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【Indie Japan Rising】同人ゲーム専門店は生き残れるのか?三月兎さんげっと店インタビュー

そこで今回のIindie Japan Risingではさんげっとの店長である海亀有限会社の川崎順平氏を直撃。国内のインディー開発者に焦点を当ててきた本企画だが、今回は趣向を変えた特別編として、店長の川崎氏にお店の成り立ちから同人ゲームやパッケージゲームへのこだわりを聞いた。

ゲームビジネス 流通

■筐体によって広がる同人ゲームの世界



――筐体の方は何かを改造する形で用意したのですか?

川崎:
ブラストシティの電源やブラウン管はそのまま利用していますが、PCの電源は別です。サークルさんの要望で最初はVGAしか描画できなかったのですが、ダウンスキャンコンバータでSVGAも映せるようになりました。

――ブラウン管で遊べるのはすごいですよね。まさにアーケードの雰囲気。ブラストシティの他にアストロシティとアーケード型のPCデスクがありますね。

川崎:
アストロシティは特に『REVOLVER360』のクロスイーグレットさんが興味を持ったのがきっかけです。その時はブラウン管の筐体しかなかったんですが、『REVOLVER360』に合わせたHD筐体を作ったのです。最近は同人ゲームでもフルHDに対応したものが増えています。なのでデモもフルHDで映したいので、アストロシティは液晶を組み込みました。液晶を組み込むための土台も作ったため、かなり値段はかかっています。PCもサークルさんの想定する動きを実現するために、ミドルスペック以上のものを準備した結果、筐体込みで20万は超えました。デモを走らせるのは、直接取引しているサークルさんに限定させてもらっているので、その時からクロスイーグレットさんの商品も卸してもらっています。


アストロシティの筐体には液晶が搭載。『REVOLVER360 Re:actor』のデコレーションがほどこされている。


――筐体が営業に貢献していますね(笑)。

川崎:
そうですね。筐体に興味を持って、商品を卸していただくサークルさんは多いです。やはりインパクトがありますね。特に僕らの世代はゲーセンで育った世代なので筐体に憧れがある。

――確かに自分のゲームが筐体で動くとうれしいですね。

川崎:
基本的に同人活動をやる人の行動原理は面白いからやってみるというものです。だからその面白さを支えていくようなショップを目指そうと思っています。

――お客の筐体への評判はどうですか?

川崎:
一番、印象に残ったエピソードはおじいさんと孫の中学生が試遊した後、このゲームが面白かったので、買えますかと言われたことです。その時はASTRO PORTさんの『超戦車戦アドベンティア』で、おじいさんが孫に買い与えていったのは印象に残っています。

――家族連れのお客さんもいるんですね。

川崎:
今の同人ショップはゲームしか欲しくないお客さんには買いづらいシチェーションが多いです。アダルトコンテンツの隣に置いてあったり、18才未満は入れなかったり。でも東方Projectのイベントには若い子がかなり増えています。ところが全年齢向けのゲームであっても、18才未満が買いに行ける場所はあまりありません。売り場をしっかり分けている大きな同人ショップか通販くらいです。

――若いお客さんも来るんですか?

川崎:
今は若い新しい顧客層が多いです。新規の方は友人同士で来ますが、同人ゲームのことをあまり知らない人も購入していきます。皆さんコンシューマゲームに比べて「安い!」と言ってくれるんです。

■ダウンロード時代におけるパッケージの意義



――同人ゲームはパッケージにもこだわりを持っている方も多いですよね。

川崎:
やはり皆さんこだわっています。コミックマーケットで出展する際はとくにそうです。ショップでもパッケージは重要で、シューティングが好きな人は機体が描かれたパッケージをまとめ買いすることもあります。東方Project以降は人型のシューティングが増えましたが、キャラクターが描かれているとノベルゲームにも勘違いされる。その点、えーでるわいすさんの『アスタブリード』は機体もキャラも入っているで、すごくわかりやすい。『REVOLVER360 Re:actor』などはパッケージだけではシューティングとわからない。だからなるべくデモの近くに置いています。

――パッケージの雰囲気で棚を作るのですか?

川崎:
そうですね。今はPS4に移植された作品をまとめています。あまりジャンルで棚を分けてしまうと、偏りが出てしまうので、サークルごとでわけています。そうすると新作をプレイした方が、旧作にも手を出します。



――インディーゲームではダウンロード販売が主流になりつつあります。現在でもパッケージを購入する意義はどこにあると考えていますか?

