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全力で『スマブラ』に熱中していたあのころに戻りたい【コラム】

『スマブラ』を全力で楽しんでいたあの過去にはもう戻れない。

任天堂 その他

2018年12月にはニンテンドースイッチで『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』が発売される。このゲームが登場するということは、あちこちでお祭り騒ぎが起こるということだろう。そのくらいにこの作品はすごい。しかしながら、新しい『スマブラ』が出るたびに私は昔のことを思い出してしまうのだ。

初代となる『ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ』が発売されたのは1999年1月のことである。私はそのころ中学生くらいで、自分のニンテンドウ64を持っていなかったこともあり、友人たちに誘われるまでは遊んだことがなかった。すでにこのゲームの楽しさを知っている友人たちは狂ったように遊び、それこそ親に怒られるほど誰かの家に居座ってみんなでひたすらに大乱闘を繰り広げていた。

そんな状況であったため、私も『スマブラ』には興味があった。そんなにハマるゲームとはいったいどんなものなのだろう。任天堂のキャラクターが作品の垣根を越えて集合するなんて、そんなことあっていいのだろうか。少し緊張しながらニンテンドウ64のコントローラーを握ると、友人たちの言っていたことが嘘でないとわかる。

知っているキャラクターたちが特徴を活かして戦う光景は見ているだけでもすごかったし、ただでさえハチャメチャなのにアイテムやポケモンが出てきて戦況が変化しまくって笑えた。おもしろかった何よりの理由は、気心の知れた友人たちとなんら気兼ねなく騒げたからだろう。

記憶をたぐってみると、このころのプレイングはとても稚拙だったように思う。カービィで空を飛んではストーンになったり、ドンキーコングの投げで強引な道連れを狙ったり、誰かがハンマーを持ったらまったく為す術がなくやられたり……。しかしそれでも十二分に楽しかったし、それでよかったのだ。

◆『スマブラ』で何が起こっても笑える年頃



しかし改めて考えてみると、あの時の熱狂はなんだったのだろう。自分でプレイするのはもちろんおもしろかったし、順番待ちで友人たちが戦う様子を見るのも楽しかった。とにかく謎の一体感があったのである。

みんなでドンキーコングを選んでハンドスラップをすればそれだけで爆笑できたし、ちょっとうまいヤツがカービィのスクリュードライバーでメテオを決めればみんなでこぞって真似をした(もっとも、そのころはメテオなんて言葉は知らなかったが)。最後にタイマンになって、ネスのPKサンダーで復帰に失敗したらとにかく盛り上がった……。

こうして文章にしてみると「何がおもしろかったのか?」と思えてしまうが、ともあれ当時は楽しかったのである。それに思春期のころというのは箸が転んでもおかしい年頃なのか、後になって考えてみるとくだらないと言えそうなものにハマることもある。読者のあなたもそういう経験があるのではなかろうか。

もし「まだそんな過去を振り返るような年齢になってない」という読者がいたのならば、それは幸運なことだ。現在自分が好きなことを大事にして欲しい。それは後々いろいろな意味で良い思い出になるだろうから。

◆今の『スマブラ』と昔の『スマブラ』



そして時は流れ、少年は大人になる。『スマブラ』はいくつか続編が発売され、どんどん進歩していった。大人になった少年はひさびさに『スマブラ』を遊んでみようと手にとることになる。遊んでみれば確かにおもしろいのだが……、しかし明らかに何か物足りない気がする。

もしかしたら『スマブラ』が昔のものよりおもしろくなくなったのか? いや、そんなことはない。変化したのはゲームのほうというよりも、私のほうなのだから。

続編として登場した『スマブラ』は間違いなくすごい。もはや任天堂という枠を超えてスネークやソニックが出てくるようになったのだ。しかし、いろいろなコラボを見たせいか私は昔ほど純粋に感動できなくなってしまった。年齢を重ねると経験が増え、どうしても感度が鈍りがちになる。

何より大きな問題は、一緒に遊ぶ友人たちがいなくなったことだろう。いや、もちろん集めようと努力したこともあるし、『スマブラ』が好きだという人たちと遊んだこともある。しかしながら遊んでいる最中もどこかで気を使ってしまったり、あるいはタイマンが好きだという人もいて趣味が合わなかったこともあった。

もうひとつ忘れてはならないのは、思い出は美化されているということだ。あのころニンテンドウ64で『スマブラ』を遊んだ時は確かに間違いなく楽しかったはずだが、それでも今思っているほどではないのかもしれない。もはや確かめる術はなく、できるのはただ懐かしむことだけである。

もちろん今の『スマブラ』が最も楽しいといえる人もいるだろうし、それは絶対に正しい。e-Sportsとしても注目を集めているし、新作が発売されるころにはさらなる盛り上がりを見せることだろう。そして「昔は楽しめなかったけれども今はおもしろい」なんて人がいるのも当然のことであるし、その意見はなんら間違っていない。

ただ、今になってこのゲームを遊ぶと思うのである。このゲームを楽しむにしては、自分や周囲の環境が変わりすぎたのだと。今の自分にとって、かつてのように『スマブラ』を純粋に心から楽しむことは難しくなっているのだと。私がかつて持っていた「みんなでドンキーコングを選んで笑える時間」は終わってしまったのだ。
《すしし》
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