13.橋本 ひかりのテーマ
西村氏:
気弱で、引っ込み思案、ともすれば少し悲観的なところもあるのですが、そういった性質だからこそ、人に対して繊細に、優しくなれる。
弱さとポジティブな部分が結びついている、ひかりのキャラクターがきれいに表れているような気がします。
笛の音と弦楽器の音と、それぞれ異なる側面を表しているように感じられるのですが、実際のところはどうなのでしょうか?
いとう氏:
まさに「気弱で心優しい」というオーダーを受けて作った曲です。
とはいえ音楽で気弱ってどう表現すればいいんだろう?と結構悩みました。
まずは柔らかい音色、ここではフルートですね。
あとは音楽的な話になってしまいますが、なかなか主和音に解決しない、和声の転回系でふわふわした感じを出す、等々の小さなアイデアを入れてメロディも高音で始まるけどだんだん下にさがっていくという引っ込み思案加減。
ピアノのアルペジオは気弱さの中に隠れている小さな優しさ=芯の強さを、せめて音の数で表せないかな、という模索の結果です。


14.迫るノイズ
西村氏:
バトルステージの導入になるシーンや、バトルステージで流れる曲です。ぐっと勇壮な気持ちになれます。
ADVパートのラストとバトルパートをまたいで、そのままバトルの曲がステージ選択画面でも流れるという演出があるのですが、Wright Flyer Studiosさんの演出担当の方のアイディアです。
楽曲のクオリティーの高さを活かす、素敵な演出だなと思います。
いとう氏:
伊藤賢治さんの曲とはガラッと趣を変えて、静かに燃え上がる感じを意識して作った戦闘曲です。
「いくぞ!!!」じゃなくて「いくぞ…!」です。
長めの音符で大きな流れの旋律を作って雄大さなんかを表現しています。
15.daydream
西村氏:
この曲は確か、タウンイベントでのバトルが初出だったように思います。
爽やかな雰囲気ですが、バトルにて使用されていました。
バトルの雰囲気を熱量を上げる形で支えるのではなく、逆にバトルを日常に落とし込むような使いかたで感心したのを覚えています。
このあたり、やはり意識されて制作されたのでしょうか?
いとう氏:
私もまさかこの曲が戦闘シーンに使われるとは思ってもみませんでした。
ADVパートの日常曲バリエーションのつもりだったので、今度は今までよりも元気で活発なものを、と考えて作った曲です。
運営さんの選曲センス凄いですよね。
面白い使い方をしてくださって本当にうれしいです。
16.失敗から立ち直れ、その先へ
西村氏:
メインストーリー、イベントにおいて、比較的穏やかなシーンで使われます。
ひかりの救いのシーンでも使われていますね。
ひかり自身の、激しくはない、しかしずっと継続していく前向きな気持ちや努力に言及したあの場面に、この曲はとても似合っているような気がしています。
いとう氏:
藤岡竜輔さん作曲。あたたかい夕陽、明日にほのかな希望、そんなイメージですね。
どこまでも穏やかで、それでいて東奏市での小さな物語がひとつ、またひとつと幕を閉じていく寂しさも感じる曲ですね。
ピアノがずるいですよこの曲は。
17.瀬沢 かなえのテーマ
西村氏:
かわいらしく、元気がよくて、ちょっとだけ調子に乗りやすいシティーガールのテーマです。
このスカっとした雰囲気からでしょうか、初期イベントにおいてはよくイベントストーリーの結びによく使われて物語の終わりを爽やかに演出してくれました。
「ハッピーエンド!」という言葉が似合う曲なのかもしれませんね。
いとう氏:
「元気でおしゃれな(おしゃれになりたい)女の子」というオーダーを受けて作った曲です。
これは文字通りに受け取れば最新のサウンドでDance Popみたいなものを作ればいいのかな?と思うも、それは『ららマジ』の世界には合わなさそうだし、とまた悩みましたね。
そこで「おしゃれになりたい=おしゃれじゃない」と考え、ちょっとだけ懐かしめのポップスという風にしました。


