そんな業界で、このところ特に注目を集めているジャンルがあるのをご存知でしょうか。そう、「美少女プラモデル」です。
完成品のフィギュアではなく、あえて自分で作り上げる必要のあるフォーマットで美少女を楽しむという遊び方は、従来のガレージキットなどで見られるように、やや技術的ハードルの高いものとされてきました。それが、近年のプラモデル成形技術の急速な発展により、誰でも、気軽に、簡単に、美少女の立体造形物を、それも自分好みに仕上げるといった遊びを楽しむことが出来るようになったのです。
そしてここに、とあるジャンルが満を持して参入してきました。それこそが「メカ美少女」です。古くは「MS少女」から、近代では「武装神姫」など美少女に装甲や武装を取り付けて楽しむというスタイルは、いつの時代も根強い人気でファンに支えられてきた一方で、マイナーとまではいかずともホビーとしては一般的とは言い難い存在であり続けました。それが今や一大ジャンルとして花を咲かせています。その背景にあるのが「プラモデル化」でした。
手軽に組み立てられることはもちろん、切って貼ってが自由なプラモデルというフォーマットは、自分好みのスタイルで楽しみたいというメカ美少女ファンのニーズにマッチしていました。こうして本格的に人気に火がついた「メカ美少女」モノのプラモデル。現在では各社がこぞって新シリーズを展開するに至っています。
そこで本稿では3種類の「メカ美少女」をチョイス。それぞれの特色から、今一度その魅力を紐解いてみたいと思います。
フレームアームズ・ガール
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壽屋が展開しているオリジナルロボットコンテンツ「フレームアームズ(FA)」。基礎骨格となる「フレームアーキテクト」に装甲や武装を組み付けるというユニークなスタイルが特徴のプラモデルシリーズです。各部の接続軸は3mm径を基本としており、同社の「M.S.G ウェポンユニット」シリーズなどに対応したその拡張性高さから、ブロックトイのような遊びが人気を博していました。
そんなフレームアームズの機体を、大胆にも美少女化した「フレームアームズ・ガール(FA:G)」は、2015年からスタートしたプラモデルシリーズです。第1弾の「轟雷」がスマッシュヒットを記録して以降も様々な機種が続々と商品化。2017年にはスピンアウト元のフレームアームズを差し置いて単独でTVアニメ化するなど、ホビー業界において今まさに破竹の勢いを見せている一大シリーズとなっています。
このフレームアームズ・ガーズ人気の要因、ざっくりと一口に分析してしまうのは憚られるのですが、あえて挙げるとすれば「背景が薄い」という点。これは本家本元のフレームアームズにも言えるのですが、バックストーリーを想像する余地が多分に残されている分、ユーザー独自の設定やオリジナリティが演出しやすく、結果「うちの子」に愛着が湧きやすいのです。また、フレームアームズ・ガールはウェポンユニットや元のフレームアームズとのパーツとも互換性があり、気軽に組み換えが楽しめるのも魅力の一つです。
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さらに、フレームアームズ・ガールは他社の1/12フィギュア向けシリーズとも親和性が高く、ガールたちにドール用の布服などを着せたり、アクセサリーで着飾るといったユーザーも多くいます。また、トミーテックの同スケール銃火器プラモデル「リトルアーモリー」など、公式コラボが展開されているシリーズも。
自分だけのフレームアームズ・ガールを作り上げる方法は多岐に渡り、ユーザーの数だけ楽しみ方が存在するという非常にエポックメイキングな存在となっているのです。
メガミデバイス
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「メガミデバイス」は、2016年より展開が始まった新進気鋭の美少女プラモデルシリーズです。フレームアームズ・ガールと同じく壽屋から発売されていますが、こちらは完全なオリジナルシリーズであり、作り込まれたバックボーンも存在します。
設定では、模型で武装した少女型のAIロボット「MEGAMI」を戦わせて遊ぶバトルホビーという位置づけで、本シリーズのプロデュースを手がけているのは鳥山とりを氏。イメージとしては、かつて鳥山氏がプロデューサーを務めていた「武装神姫」シリーズに近いものの、装備する武器や装甲は、画一化されたスタイリッシュなデザインとなっているのが特徴的です。
