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トンプソン・サブマシンガンとは
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開発者ジョン・タリアフェロー・トンプソンの名前を取って名付けられたトンプソン・サブマシンガン、通称トミーガンは、今からちょうど100年前の1919年から製造が開始されました。100年間の間に累計170万丁以上が生産され、今なお製造が続けられている短機関銃のベストセラーです。
数多い短機関銃の中でもトンプソンが人気を博している理由は頑健性と信頼性にあります。弾丸は.45ACPという大型拳銃用のものを使用しており、入手性と破壊力にも優れています。重量は5キロ前後と近年開発された同種の銃に比較するとやや重いのですが、その分フルオート射撃時の反動を抑えやすくなっています。
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トンプソンは元々第一次世界大戦の際に多発した塹壕戦において、フルオート射撃で敵兵を蹴散らす用途を想定して開発されたものでした。しかし開発が終了した時期には既に大戦は終了しており、軍や警察からの発注はごくわずかだったのです。
代わりにトンプソンに興味を示したのが民間市場、特に禁酒法時代(1920年~1933年)に違法なアルコールの取引で豊富な資金を蓄えていた都市部のギャングでした。民間仕様のトミーガンはセミオートでしたが、フルオートへの改造は容易で、50発入りドラムマガジンの使用が可能だったことから抗争にしばしば使用され、その独特な発射音から「シカゴ・タイプライター」とも呼ばれました。現代でもトンプソンはギャングが持つ銃としてのイメージが強く『ドールズフロントライン』のトンプソンにも色濃く反映されています。
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猛威を振るうギャングに対抗すべく、やむを得ず警察もトミーガンを導入。激しい抗争が繰り広げられました。禁酒法施行前、シカゴのギャングの平均寿命は55歳でしたが、施行後は38歳に低下。連邦捜査局の禁酒局捜査官も500名以上の犠牲を出しており、この数字の多くにトンプソンが関わっていることは間違いないでしょう。
なお、一口でトンプソンと言っても、製造時期によってさまざまなバリエーションが存在しているので、順に紹介させてもらおうと思います。
M1919:初期生産品。サブマシンガンという言葉が初めて使用された銃であり、デモンストレーション・テスト用として少数が生産されました。
M1921:初期量産型。『ドルフロ』のトンプソンが手にしているのはおそらくこのモデル(後述するM1928とは若干銃口周りが異なる)。約1万5千丁が製造されましたが、第一次世界大戦終了後の軍縮の流れに飲み込まれ軍に正式採用はされず、セミオート版の「M1927」に改造されて民間市場に販売されました。シカゴのギャングたちが使用したのはこのタイプ。なお、在庫全てを売り切ったのは第二次世界大戦直前でした。
M1923:.45ACP弾よりも強力な45 Remington-Thompson弾を使用した試作品。
M1928:トミーガンとしては初めて軍に正式採用されたタイプ。強烈な反動を抑えるために発射速度を600発/分以下まで抑え、水平フォアグリップとカッツ・コンペンセイターを標準装備しています。当初は米海軍のみが採用していましたが、第二次世界大戦勃発後はフランス軍やイギリス軍でも採用されました。
M1928A1:M1928の米陸軍正式採用モデル。連合国各国に広く供給するために総計562,511丁が生産されました。
M1:生産性が低かったトミーガンの設計を見直し、プレス加工を活用した大量生産型。ドラムマガジンは使用できなくなっています。
M1A1:M1を更に簡素化したタイプ。撃針をボルトに固定したことを受け、リアサイトの両側に三角形の保護板を装備しています。M1とM1A1は累計で138万丁が製造されました。
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第二次世界大戦においては、大量生産されたトミーガンは兵士たちが愛用する銃となりました。その後も朝鮮戦争で活躍したトミーガンはベトナム戦争では援助物資として南ベトナム軍へ供与されましたが、米兵たちは戦場で遺棄されたものを回収したり、南ベトナム軍の兵士から譲り受けるなどして使用しています。
日本でも第二次世界大戦時は鹵獲したものを使用したり、戦後は米国から支給されたものが自衛隊に配備されていましたが、2011年度をもって9mm機関拳銃に更新され、今では使用されてはおりません。
近年開発された短機関銃と比較すると重いという欠点はありますが、銃の歴史にサブマシンガンというカテゴリーを生み出した名銃であることに間違いはありません。現代では既に実用銃としての役割を終えていますが、ハワイの射撃場などでの試し打ちは可能です。もし機会があれば、体にダイレクトに伝わる反動を、是非感じてもらいたいと思います。
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