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バンダイナムコエンターテインメントは、9月4日から9月6日までパシフィコ横浜で開催された「CEDEC 2019」にてフライトシューティングゲーム『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』のVRモード開発に関するセッションを実施した。
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登壇者は、バンダイナムコスタジオCS技術本部 CS技術2部 CS技術4課の山本治由氏と、株式会社バンダイナムコスタジオCS第1本部 CS企画3部 CS企画6課係長の夛湖久治氏の両名。前半の山本氏の解説はエンジニア視点で、後半の夛湖氏の開発はディレクター視点からの解説となる。
■『エースコンバット7』エンジニア視点からのVRモード開発体制
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エンジニアである山本氏は、2006年にバンダイナムコスタジオへ入社以降『鉄拳』シリーズの開発に関わる。VRデバイスに触れる機会があったことから、VRキャラクターコミュニケーション『サマーレッスン』の技術デモの開発に参加。『サマーレッスン』の開発が落ち着いてきたころに、『エースコンバット7』VRモード開発の協力要請を受け、リードエンジニアとして参加している。
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『エースコンバット7』のVRモードは、前述の『サマーレッスン』の知見を生かして制作されている。『サマーレッスン』は2016年に発売されたVRタイトルで、プレイヤーは家庭教師となりキャラクターと交流を深める。
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『サマーレッスン』の特徴はプレイヤーとの至近距離でのコミュニケーション等によって生まれる実在感にあり、キャラのアニメーションや目線、会話のテンポなどの違和感を極力取り除いた高い没入感を持つタイトルだ。
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逆を言えば、演出やコミュニケーション等に何らかの違和感を覚えてしまうと没入感が削がれてしまうため、要素の実装には細心の注意を払ったという。他にも、ディスプレイとHMDを装着して見てみたときの印象は大きく違うため必ずテストの時にはHMDを被って確認したとも述べた。
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また思いついたアイデアを実装してみても予想通りの体験にならない事があったため、試行錯誤が必要だったとも振り返る。試作をする時に作り込みすぎてしまい、その要素を捨てるのが惜しくなり、身動きが出来なくなったこともあったようだ。
一方の『エースコンバット7』VRモードは、自機移動によるVR酔い対策と情報表示、処理負担の高さとなど課題が山積みだったという。『エースコンバット7』ではリアルな天候表現がフィーチャーされていたこともあり、開発現場としては前述の問題もあって暗雲立ちこめるような状況だったようだ。
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問題解決のために、開発方針をイテレーション速度の重視とコックピットの実在感を出す近距離ギミックへの注力、そして違和感がなくなるまでのブラッシュアップの期間の確保と定めた。イテレーションの中身は、開発の前半で様々な試作を繰り返して実在感が削がれない表現方法を探求し、後半で違和感がなくなるまでブラッシュアップを繰り返すというものだ。
ここで、レビュー会で使った資料を公開した。左側の図はスクリーンショット、中央は確認事項、右側は確認方法だ。レビュー会ではVRに関わる全セクションのメンバーが参加し、全員がHMDを持ち(持っていない場合は試遊スペースを設置)レビューを行ったという。レビュー会の利点は、最小限の実装で機能や処理負担の程度を定期的に確認できる事だ。
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ここからは試作ボツ案を1つ1つ画像付きで紹介した。1つ目は「周辺視野を制限」。パイロットのヘルメット・マスクを模した周辺視野の制限を設け、ベクションの効果等を弱めることを目的としたもの。実際に取り入れてみると違和感の方が強く、UIの視認性も低くなってしまい導入には至らなかったという。
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2つ目は「進行方向表示」。ミッション開始時における自動移動の酔い対策として移動前に進行方向を予告し、心の準備をさせることで酔いを軽減しようというUIだ。しかし、突然ゲーム的なUIがプレイ中に現れると、没入感が削がれるため導入しなかったそうだ。最終的には視線誘導を使い、酔いを回避する方向で対策が取られた。
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最後の「ベイルアウト」は、プレイヤーが撃墜された際の演出として、企画側から要望された試作であるとのこと。一連のシークエンスとしては、撃墜されるとコックピットから座席ごと上空に射出され、その後パラシュートが開きヒラヒラと下りてくるという内容だったようだが、プレイヤーの緊張感が途切れてしまうため、リトライへのモチベーションが弱くなってしまうためにボツになったと語った。
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『サマーレッスン』不自然な会話やキャラクターが延々と長話をしてしまった際にプレイヤーが飽きてしまわないよう、サウンドや動作などでプレイヤーの興味を引き続けられるように施策を行ったという。