18.新しい出会い、新しい可能性
西村氏:
日常の中でも、ゆったりとした雰囲気の場面でよく流れる曲かと思います。
のびやかで自由で、現状になんの問題もなくリラックスするシーン。
今日もがんばったなー、というようなすっきりさがどこかにあって、お疲れーと言って部室を出ていって、おしゃべりしながら帰っていく器楽部メンバーの後ろ姿をイメージできます。
いとう氏:
時間の流れのゆるやかな放課後の教室をイメージしています。
実際は物語の最初の方でよく使われている気がしますけどね。
西村さんが部室での一日の終わりを想像してくださったのはとても嬉しいです。
19.侵入者
西村氏:
確か、配信当初の楽曲ではなく、改めて作られたものだったように思います。
なにか急がなければいけない緊迫感のある場面や、追い詰められて、不利な状況と知りながら立ち向かわなければいけない状況というような、危機感と速度感のある場面で使われている曲で、毎回、場面を効果的に盛り上げてもらっています。
いとう氏:
「何者かの侵入。ノイズとのファーストコンタクト、アタック!」というオーダーでした。
仰るとおり、追加BGMですね(15曲目のdaydreamも同時期に作った追加BGMです)。
この頃はだいぶ『ららマジ』への理解が深まっていたので作りやすかったです。
基本的に東奏市ではアコースティックな音楽を、夢世界やユグドラシルでは音楽面でも何でもアリ!と思っていたので、だいぶ現代的な音楽にしてみました。
ふたつの世界の音楽は作り分けをかなり意識していました。
まさかノイズが現実世界に侵食してくるとはなあ…たまげたなあ…と思いました。
20.夢の中の出来事
西村氏:
現時点では、まだ一部のイベントで使われているのみなので、『ららマジ』をプレイされている方にもあまり耳なじみはないかもしれません。
静かで悲しい入り口から音が広がっていく感じが、想像力を膨らませますね。
中盤からリズム音が入ることで、悲しいだけではなく、悲しさを受け止めた先で自分はどうしていくか、というような少女の心の揺れ動きを感じます。
いとう氏:
泣きながら戦っているイメージです。
どういうシナリオなのか想像もつかない状態で作っていたのですがとにかく何かとてつもなく大きな抗えない現実的なものが押し寄せてきて絶望を抱えながら悲壮な戦いを繰り広げるのかな?などと考えていました。
「浅野葉月の願いごと」、最高でした(BGM初出がタウンイベント「浅野葉月の願いごと」)。
21.立ち向かうものたち
西村氏:
配信当初のディスコード戦に導入されている楽曲。1幕から5幕まで、第一部のディスコード戦の楽曲は、ほぼこちらで統一されています。
ストーリー上で盛り上げた「この娘を救いたい!」「この娘を傷つけるノイズが許せない!」という熱量をさらに盛り上げる素敵な曲だと思います。
いとう氏:
伊藤賢治さん作曲。これはもうゲーム音楽が好きな方なら誰が聴いてもすぐわかる
イトケン節と呼ばれているヤツですね。スゴい曲ですよこれは。
アツい、燃え上がる曲調で手に汗がにじむのでフリック回避が難しくなりますよね。
パーフェクトはガードから狙うのが私のスタイルです。
22.神代 結菜のテーマ
西村氏:
結菜は、自らが抱える寂しさや悲しさを、他人に対しても自分に対しても誤魔化してしまえる賢さを持っていて、そしてその賢さが、自分の傷を深める結果に繋がってしまいます。
そんなキャラクターを表すように、この曲は穏やかさの下にほんのり寂しさを感じさせてくれます。
いとう氏:
「お姉さんキャラに包まれている安心」というオーダーでした。
安心というくらいだから肉感的な抱擁をイメージしてはダメなんだろうなと思い、子守歌のようなオルゴールで大きな母性に包まれた揺り籠、そんな感じのものをイメージして作りました。
安心と不安は表裏一体なので安らぎの中にも少しだけ寂しさが顔をのぞかせるようにしています。