川崎:
僕自身が古い人間なので、やはりモノがあったほうが安心します。最近、販売を始めた自転車創業のかざみみかぜさんと話をしたのですが、モノがあると飾りたくなるという人はいると思います。かざみさんはソフトはダウンロードでも良いが、飾れるようなパッケージを別に作りたいと言っています。

今後は同人ゲームでもダウンロードが一般化して、パッケージはあるがシリアルコードだけみたいな頒布方法も増えるでしょう。でもやはりダウンロードだけだと、ワクワク感がない。ゲームを買ってプレイするまでの間に説明書を読むといったノスタルジックな感覚が足りません。

――ある種の時間差がゲームの経験に強く結びついていますよね。買った後、プレイするまでの盛り上がり。ダウンロードは購入した瞬間に遊べるので、つまらなかったらすぐに止めてしまう。でもパッケージだったらもう少し頑張ろうと思ってしまう。買ってしまった自分を肯定したい、正当化したい意識が働く。

川崎:
そうですね(笑)。最終的に満足行かなくても、ここの部分は面白かったという評価は下せます。ダウンロードの場合はプレイしてつかみが良くないと、連載漫画のようにすぐに打ち切られてしまう。

――あとコンテンツの楽しみというのは、購入の体験も含まれていると思います。というのもゲームソフトを買った店舗や体験はだいたい記憶しています。コミックマーケットもまさしくそういう場所であり、ただ買うのではなく、コミケで買うのが楽しいんです。そういった購入の体験といったことは店舗でも意識していますか?

川崎:
僕自身、営業のためにコミケに足を運ぶことは多くなりました。サークルさんのブースを見ることは、店舗販売の参考にもなります。そして、やはりデモがあるかないかは非常に重要だと思いました。以前の店舗ではデモ機は5台くらいでしたが、現在は50台近くのタブレットを置いています。設置してからはよりお客さんの目に留まるようにはなったと思います。今後はさらにポップなどで装飾できたらと思っています。

■実況との連動やダウンロードコードといった新たな店頭販売のあり方



――現在のお店はどういった作品が多いですか?

川崎:
やはり店内で一番多いジャンルはシューティングです。同人のシューティングは良い意味でガラパゴス。同人の世界の中で特異な進化を遂げています。

――確かに(笑)。ある種の伝統というか、同人シューティングで育った人が同人シューティングを作っている。

川崎:
まさに『∀kashicverse』のエンドレスシラフさんなどがそうです。彼らは様々なシューティングをリスペクトしています。

――最近では『イマリス』や『』の惑星まりもさんもそうですね。彼らも同人ゲームに大きな影響を受けています。今後はどういったジャンルを扱っていきたいですか?

川崎:
今は積極的にノベルやアドベンチャーを推しています。というのもノベル系のサークルさんは現在、店舗販促にかなり苦戦しています。2000年代は『月姫』がブームになり、その後に『ひぐらしのなく頃に』の大ヒットもありました。今のノベルゲームも質は高いのですが、個人の口コミがなくなっています。そのため、一般の市場まで作品が届かない。



――『月姫』とか『ひぐらしのなく頃に』の時代は今ほどインターネットが発達していなかったため、逆に掲示板やニュースサイトで話題になりやすかったように思います。今ではインターネットでゲームの情報はあふれています。その中で同人ゲームが口コミで広がるのは厳しいでしょうね。

川崎:
同人ゲームの情報自体は少なくなっています。個人ニュースサイトも少なくなりましたし、TwitterなどのSNSではそこだけで満足されてしまう感じです。そのため、現在注目しているのはゲーム実況です。3月に京都で開催されたインディーゲームの実況イベントにも足を運びました。お客さんの9割が女性で、男性は僕くらい。かなり場違いな感じでしたが、すごく面白かった。ニュースサイトよりも実況の方がインディーは売りやすいのではないかと考えています。

また現在はPlayismさんの扱っているダウンロード作品を店頭でも展開できないかと、相談させていただいています。昔あったソフトベンダーTAKERUのような感じで、ダウンロードコードをその場で購入するといった感じです。現在はパッケージ版の取り扱いがないと、デモ機を設置することができません。ですが、今後はダウンロードコード販売でも、店頭デモが可能なようにしていきたいと思っています。またコード販売がうまくいけば、PCショップやパーツ屋などにもおけるのではないかと考えています。

――つまりPCショップでダウンロードコードを購入して、Playismでダウンロードする?

川崎:
そうですね。現在は『REVOLVER360 Re:actor』がSteamキーを同梱して販売していますが、あれはクロスイーグレットさんが手作業で付けている特典です。やはりSteamキーを付けてから動きは良くなっています。同時にパッケージも欲しい方はいます。なので今後はパッケージとダウンロードコード同梱が望ましいと。

――なるほど。パッケージだけではなく、両方買えるお店を目指すということですね。

川崎:
そうです。そういったフットワークの軽さはあります。大型チェーンの店舗だと導入するのに時間がかかりますが、うちでは値段の変更なども柔軟に対応できます。

※次ページ: お店の存続は果たして可能なのか?

《Game*Spark》
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