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毎年様々な新作ゲームが発売されていますが、常に一定のタイトルが毎週発売されているわけではありません。一月の中では月末に集中しやすい傾向にありますし、年間を通すと年末商戦の11~12月、年度末の3月が特に新作ラッシュを迎えやすい時期です。
そういった傾向は過去のゲーム史にも見て取れますが、一際盛り上がっている時期には毎週様々なタイトルが店頭を賑わせたこともありました。初代プレイステーションが高い人気を集めた2000年前後も、そんな時代のひとつでした。
今からちょうど20年前となる9月2日を振り返ってみると、『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』『マクロスVF-X2』『リトルラバーズ シーソーゲーム』『ワールドサッカー実況ウイニングイレブン4』『ビシバシスペシャル2』『マイガーデン』『Neo ATLAS II』『クロックアドベンチャー』『フォーセイケン』『バーチャパチスロV ~山佐・北電子・オリンピア~』など、2桁にのぼる新作が登場。ジャンルやプレイスタイルも様々なタイトルが、月始めにも関わらず多数リリースされました。
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本日2019年9月2日は、これらの作品が登場してからちょうど20周年となります。全ての作品をピックアップするのは難しいため、今回はプレイステーション時代を力強く支えた『ワイルドアームズ 2nd イグニッション』と『フロントミッション3』を代表とし、この記念すべき日を祝うと共に、両作品の魅力などを紹介したいと思います。
◆荒野のRPGが『ワイルドアームズ 2nd イグニッション』で“変身”を纏い、英雄を問う一作となる!
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RPGの舞台は多種多彩ですが、中世的なファンタジーをベースとした世界観が多め。国民的RPGの『ドラゴンクエスト』はまさに王道的な存在と言えますし、SF要素が盛り込まれる場合も多い『ファイナルファンタジー』も、やはりファンタジー色が強めです。
そんなRPGジャンルの中で、西部劇のテイストにファンタジーやSF要素を加えて登場したのが、『ワイルドアームズ』シリーズです。マカロニ・ウェスタンを象徴するように、マップには荒野が広がっており、世界観にマッチした音楽が雰囲気をより高めてくれます。
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一作目からひと味違うRPGとして注目されていた『ワイルドアームズ』ですが、二作目の『ワイルドアームズ 2nd イグニッション』で、その個性は更に濃さを増すことに。本作の主人公であるアシュレーは、とある一件がきっかけで魔神の力を宿すことに。その力が発現すると、彼は異形の騎士へと変貌し、強大な力を振るって敵をなぎ倒します。
魔神の力は、強力であると共に、忌むべき存在でもあります。しかし、力に頼らなければ乗り越えられない局面もありますし、仲間を救うことも難しくなります。危険な力でも、それを使わざるを得ない──この板挟みに悩むアシュレーの姿は、特撮ヒーローの葛藤を連想させ、前作にはなかった新たな魅力を放つことに成功しました。
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また、本作の物語面における大きな特徴として、主要人物の多くが“英雄”と無関係ではない点も挙げられます。アシュレーは英雄に憧れており、そのため魔神の力も人を救う手段として活用する道を選びます。その選択は後に茨の道となり、英雄に対する考え方は徐々に変化。その末に出した彼の結論は、多くのプレイヤーの心に刺さりました。
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更にアシュレーの仲間も、“英雄”と深い関係を持ちます。ブラッドは、かつて身を投じた解放戦線で“英雄”と呼ばれていました。しかし、戦さに負けてしまい、爆弾を埋め込まれて虜囚の身に。“英雄”が辿ったその顛末には、深く考えさせられるものがあります。
またリルカは、“英雄”の姉を持ち、そのためコンプレックスを抱える人生を歩んできました。さらに、ティムは“英雄”という立場を押しつけられ、“英雄”の血を引くカノンは、その血筋に縋るように生きてきた一面があります。そして、マリアベルは“英雄”と共に戦った過去があるなど、いずれも“英雄”との関連や因縁を持った面々がパーティに加入。シンプルなヒロイックを連想しがちな“英雄”を、本作では様々な角度から描くことで、他のRPGとは一線を画す物語を展開していきました。
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荒野を舞台に、“英雄”について考えさせられる『ワイルドアームズ 2nd イグニッション』。個性的ゆえにクセもありますが、ファンタジー系RPGとは違う刺激を求めている方ならば、候補に加えておきたい作品のひとつ。ゲームアーカイブス版が配信中なので、PSP/PS Vita/PS3などでプレイが可能です。
【読者のコメント】(一部)
・高クオリティのアニメ、音楽、キャラクター、ストーリー中断演出、ラストバトルどれも最高すぎて記憶の大半を閉めていますッ!
・1作目から続く異世界ファルガイアでのマカロニウエスタンな世界観を継承しつつ、特撮風味の演出やWAの特徴ともいえる歌にも力を入れており、それからのWAの礎を築いたと言える革新的でカッコいいデザインが印象的でした。前述で述べた前編、後編で変わる主題歌や中断時やディスクチェンジ時しか挿入されない挿入歌などの演出面でとても驚かされました。
・やっぱり主人公のアシュレーの変身やボス戦の特撮風味の演出は記憶に残ってますねぇ。あと、トカ&ゲーのコンビは面白かったです!