23.嬉し恥ずかし
西村氏:
『ららマジ』の日常シーンを支える曲のひとつです。
日常シーンを中心としたイベントでは本当によく使われている曲です。
コメディとまではいきませんが、ヒロインと過ごすお昼休み、ちょっとクスリとくるやりとりが聞こえてくる、そんな印象を勝手に受けています。
いとう氏:
藤岡竜輔さん作曲。いままでの日常曲は本当に汎用的なものでしたがこの曲は特に「女子校の日常」という具合ですね。
女の子たちが快活に過ごす毎日に全力でアプローチしている良い曲です。
藤岡さんご本人は長髪でメタルが好きです。
24.閉じ込められた永遠
西村氏:
夢世界に隠された、不気味さ、不穏さ、隠されたネガティブな感情を表しているように思います。
そのキャラの精神世界そのものを冒険する本作では、明るさや楽しさだけではなく、
ほの暗い「なにか」に対峙することもあります。
この曲にはそういった心の負の側面のイメージを支える力があるように思います。
いとう氏:
藤岡竜輔さん作曲。この曲を1幕、菜々美の独白シーンで聴いたときに思わず鳥肌が立ちました。
女の子たちがそれぞれ抱えている傷、悩みに感傷的な曲ではなく、ミステリアスでどこか神秘的な曲を当てることで傷の底知れぬ深さ、そして物語の裏で動いている(かもしれない)もっと大きなサスペンスまで感じさせられました。
25.不可思議な事態
西村氏:
夢世界に隠された不気味さ、探り探りそこに踏み込んでいくチューナーたちに視点をあてたシーンでよく使用されます。
ミステリアスさと不気味さ、そして不気味さを感じながらも進んでいくチューナーたちの不安感を押し上げてくれます。
いとう氏:
変な曲ですねこれは。
26.なにか来る……
西村氏:
不気味さ、不穏さの底からはっきりとした脅威が現れ、チューナー達は覚悟を決めてその「何か」と戦う。
24~26までの曲の並びはそのままひとつの物語のようになっていて、夢世界を冒険するチューナーと少女たちのイメージが次々と頭に浮かんでくるようです。
いとう氏:
藤岡竜輔さん作曲。BGMを作っている時は当然ながら曲名というものは存在していないのですが、すごくなにか来てる感じがします。
確かに戦いに臨む前の覚悟完了、という感じですね。
27.怒りの日
西村氏:
第一部ラスト、5幕のラストバトルでかかったこの1曲。
特にギターの音が印象的で、かっこいい音の奔流に、おおっ!となった方も多かったのではないでしょうか。
ストーリー上でも、ゲームの難易度としても熱い一戦となっていました。
いとう氏:
伊藤賢治さん作曲の第一部ラスボスBGMです。
音の奔流とは最高な言い回しですね。
それにしても1~5幕とプレイして、その最後の戦いでああいう展開になったらラスボスのお供には絶対に攻撃してはいけないって思うじゃないですか。
苦労しました。


28.未来への希望
西村氏:
RPGではおなじみ、バトル終了後にかかる音楽です。
ギリギリの死闘を繰り広げた末に聴くことも多いせいか、曲を聴くだけで脳裏にリザルト画面が表示され「勝った……!!」という達成感に満たされる、素敵な曲です。
いとう氏:
バトルリザルト用として作った曲です。
今はどちらかというと次回予告のイメージが強いような気もします。
戦いの興奮を鎮めるのではなく、しばらく勢いに乗って盛り上がってるような「やったったぜ!」みたいな。
そんな高揚感を大事にしました。

29.君に届け
西村氏:
この曲を聴いて思い出すのはなんといっても、第一部のラストで、これまで調律してきた5人の少女が一同に集まっての「ファイト・オー!」のシーンです。
5人の調律おめでとう!ここまで冒険を進めてくれてありがとう!という気持ちと、この先の展開へのワクワクが詰まった曲だなと思います。
いとう氏:
伊藤賢治さん作曲。これはメインテーマである「始まりの唄」をガラッと変えた編曲になっていることにお気付きでしょうか。
なんでしょう…「私たちの戦いはこれからだ!(いい意味で)」といった圧倒的な大団円感。
各エピソードの最後を締めくくるのに相応しい曲ですよね。

Disc2(30~59曲目)のライナーノーツはこちら