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【特集】インティ・クリエイツ社長に訊く『ガンヴォルト』誕生秘話…目標本数はない、だから好きに作れ

『ロックマンゼロ』シリーズをはじめ、多彩なタイトルを手がけてきたインティ・クリエイツ。アクションゲームの開発はもちろん、『ぎゃる☆がん』シリーズなど新たなゲーム性や刺激溢れる作品に着手していることでも知られています。

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◆ファンアイテムをもっとも届けやすい形が「限定版」だった



──今回は、前作と『爪』がセットになった「ストライカーパック」が発売されたので、初めて『ガンヴォルト』を遊ぶという新規ユーザーは増えそうですね。

會津氏:こんなことを言ったら作っている人間に失礼かもしれないんですが、前作の『1』はすごくよく出来ていたんですよ。私個人も素晴らしい作品だと感じていたので、「これを超える作品を作るのは難しいんじゃないかな」と思っていたんですよ、実は。

この素晴らしい『1』をたくさんの人に遊んでもらえれば、おのずと『2』も気に入ってくれるだろう。そういう頭だったので、そんな私の打算も入っているんですよ、「ストライカーパック」には。「『1』をもっと遊んでもらいたい。そのためには、『2』に『1』をつけよう」という考え方が詰まった製品なんです。

でも蓋を開けてみたら、『2』の方が面白いんですよ。「こりゃ『1』とパックにしなくてもよかったかなー」ってなりました(笑)。そんな風にも思っていますが、あと物語のあるものなので、『1』から『2』へと自然な流れで遊んでもらえる「ストライカーパック」は、価値のある製品だなと感じています。もちろん、『2』から遊んでも充分面白いのは間違いありません。ゲーム性は『2』の方が上回っていると思っていますし。

──ちなみに「ストライカーパック」には限定版もありますが、この構想はいつ頃からあったのでしょうか。また、限定版を用意した理由を教えてください。

會津氏:最初に広報の中川滋と話をした時に、「限定版をやりたい」「これは外せない」と言いました。そのおかげで、かなり大変な目に遭ったんですが(笑)。限定版をやりたかった理由としては、モノを付けたかったんです。今回用意したドラマCD や設定資料集、これを付けたかったんです。

デジタルで販売すると、こういったアイテムは付けられないじゃないですか。デジタルでソフトを購入した方に郵送するというのは、輸送費の面で考えても現実的ではないですし。ですがパッケージであれば、流通さんが限定版の付属品も一緒に流通してくれるわけですよ。購入してくれた方にアイテムを渡しやすい形です。これはフィジカル版でないと出来ないわけです。

なので、フィジカル版をやるのであれば、ファンアイテムを用意したいという想いがありました。『ガンヴォルト』シリーズは物語性やキャラクター性が非常に強いので、その魅力をより掘り下げた特典物やグッズを欲しがっている人が多いんです。


例えばグッズを作り、弊社の通販サイトであるインティダイレクトで売ったらどうだとも考えたんですが、会員数はそんなに多くないんですよ。数字は言いませんし、実は多いかもしれませんが(笑)、ここは控えめに「そんなに多くない」と言っておきます。

そして、会員向けの生産数という前提で、お客さんに満足してもらえるものが作れるのか……となると、難しい話になってしまいます。作れたとしても、非常に高い価格になってしまいますから。ちなみに今回の限定版は、+2000円でドラマCD と設定資料集が付いてきますが、あのドラマCD を単品で作って売ったら2000円で販売する形になります。設定資料集めの方は、1200~1500円ですかね。それを、ゲームとセットという形ならもっと安く提供できるわけです。そのため、お客さんが求めているものを、なるべくダイレクトに提供するには限定版が一番良いだろうという結論に至ったわけです。

──ユーザーさんの要望を、より低価格で実現できる手段が、パッケージによる「限定版」だったんですね。

會津氏:はい。パッケージ版じゃないと出来ないことなので、パッケージ版をやりたい一つの要因でしたね。パッケージ版をやるなら必ず限定版を作りたいと、ずっと考えていました。

──なるほど、だからこうして実現したわけですね。……そして、大変な目にも遭ったと(笑)。

會津氏:そうなんですよ(笑)。ちょっとだけ話をすると……通常版だけだったら、任天堂さんの方で生産・出荷し、そのままお店に並ぶわけですよ。でも限定版があることで、「限定版を梱包する工場」に入れる工程が発生します。その結果、通常のスケジュールよりもマスターアップが早まるんですよ。

さきほどもお話した通り、我々のクリエイターは非常にこだわり屋が多く、開発期間をいっぱいいっぱい使うわけです。そうすると、「一日でも長くゲームを作りたい」「一日でも早くマスターアップしてもらい、梱包しなければならない」というスケジュールのせめぎ合いが出てきまして。弊社はビギナーパブリッシャーなので、そこの調整が非常に重い作業でしたね。中川がやってくれたので何とかなりましたが、本当に大変でした。

この限定版が、発売日にお客様の手元に届いたのは、語っちゃいけない色んな人のご助力がいっぱいあったおかげです!(笑)

──おお、そんなことが(笑)。

會津氏:限定版が発売日に出るのは、まさに奇跡のタイミングでした。ただ、ここは胸を張って言えることなんですが、どこも妥協はしていません。間に合わせるための妥協はせず、かつ発売日に間に合うというのが重要なところです。ゲーム内容も、限定版の特典物も、一切妥協はありません。

──ゲーム内容はもちろんのこと、限定版のクオリティもかなり高いものなんですね。

會津氏:今回の限定版は、本当にお得ですよ。本音を言えば、あと+1000円で売りたかったので(笑)。でも価格設定は、最初に考えた通りに貫きました。実物を手に取った時に、そう考えてしまったほどのクオリティだった、と思っていただければ。

《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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