにプロジェクトを進めても良いし、ピッチと呼ばれる事業提案を行うこともできます。ピッチにパスすると校内の機材やソフトを自由に活用できるほか、学生ベンチャーとして起業することもできます。もっとも予算は自分たちで獲得しなければならず、最近ではクラウドファウンディングを活用する学生もいるとのこと。また事業が失敗しても修士号は取れるとのことでした。
第4タームは9月から2月で、企業でインターンシップを行います。世界中どこでもOKで、ベンチャー企業でのインターンも奨励されています。もっともEAやマイクロソフトといった大手企業に人気が集まるのは日本と同じとのこと。ただし新卒一括採用が存在しないため、新卒者にとって採用は狭き門になっているそうです。また本校で修士号を取ると3年間のワーキングビザがとれるため、留学生の多くはカナダで就職する例が多いといいます。
学内では、カナダの海洋博物館向けにタブレットや大型筐体向けの船舶操縦シミュレーターを開発するチーム、家庭用向けのホログラフディスプレイを開発する学生ベンチャーなどが見られました。また、ロビーでは歴代のゲーム機が動態展示されており(インテレビジョンはデニス氏の私物とのこと)、PCゲームやボードゲーム、ビデオや教科書などがおさめられた図書館もありました。IGDAバンクーバーなどの地域コミュニティと連携して、ハッカソンやゲームジャムなどのイベントも頻繁に開催されているそうです。
デニス氏はCDMのミッションの一つに、世界中の優秀な学生を集めて演習型の教育を行い、BC州での起業促進や、企業への人材排出をあげました。デニス氏の仕事も企業に営業をかけて産学連携を進めていくことで、大学やゲーム会社、業界団体などを渡り歩いてきた経歴が役に立っているとのこと。その背景には人材の流動性の高さと、産学コミュニティの厚さがあるように感じられました。
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