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特筆すべきは、そのライセンス周り。メガミデバイスは当初から二次創作を許容することが明言されており、規約内であれば制作物の販売なども可能となっているのです。実際に個人ディーラーによるカスタマイズパーツなどの制作・販売なども行われており、プラットフォームとしては非常にオープンな部類となっています。
メガミデバイスは、ある程度の設定や制約を与えることで、逆にユーザーのアイディアや想像力が掻き立てるというホビーであり、自由な下地を持つフレームアームズ・ガールとは似て非なるメカ美少女と言えるでしょう。
そう聞くと、やや模型慣れしているユーザー向けにも思えるメガミデバイスですが、その点はご心配なく。装備の接続がお馴染みの3mm軸なので、単純な組み換え遊びにおいても十分なプレイバリューを発揮してくれます。
また、素体に採用されている「マシニーカ」と呼ばれる規格もメガミデバイスの特徴の一つ。これは原型師の浅井真紀氏が手がけた人型可動素体のプラットフォームで、プラモデルでありながら本格的なアクションフィギュアにも匹敵する関節自由度を誇ります。
まだまだ始まったばかりのシリーズではあるものの、今後の展開から目が離せない有力選手のひとつであることは間違いないでしょう。
デスクトップアーミー
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最後にご紹介するのは、メガハウスが2016年7月より展開中の可動フィギュアシリーズ「デスクトップアーミー」。先にご紹介した2つのメカ美少女とは違い、完成品の可動素体に装備パーツを組み立てて取り付けていくという、アクションフィギュアとプラモデルのハイブリッドとなっています。
フレームアームズ・ガールやメガミデバイスが基本的に人間の1/12前後のスケール感であったのに対して、デスクトップアーミーは全長80mm程度とやや小さめ。しかも4頭身程度のデフォルメ体型であるなど他のメカ美少女とは毛色が大きく異なります。とはいえ、大き過ぎず小さ過ぎずなサイズ感は絶妙の一言。デスクトップに置いておけば、どこかリアルな存在感を発揮してくれる、見事なスケールとなっています。
また、そんなデスクトップアーミーをよりリアルに見せる作り込まれたバックボーンも魅力のひとつ。公式サイトの解説やパッケージのインストでは、そのディープな世界観の一端を垣間見ることができます。
設定上、彼女たちは人工知能内蔵のドール型携帯電話「D-Phone」という存在であり、あらゆる情報を「アプリケーション・アーマー」として装備し、機能を拡張していくことが可能とされています。実際の装備の規格は、ピン型の角度がつけられるタイプに加えて、箱型のものの2種類が存在。ピン型の方は独特の形状ながら径はほぼ3mmであり、他社製のものとも互換性があります。
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また、11月に発売されたばかりの最新アイテム「KT-321f 轟雷シリーズ」では、公式にフレームアームズ・ガールとコラボが実現。これにあわせて装備の接続規格も統一されており、メガミデバイスやウェポンユニットシリーズとも組み合わせがしやすくなっています。
今後のラインナップでは、轟雷につづいてイノセンティアもデスクトップアーミー化が決定しており、両者のコラボはますます加熱していくものと思われます。
いかがでしたでしょうか。何をするにもフリーダム「フレームアームズ・ガール」、オリジナルのアイディア勝負が楽しい「メガミデバイス」、サイズも値段も手頃な可愛いヤツ「デスクトップアーミー」……と、三者三様の彼女たちは、もはやジャンルで一括りにはできない多様性を秘めています。
もちろん、どのように楽しむかはユーザー次第。今回ご紹介したメカ美少女は、いずれも規格の共通化や公式コラボなど、シリーズやメーカーの垣根を超えた遊びが提供されているものばかりなので、ぜひお気に入りの娘をみつけて自由に遊んでみてください。
(C)KOTOBUKIYA
(C)MegaHouse