そうしたなかで唯一欠けていたのが実写映像化だ。原作の持つ壮大な世界観、その再現が実写では難しいとの判断があったことは容易に想像がつく。そのうえでの実写映画化発表だけに、原作ファン、アニメファン、映画ファンに大きな驚きを与えるのは納得だ。
日本での映像化は難しいと思われたなかで敢えて実写化に乗り出したのが、曽利文彦監督である。今回の映画『鋼の錬金術師』のキーパーソンと言っていいだろう。
曽利監督は1990年代にジェームス・キャメロン監督の『タイタニック』でもCG映像を手がけたことで知られる。いくつかの映画でVFXのスーパーバイザーを務めた後に、2002年に『ピンポン』で監督デビューした。松本大洋のマンガを原作とした本作は高い評価を受け、とりわけリアルドラマの中に取り込んだCGシーンで曽利文彦の名前を一躍とどろかせた。
『アップルシード』のプロデュース、『ベクシル 2077日本鎖国』『ドラゴンエイジ -ブラッドメイジの聖戦-』の監督とCGアニメに関心も高く、アニメファンにお馴染みだ。2011年には『あしたのジョー』で再びマンガ原作の実写映画監督を務めた。ここでもCGを使ったリアルな映像で成果を見せている。
そんな曽利監督にとって、『鋼の錬金術師』は新たな挑戦になりそうだ。制作にあたっては、『ピンポン』以来、自分から立ち上げた久しぶりの作品と話し、長らく暖めていた待望の映像化企画であることを窺わせる。構想は10年越し、具体化してから3年の時間を費やした。それだけに「全力投球。それ以上」と強い意気込みを見せる。
映画化がいまになったことについては、映像技術の進歩を挙げる。『鋼の錬金術師』ならではのアクションやCGでの実現が期待できそうだ。一方で、映像はファンタジー作品ならではの見せるCGと、同時にCGあることを感じさせないCGのふたつが見どころになるという。『ピンポン』以来の曽利監督の技が発揮されそうだ。
曽利監督は、「『鋼の錬金術師』の魅力は、素晴らしいストーリー、これに尽きる、子どもだけでない大人が観ても耐えうる作品」と話す。
そのうえで映像を作るうえで避けたりはしない、精神論でヘビーは部分も描くという。それは暗い話でなく、原作の持つ読後の爽やかさを目指すもので、そこから優れた作品を成り立たせたいとも語る。
撮影は6月にイタリアでスタート、その後日本で撮影をし、8月下旬に終了予定だ。アクションやCGには巨額の予算が投下される。主人公・アル役の山田涼介をはじめ、理想的なキャストも揃う。
映画公開は2017年冬、その頃には驚きの作品がスクリーンに登場しそうだ。
『鋼の錬金術師』
公式サイト http:// hagarenmovie.jp
2017年冬、全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督: 曽利文彦
原作: 「鋼の錬金術師」荒川弘(「ガンガンコミックス」スクウェア・エニックス刊)
エグゼクティブ・プロデューサー: 濱名一哉
(C)2017 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2017映画「鋼の錬金術師」製作委員会
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