・子供のころにストーリーに納得できず積んだゲーム。大人になってやり直してみると、それぞれのキャラの立場を理解でき最終的にいいゲームだったと思えるようになりました。
・WA2は金子作品にハマり、また西部劇が好きになるきっかけでもありました。リメイクを今でも強く望んでいます。
・特撮を意識した演出から作り手の好きという気持ちが伝わってくるようで心をつかまれました。グッズを使った謎解きなども思い出深いですが、なにより、RPGの物語のもつ力を強く感じました。英雄という言葉、存在について思い悩み、向き合った旅路のすべてに意味があったと思わせてくれるラストバトルが思い出に残っています。OPの「どんなときでも、ひとりじゃない」が聴こえてくるようなBGMと共に紡がれる言葉に胸がいっぱいになり、ゲームではじめて涙を流しました。ゲームにはここまで感情をゆさぶる力があるのかと気づかされた、私の人生に影響を与えた作品です。ワイルドアームズ2ndの体験がなければ今ゲームを楽しんでいる自分はいなかったかもしれません。
◆間口と戦略性を広げつつ、物語でキャラクターを深掘りした『フロントミッション3』
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人型兵器・ヴァンツァーを駆り、硝煙と爆風が彩る戦地を駆け抜けていく戦略シミュレーション『フロントミッション』シリーズ。スーパーファミコン向けに登場した同名の一作目では、主人公・ロイドが行方不明となった婚約者・カレンを捜す物語を描いており、衝撃的な結末で多くのユーザーを驚かせました。
重厚なストーリーと戦略性の高いゲーム性、引き込まれるヴァンツァーのカスタマイズなど、様々な魅力を持ち合わせる本シリーズは、その後プレイステーションを舞台の場とし、続編となる『フロントミッション2』、そして今回20周年を迎えた『フロントミッション3』を展開します。
近未来の世界ながらも、ヴァンツァーを含めてリアルな描写に舵を切っており、そのハードな世界観にシリーズファンは魅了されました。無論、思考を心地よく刺激する戦略性・カスタマイズ性も、欠かすことの出来ない魅力です。その特徴を引き継いだ『フロントミッション3』は、更にシステムの変更や新要素の追加なども実施し、新たな可能性を提示しました。
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変更点は、プレイヤーの負担を減らす形となったものも多く、仲間に加わるメンバーの総人数や出撃機体数などが減少。これにより、育成がしやすくなり、戦略の手段は多いもののその方向性は絞りやすくなりました。また、ヴァンツァーの表現がより豊かとなり、視覚的な進化が大きかった点も見逃せません。
そして、新たに加わった新要素で、これまでになかった戦い方ができるようになりました。無人状態のヴァンツァーなどに乗り換える「ディスチャージ・バトル・システム」を活用すれば、大破しかかった機体を乗り換えて戦線に即復帰することも可能。手強い敵の大型兵器の強奪に成功した瞬間は、爽快感も満点です。
また、物語面でも新たな要素が用意されており、エマ編とアリサ編に物語が分かれる「ダブルフィーチャー・シナリオ」を採用。分かりやすく言えばストーリーの分岐ですが、それぞれ独立した物語が展開するため、読み応えもたっぷりです。
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片方のルートでは仲間になるキャラが、もう片方では敵として登場することもあり、異なる物語がそれぞれ楽しめるだけでなく、各キャラクターの新たな一面が描かれる場合も。そのため、両方のルートを遊ぶことで、人物や物語をより深く理解することができます。
近未来を舞台としていますが、現代世界を反映した情勢や、今も昔も変わらない人間の業を描き出すシナリオなど、リアルな一面を随所に感じられる『フロントミッション3』。シリーズの中ではかなり異色な主人公なので、その点で合う合わないはあるかと思いますが、戦略性とカスタマイズが楽しいバトルと見応えのあるシナリオが相乗効果となる本作は、見逃すには惜しい作品のひとつ。こちらもゲームアーカイブス版がリリースされているので、気になった方はぜひプレイしてみてください。
【読者のコメント】(一部)
・これまでの主な舞台であったハフマン島から日本へ物語の舞台を移し 日常から戦場で戦うことを余儀なくされる主人公たちの物語にとても親近感がわきました。戦闘システムにグラフィックも進化を遂げより迫力と爽快感のあるヴァンツァー同士の戦闘はとてもカッコよかったです。
・サントラ買いました!
・最近プレイしたゲーム。これが初めて遊んだ『フロントミッション』シリーズ。
・フロントミッションシリーズでオルタナティブと1,2を争う好きな作品。ただの重度のシスコンが世界を股にかけて暴れまわるあのノリが大好きです! ほかにもFM2の激遅戦闘時ローディングから改善されたシームレス戦闘、今のインターネットが普及する前に作られた擬似インターネット「天網」というシステムの凝りよう、初代PSでは美麗なほうのCG、そしてこれをCD1枚で収められた事に当時は驚きました。
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