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1998年11月に発売され、人気作や個性的なタイトルなどで注目を集めた「ドリームキャスト」。『ファンタシースターオンライン』や『ジェット セット ラジオ』、『シェンムー』シリーズなど、今も根強い支持を受ける作品が数多く登場しました。
そんなドリームキャストソフトとして、1999年3月18日に発売されたのが、『北へ。White Illumination』です。本作のジャンルは、いわゆる恋愛ADVとなっており、魅力的な女の子と関係を深め、仲良くなっていくのが大きな目的です。
恋愛ADVといえば、1994年発売の『ときめきメモリアル』が大ヒットし、家庭用向けハードに恋愛系タイトルの一大ブームが巻き起こりました。この勢いは数年経っても衰えず、プラットフォームの発展に合わせて多彩な進化を実現。そして必然的に、恋愛ADVのリリース数自体も増加していきました。
そんな、恋愛ADVブームとも言える時代に登場しながらも埋もれることなく、『北へ。White Illumination』は持ち味と個性をしっかりと際立たせました。その魅力やゲームシステム、そして本作を生み出した開発サイドについて、発売20周年を記念して振り返ってみたいと思います。
◆繊細なキャラキターデザイン、北海道という舞台、個性的なシステム─三つの柱で存在感を示した『北へ。White Illumination』
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『北へ。White Illumination』でまっさきに目を引くのは、繊細なタッチで描かれたヒロインたちです。当時は、ハードの性能や売れ筋となっている傾向から、恋愛ADVのキャラデザインはいわゆるアニメ系に寄ったものが人気を集めていました。
ですが、本作のパッケージに描かれたヒロインたちを見て分かる通り、その筆致は非常に細やか。独特のラインが、少女たちの儚さや女性が持つ曲線の美しさを雄弁に表現し、唯一無二の空気感を醸し出しました。
彼女たちを生み出したのは、キャラクターデザインを担当した大槍葦人氏(本シリーズには、NOCCHI名義で参加)。これまでの家庭用向け恋愛ADVには見られなかったタッチで描かれた女性たちは、多くのゲームファンの視線を集めました。ハードの限界もあり、その筆致が作中で完全再現されている・・・とまでは言えませんが、新たに提示された方向性が実に刺激的だったことは間違いありません。
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繊細で儚く、それでいて存在感の強さを感じさせるタッチは、少女が持つ幻想性と女性らしいしなやかさを同時に合わせ持っていました。そんなヒロインたちが暮らすのは、北の大地・北海道。主人公は旅行者としてこの地を訪れ、夏・冬の季節を通じて彼女たちと知り合い、心を通わせていきます。
北海道と言えば、今でも高い人気を誇る旅行先のひとつ。食事の美味しさもありますが、憧れにも似た幻想を北海道に抱く方もいます。一部の旅行者にとっては、ある種の非日常を求めて訪れるというケースもあるでしょう。
しかし、その大地に生きる人間にとっては、平凡で大切な日常に過ぎません。それは、本作に登場するヒロインたちも同様。様々な想いや記憶と共に、北海道でその日々を送っています。主人公が抱く非日常と、彼女たちの日常が交差することで、新しい一日が幕開けを迎える──かどうかは、実はプレイヤー次第で大きく変わります。
恋愛ADVと一口に言っても、ゲームシステムから難易度まで様々。中には、ただ物語を読み進めるだけでヒロインと仲良くなり、分かりやすい選択肢を選ぶだけでハッピーエンドに繋がる作品もあります。ですが、『北へ。White Illumination』においては、そう容易くはいきません。
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ヒロインたちとの関係は、会話を通じて距離が縮まっていきますが、本作における会話の運び方はかなり能動的。一般的な恋愛ADVのように、選択肢を選ぶことで親密度が上がることもありますが、本作独自のシステム「コミュニケーション・ブレイク・システム(以下、C.B.S.)」も使いこなさなければなりません。
この「C.B.S.」を使うと、相手の会話に割り込んだり、質問に対して能動的に対応することができます。自動的に出てくる選択肢を待つといった受動的なプレイではなく、「ここで声を上げるべきか?」と考えながら相手の話を聞き、能動的なコミュニケーションを生み出すことで、ヒロインとの関係が一歩ずつ進んでいくのです。
日常と非日常が交錯する北海道で、儚くもしなやかなヒロインたちと、能動的なコミュニケーションで関係を進めていく『北へ。White Illumination』。たおやかなのに芯があるのは、キャラクターだけでなく本作そのものの特徴とも言えるかもしれません。
『北へ。White Illumination』を生み出した「レッド・エンタテインメント」の今