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GMOアプリクラウドは、「これからのゲーム業界の未来を皆さんと一緒に考える」をテーマに掲げるイベントを11月21日・22日にわたって開催しました。
第1夜(11月21日)は「AI、AR」に関する内容となっており、「AI」(人工知能)についてはスゥウェア・エニックスのクリエイター陣が解説。そして「AR」(拡張現実)を、VR Agent取締役の張 巧実氏と、サイバーエージェントSGE統括本部CTOの白井 英氏がそれぞれ語りました。本記事では、今回行われたAR部門の講義について、紹介させていただきます。
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まずは張氏が、サイバーエージェントグループにおける「AR」の取り組みを通して、ユーザーの反応や反響、そこからARについてどのように接するべきかを語りました。まずは「諸説ありますが」と前置きをしつつ、AR市場について言及。2017年の総支出額は114億ドルですが、2012年には2150億ドルになる予想を提示し、国内でも2020年には約400億円に達するとの予測をグラフと共に解説しました。ARを活用して異例の大ヒット遂げた『Pokemon GO』の成功は記憶に新しく、更なる発展の可能性は誰もが想像するところです。
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続いて張氏は、VR Agentが行ったAR事業などに触れ、ARという新しい技術を使って革新的なことをしたいとの考えから取り組んだ「アメブロEX」や「P[AR]TY by AWA」について解説。「アメブロEX」は、マーカーを読み取ることで画面から文字が浮き上がり、音声入力でブログを投稿できるというユニークさで話題に。また「P[AR]TY by AWA」は、色を識別し、いつでもどこでも仮想DJブースを表現することが可能と、こちらも特徴的な内容です。
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また、既存作品で活躍する登場人物たちが、指定マーカーをかざすことで2Dアバターのミニキャラとして現れ、可愛いアクションを見せる「夢100AR」や「グリモアAR」などの取り組みも、大きな注目を集めました。
「夢100AR」や「グリモアAR」の表現を2Dに特化した点について、張氏はスマホアプリの市場で大きな支持を受けているタイトルのほとんどが2Dであるためと説明。人気が高く興味を引きつけやすい2Dを、ARで立体的に見せることでアプリの価値を上げられると判断し、2DによるAR表現を選択した模様です。
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こういった活動について、「最高にかわいすぎる」「幸せ空間」「今後もキャラを増やして欲しい」といった反応がユーザーから寄せられており、これまでになかった新しい価値の提供ができたと手応えを感じた張氏。また、作り手側にとっても新たなモチベーションとなり、効果的な取り組みであったことを明かします。
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しかしその一方で、熱しやすく冷めやすいなどの課題もあると指摘。ARが認知されることで技術そのものへの理解も進み、「予測できる範囲のみの価値になる」との見解を述べます。また、キャラが出てくるだけだと瞬間風速しか作れないため、ゲームとして遊べるサイクルの必要性も認識したと告げ、「ARは手段であり、目的ではない。何かを表現したくてARを使う、というのが大事」との言葉で締めくくりました。
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ARへの取り組みとその反響、今後対策しなければならない課題について張氏が解説した後は、スマートフォンゲームに市場における今後の展望に、白井氏が迫りました。まず白井氏は、“温故知新”を掲げ、これまでの家庭用ゲーム機やスマートデバイスにおける性能やタイトルの推移を明らかとします。それは、今日に置けるスマートフォンゲーム市場の成功を、ゲーム史を遡ることで浮き彫りにする試みとも言えました。
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コンピュータゲームの一大ブームを巻き起こしたファミリーコンピュータ、その盛り上がりを更に拡大させたスーパーファミコン、ソニーによる家庭用ゲーム機本格参入の礎となったプレイステーション、それぞれのCPUとメモリに言及します。ファミコンのメモリはわずか2KB、プレイステーションのメモリでも2MBしかありません。1996年に登場したニンテンドウ64でも、メモリは4.5MB。2000年発売のPS2で32MB、その6年後の2006年に出たPS3でようやく256MBとなります。
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そこから更に6年後にリリースされたiPhone5のメモリは、1GB。5s、6のメモリは同等ですが、2015年のiPhone6sで2GBになります。iPhone8のメモリは6sと同様ですが、CPUが進化しており、全体的なスペックはもちろん向上しています。
家庭用ゲーム機のようにスマートデバイスも順調な進化を遂げており、手頃なPCに近い性能を持ち合わせていることが明示されました。そして白井氏は、この性能の推移と照らし合わせる形で、当時リリースされた有力タイトルとその傾向を解説します。
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iPhone5が出た2012年は、大人気アプリの代名詞とも言える『パズル&ドラゴン』が登場。翌年はiPhone5sと『モンスターストライク』、2014年はiPhone6と『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』がそれぞれリリースされました。いずれも高い人気を集めたアプリで、スマートフォンらしい手軽な操作で楽しめるゲームとなっています。
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続いて、2015年にiPhone6sと『メビウス ファイナルファンタジー』が、2016年にはiPhone7と『Pokemon GO』がリリース。そして2017年には、iPhone8と『リネージュ2 レボリューション』が登場しました。
白井氏は、『メビウス ファイナルファンタジー』と『リネージュ2 レボリューション』に注目。TVの前以外でも圧倒的なクオリティが提供された例として上げ、コンシューマと同じような体験がスマートフォンで楽しめる状況になったと分析。このことから、家庭用ゲーム機で遊んでいたたユーザーがスマートフォンに流れ、前述した2作品のようなコンシューマゲームに近い体験が出来るゲームが今度もリリースされるとの予測を示します。
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その一方で、高いハード性能をそこまで求めない『Pokemon GO』も無視できない存在と指摘。GPSなどのスマートフォンの機能を活かした新しい体験が味わえるゲームも今後増えると予想しており、リッチな体験が味わえるものと独自性が強く手軽なもの、この大きな2つの流れが今後の市場に大きな影響を及ぼすと示唆して講座を締めくくりました。