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『エースコンバット7』VRは2週間毎にレビューを行い、ひたすらブラッシュアップするというのを細々と2ヶ月続けている。視線誘導ブラッシュアップにおいては、滑走路移動時にプレイヤーの近くでイベントを発生させることで興味を引いたり、ゲームプレイ中には敵機のコンテナを表示することでプレイヤーが進むべき方向を示したりなどを行ったそうだ。
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近距離ギミックのコクピット内の演出では、ダメージを受け続け突然爆発してしまうとプレイヤーが状況を理解出来ないため、警告ランプなどで「徐々にピンチになる」演出を設けると共に、被撃墜時にはプレイヤーが認識出来るように数十秒墜落演出が入るようになっている。
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コックピット内では、プロトタイプ版だとUIが外に表示されていたが、コックピット内のMFD(マルチファンクションディスプレイ)にレーダー等を統合することで臨場感と没入感が向上するようブラッシュアップされた。他にも、HUD表示をグラス内で収まるようにマスクが掛かるようにすることで、違和感を減らす事が出来たと語る。これらの施策を行ったことで、より「自分が機体を操っている」という感覚が増したという。
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ここで山本氏の発表が終了し、夛湖氏によるディレクター視点からの「エースパイロット没入体験を深める施策」の解説に入った。
■夛湖氏による『エースコンバット7』VRモードの作法
夛湖氏は1994年に当時のナムコへ入社した20年以上の経験を持つベテランで、『エースコンバット』シリーズの始祖となる『エアーコンバット22』にてプランナーとして開発に関わったことのある人物。夛湖氏が説明する内容は「Ace Combat 7 VRモードでの没入体験を深めるために何をどうしたか」だ。
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夛湖氏は、『エースコンバット』のVR化に求められるものは、1に「戦闘機パイロットとしての体験」、2に「エースパイロットとしての体験」、そして3に「『エースコンバット』としての体験」の3つではないかと考察した。
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VR化に際して行ったのは、違和感の排除とリアリティーの追求(プレゼンス)、適度に残したベクションの調整とキャノピーフレームを見せる位置関係の把握(移動制限・角度認識向上)、コクピット再現(視界制限)と注視点の設定(視線誘導)だ。
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加えて本作のVRモードプロデューサーである玉置絢氏の「酔いのコップ理論」を意識し、箇条で連続したものでなく波状での体験も行ったという(VR刺激の調整)。そして、凄いタイトルと思わせるため、「燃えさかるコックピットからの爆死体験を採用」。これらの要素はVRゲームを開始した後の没入感を醒めさせないようにするための「守り」の施策であり、以降説明されたのは没入感を高める「攻め」の施策だ。
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VRゲームで重要なのは「期待と興奮のコントロール」とも語る。夛湖氏の経験則によれば、知覚・認識を始め、期待や興奮の意識がある一定のラインを超えると没入状態に至ると解説する。それらは1990年の「国際花と緑の博覧会」に出展された『ギャラクシアン3』を原点としていると仮説を立てている。
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この『ギャラクシアン3』は、遊園地の屋内ライド系アトラクションの様に基地内セットやブリーフィングなど意識の場を盛り上げる施策が多く設けられていると説明する。これらを図に起こしてみると、ブリーフィング後の状態では期待が没入ラインを超えており、アトラクションを開始した瞬間が最高潮となっている。
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しかし、「すべての体験者がHMDをかぶって遊べば期待や興奮になるとは限らない」ため、VRゲームに適応してみようとしても、疑念や不信があると強烈な重力のように意識が引っ張られ没入ラインを超えないとも説明する。
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『エースコンバット7』VRモードでは、実際にプレイが始まる前に、ミッション選択や兵装選択、出撃演出という長いシークエンスを置いてプレイヤーを焦らすことで、VRに慣れると同時に彼らの期待曲線を底上げするという工夫を行った。その状態でVRモードミッション2の冒頭映像を披露することで、プレイヤーにとってサプライズ的効果が得られるという。
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いきなりゲームプレイに放り込むのではなく、事前に映画的なシチュエーションを展開するなど精神的なサプライズを行うことでプライヤーの興奮状態をMAXにし、酔いのコップを最大容量まで使って「自分がエースパイロットである」とその気にさせる事、更に「如何に興奮値を最大値に持っていくか」というところが大事と語り発表を終えた。
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なおこのセッションは、2019年2月上旬に開催された「Tokyo XR Meetup #27 開発チームに聞く「エースコンバット7」VRモードに込めた想い」を踏襲した内容となっており、2月に行ったVRチームへのインタビューも合わせて読むとより深く内容を理解出来るだろう。