まずはじめに、韓国出身ながらも流暢な日本語による自己紹介が行われた。2003年の来日から、サンライズを経て、マッドハウスの『ワンパンマン』に関わるまでの経緯を、ユーモアたっぷりに紹介。
また金世俊と言えば、『機動戦士ガンダムUC』『機動戦士ガンダムAGE』『ガンダムビルドファイターズ』でメカ作画監督を務めるなどメカアニメーターとして知られるが、成り行き上そうなっただけで、特別な思い入れはなかったという意外な話も飛び出した。
講義ではまずは「アニメーションとは何なのか」という本質をめぐる話から。点が線になるとき時間が生まれ、線が面になるときパースが生まれるといった概念をホワイトボードで説明。
つづく机に向かっての実演パートでは、実際のレイアウト用紙やタイムシートを用いた解説が。原画5枚を使い円が右から左へ動くだけの単純なアニメーションでも、原画ごとの円の位置とタイムシートによって様々な運動を描けること、また原画ごとの円の位置が同じでも、円のシルエットを歪めることで運動の速度が変わって見えることが具体的に示された。
話は絵だけにとどまらない。アニメーターの仕事というと通常は線画を描くことであり、絵の巧さや運動のタイミングについて語られがちだが、金はさらに、色やBG(背景美術)との関係や音(SE)の付き方で動きの印象が大きく変わると言い、幅広い視点を持つことの重要性を説いた。
続いて、『ワンパンマン』のカットを例に、実際の映像を見ながらの解説が。日本のリミテッド・アニメーション文化では、1秒間24コマのうち、フルに異なる絵を描くフルアニメーション形式ではなく、2コマや3コマごとに絵を動かす。なめらかに動いているように見せるには、一般に3コマが限度と言われるが、コミカルなシーンではあえて4コマごとにし、カクカクと動かすのもありだという例を示した。
そのほか、エフェクトは描く線が少ないのでNGをもらっても修正がすぐできるため、トライアンドエラーがしやすくタイミングの勉強になるといった実践的なコメントをはじめ、爆発における影、慣性による運動など多岐に渡るトピックが、映像とともに解説された。
最後には質疑応答コーナーも。「独学の方法」や「失敗談」、「エフェクトの描き方」など会場からは多数の質問があがった。金からは丁寧かつ現場に即した回答が語られ、イベントは盛況のなか幕を下ろした。
AnimeJapan 2016
ビジネスエリア: 2016年3月25日(金)~3月26日(土)
メインエリア: 2016年3月26日(土)~3月27日(日)
場所: 東京ビッグサイト
「ワンパンマン」作画監督が業界志望者に語る、アニメーターの楽しさと難しさ【AJ2016レポート】
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