
2017年11月17日にニンテンドー3DS向けに発売された『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』。『ポケットモンスター』シリーズ最新作となる本作では、今までに登場した伝説のポケモンをすべて捕まえられたり、あのロケット団が復活したりとさまざまな見所があるのですが……。実は、こっそりと岩田聡氏に関するメッセージも収録されていたのです。
そのメッセージを聞けるのは、アーカラ島はカンタイシティにあるゲームフリーク。そう、このゲームを開発したゲームフリークは、かつてのように作中にも登場するのです。ここにはさまざまなスタッフがいますが、例の話をしてくれるのはモリモトというキャラクター。もちろんこれは、ゲームフリークに所属する森本茂樹氏をモデルにしたキャラとなっています。

モリモトは殿堂入り後に1日1回バトルをしてくれるのですが、この際にバーチャルコンソール『ポケットモンスター 金・銀』から連れてきたポケモンを手持ちに入れていると特別な会話が発生します。会話のパターンはいくつか存在しており、その中に岩田氏に関するものがあるのです。以下がこのメッセージとなります。
金銀で データの 圧縮に
困っていたら とても
便利な プログラムを 作って
助けてくれた 人が いたんだ
その人は そののち 有名な
社長さんに なったよ
“その人”は間違いなく、任天堂の社長を務めていた岩田氏のことに違いありません。かつてはハル研究所に所属する天才プログラマーだった彼ですが、会社の経営不振をきっかけに社長となり経営手腕を発揮します。その後は任天堂に入社し、社長へ就任。ニンテンドーDSやWiiといった大きなヒットを作り出しました。しかし、2015年に病気のため死去。これにはゲーム業界人のみならず、ファンもひどく悲しみました。
プログラマーとして、そして任天堂の社長として数多くのことを成し遂げた岩田氏ですが、実を言うと彼は『ポケットモンスター』シリーズにおいても大きな貢献を果たしているのです。


モリモトが話すように『ポケットモンスター 金・銀』では、グラフィック圧縮ツールに関して困っている森本氏たちを助けたほか、『ポケットモンスター 赤・緑』を海外に発売する際には、任天堂と石原恒和氏(株式会社ポケモン代表取締役社長)の間を取り持つようなことも実施。さらに、ニンテンドウ64『ポケモンスタジアム』では、社長という立場でありながら『ポケットモンスター 赤・緑』の戦闘プログラム(それも仕様書もなく、森本茂樹氏が時間をかけて苦労し作り上げたもの)をわずか一週間で移植するという偉業を成し遂げました。
また、ゲームメディア「4Gamer.net」に掲載されている岩田氏の追悼企画インタビューでは、岩田氏がポケモンを大きく進化させるプロジェクトに関わっていたことも明かされています。
この記事によると、ゲームボーイアドバンスにワイヤレスアダプタ(携帯通信デバイス)を積極的に取り入れたのも、映画館でポケモンの配布を行うシステムの現実化も、岩田氏が積極的に行ったが故に実現したことだというのです。今われわれがふつうに恩恵に預かっているシステムは、岩田氏の努力があってこそのもの。ポケモンと岩田氏は切り離して考えられないほどと言えるくらいでしょう。

こういった背景を考えると、シリーズ最新作である『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』にて岩田氏に関するメッセージが収録されているという事実はとても感慨深いものになります。そしてそんな大切な人が亡くなってしまったということを、改めて痛感するのです。